コロナ禍でも年100組が成婚
お見合い成立増える
愛媛県
愛媛県の公的機関「えひめ結婚支援センター」では、コロナ前、成婚するカップルが1カ月に10組のペースで誕生し、コロナ禍に入った20年以降も年間100組前後が成婚している。こうした成果を上げている大きな要因となっているのが、同センターが15年から導入したAIによるマッチングサービスだ。
センターでは08年の設立以降、男女の出会いの場をつくるイベント事業や、1対1の出会いをつくりお見合いをめざす事業を行ってきたが、なかなかお見合いが成立しない状況が続いていた。そこで、国立情報学研究所の宇野毅明教授らに依頼し、開発してもらった。
このサービスで、AIがお見合い候補を提示する「おすすめ」機能を使って申し込みを行うと、これまで13%だったお見合い実施率が29%に急増した。
ボランティアによる“世話焼き”が奏功
しかし、お見合いは“入り口”に過ぎない。結婚に至るまでの道のりは決して平たんではない。だからこそ、センターでは、交際を始めたカップルに、人生経験豊かなボランティア「愛結びサポーター」が世話を焼き、親身に支える体制を敷いている。
これまで約50組の成婚をお世話してきた愛結びサポーターの近藤由佳さんは「七夕やクリスマスといった節目にさりげなく連絡を取って、何か悩んでいることがないか聞いている」と語る。
この「えひめ方式」のAIマッチングシステムは全国に広がっており、愛媛県を含む21県に導入されている。
■政府が婚活支援を強化/公明推進
結婚を希望しているものの、「出会いがない」という男女は多い。国立社会保障・人口問題研究所が21年に実施した調査では、18歳から34歳の未婚者のうち、「いずれ結婚するつもり」との答えは、男女共に8割を超える。そのうち、独身でいる理由として、25歳以上で最多だったのが「適当な相手にまだめぐり会わないから」(男性43%、女性48%)だった。
公明党は、青年委員会が16年に行った政策アンケート「VOICE ACTION(ボイス・アクション)」の主要政策に「婚活や新婚世帯への支援」を掲げたほか、昨年11月発表の「子育て応援トータルプラン」でも結婚支援の拡充を訴えるなど、結婚を希望する若者への支援拡充に一貫して取り組んでいる。
公明党の推進で、政府は自治体による結婚支援を「地域少子化対策重点推進交付金」で後押ししており、21年度からはAIを活用した結婚支援の補助率を2分の1から3分の2に引き上げた。
さらに、今年度からは専門知識を持つ「結婚支援コンシェルジュ」の都道府県への配置を進め、自治体をサポートする。
国立情報学研究所 宇野毅明教授
先入観超えた出会い提供
私たちが開発したAIマッチングシステムを採用した愛媛県で、AIを使った場合のお見合い実施率が大きく増加した。
このシステムでは、パートナーに対する“こだわり”や先入観を超えた出会いを提供できる。婚活では、年収や年齢、学歴といった客観的な条件で絞り込むことが多いが、ここにこだわりすぎると、いつも同じような人ばかりとコンタクトを取るようになり、うまく相手が見つからなくなることもある。
このシステムでは、婚活サイト内での利用者の行動履歴などから、自分と似た価値観を持つ人が興味を持つ人、あるいはその人たちに興味を持つ人を推薦することで、年収や年齢などを考慮せずにお見合い候補を推薦する。このため、当初想定していなかったような相手と出会えている。
面白いのがAIが推薦するお見合い候補は、“自分ではなくコンピューターが選んでいる”という安心感があり、自分で相手を選ぶ勇気が持ちにくい人々の助けになっている点だ。いわゆる“奥手”と呼ばれる人々には勇気を持つきっかけになっているようだ。
このシステムは女性の利用も多く、一般に婚活においては、女性からのアプローチの方が男性からよりもカップルが成立しやすいという話もあり、お見合いの成立が増えているのであろう。