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若い世代の政治参加さらに

2024.10.09

見直しの声高まる被選挙権年齢

選挙に立候補できる被選挙権年齢について、若い世代の政治参加を一層推進する立場から、公明党は「18歳以上」への引き下げをめざしている。2015年の法改正により、選挙で投票できる選挙権年齢は20歳以上から18歳以上に引き下げられたが、被選挙権年齢は据え置かれたままだ。被選挙権年齢を巡る現状を解説するとともに、論点や課題などについて日本若者協議会の室橋祐貴代表理事に聞いた。

長年据え置かれたまま
公明、「18歳以上」への引き下げ主張

日本の被選挙権年齢

被選挙権とは、選挙によって選出される議員や首長に就くことのできる資格を指す。国民が主権者として、自分たちの代表を選べる選挙権と同じ参政権の一つだ。

被選挙権年齢については、公職選挙法により、衆院議員・都道府県議・市区町村長・市区町村議は25歳以上、参院議員・都道府県知事は30歳以上に定められている。このうち衆院議員や参院議員、戦後から公選となった都道府県知事と市区町村長の被選挙権年齢は選挙権年齢とともに1945~47年に定められた。

被選挙権年齢のあり方について、わが国では「社会的経験に基づく思慮と分別を踏まえて設定されている」といった説明がなされている。

OECD加盟国の被選挙権年齢(下院)

戦後約70年を経て、少子高齢化で若年人口が減る中、未来を担う若い世代の意見がより政治に反映されるようにと、2015年の法改正で選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられた。しかし、被選挙権年齢は据え置かれたままだ。

海外の状況はどうか。国立国会図書館が20年にまとめた調査を見ると、日本の衆議院に相当する下院(一院制の議会を含む)では、被選挙権年齢が判明した195の国と地域のうち、18歳以上が65カ国で最も多く、21歳以上(57カ国)、25歳以上(55カ国)などと続いた。

経済協力開発機構(OECD)加盟国に限ると、同じ下院(同)で加盟38カ国のうち18歳以上が23カ国で6割を占め、日本の衆議院のように25歳以上にしているのは5カ国と少数派だ。今世紀に入り、イギリスやフランス、トルコなどが相次いで被選挙権年齢を18歳以上に引き下げている。

こうした状況に対し、日本でも被選挙権年齢の見直しを求める若い世代の声が強まっている。

18年には公明党を含む超党派の国会議員と若者の代表でつくる「若者政策推進議員連盟」が発足し、各党に対し、被選挙権年齢の18歳以上への引き下げなどを要望した。

23年の統一地方選では、被選挙権年齢に満たない若者が問題提起のため、立候補を届け出て不受理となった。統一選後には、この当事者らが公選法で定める被選挙権の年齢制限が憲法に違反するとして国を相手に裁判を起こしている。

だが、被選挙権年齢の見直しに関して、国会での議論は進んでいない。政府は「職務内容、選挙権年齢とのバランスなども考慮しながら検討されるべき」との立場だ。与野党を超えた議論の活性化が望まれている。

日本若者協議会代表理事 室橋祐貴氏に聞く
若者の声、政治に一層反映へ
選挙権年齢と同じが望ましい

むろはし・ゆうき 1988年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。同大学大学院政策・メディア研究科修士課程中退。2015年に日本若者協議会を設立。文部科学省「高等教育の修学支援新制度の在り方検討会議」委員。

――現行の被選挙権の年齢設定をどう見るか。

成人ながら満18歳から20代前半の若い世代が含まれておらず、高校生や大学生の年代の声が政治に反映されにくい状況にある。

例えば、東日本大震災で避難所によっては生理用品がないといった課題が浮き彫りになったが、防災分野で女性目線からの配慮が足りなかったのと似た側面がある。

上昇傾向にある大学の授業料一つ取ってみても、国会議員は50代以上がほとんどであり、50代以上が負担した当時の授業料と今とでは数倍の開きがある。

負担の重さの肌感覚は今とは異なり、前提が違う中で負担軽減策などの議論を進めても、若い世代のニーズに合致する政策はなかなか実現しづらい。意思決定の場に、新しい価値観を持った若い世代が存在することが重要だ。

――被選挙権年齢を引き下げる利点は。

若い世代の意見を政治に反映させやすくなるのはもちろん、投票率のアップも見込める。若い世代が出馬すれば、その候補者が所属する学校やサークルなど身近なコミュニティー(共同体)の友人が同年代にも投票を働き掛けるため、投票に行く若い世代が増える。

併せて、学校で行われる主権者教育の充実も期待できる。現在は「18歳選挙権」が意識され、模擬投票といった投票中心になりがちで、政治家が実際に何をしているのかなどに焦点が当たることは、ほとんどない。

仮に被選挙権が満18歳から認められれば、早くて高校3年生で立候補できるようになる。より具体的な選挙運動や実際の政策立案、法案審議などの内容も主権者教育の中で扱われるようになるだろう。

――望ましい被選挙権の年齢のあり方は。

参政権は選挙権と被選挙権が主な柱であり、一律で18歳以上が望ましいと考える。

国会議員では衆院議員が25歳以上、参院議員が30歳以上と異なるが、5歳の年齢差の設定に大きな意義は見いだせない。「良識の府」といった参院の独自性は、衆院議員より長い任期や選挙制度の違いで発揮できるのではないか。

OECD加盟国の半数以上は、選挙権と被選挙権の年齢を一律18歳以上としている。韓国では22年に被選挙権年齢を25歳以上から選挙権年齢と同じ18歳以上に引き下げ、その後の地方選挙で10代(当時)の議員も誕生した。

先進的な欧州では、高校生や大学生の若い世代が立候補するケースも多く、地方選では、学生寮の増設や返済不要の奨学金の対象拡大といった学校政策も重要な争点の一つになっている。

立候補しやすい環境整備必要
27年の統一選までに実現を

――被選挙権年齢の引き下げに向けた課題は何か。

若い世代が立候補しやすい環境の整備が求められる。

仮に満18歳まで引き下げる場合、学業も両立できなければ、学生も家族も二の足を踏むことになる。選挙運動や議会出席での公欠や、休学を認めるといった仕組みの検討が必要だろう。

立候補時に準備する必要のある供託金の見直しも欠かせない。地方議員のうち最も低い町村議員は15万円だが、国会議員だと選挙区で300万円、比例区で600万円の資金の工面が必要になる。

候補者の乱立を防ぐためのものだが、多くの若い世代には高いハードルだ。資産的に恵まれた人だけが立候補しやすい状況は好ましくない。

議員になるリスクの払拭も急がれる。議員は有権者からのバッシング(たたき)の対象になりやすく、ハラスメントに遭うケースもある。

特に地方議員は、慣例で自宅の住所が公開されるケースがあり、若い女性だとストーカー被害の恐れも高まる。候補者や議員の安全・プライバシーを守れるようにすることが大切だ。

――被選挙権年齢の引き下げについて政治への注文は。

16年の参院選以降、主要政党の多くが公約に被選挙権年齢の引き下げを掲げた。あれから8年がたつ。必要な公職選挙法改正に向けて与野党で協議を進め、次の統一地方選がある27年までには実現してほしい。

私たち日本若者協議会は発足以来、被選挙権年齢の引き下げを訴えてきた。同様に提言する若者団体もあるほか、オンライン署名を集めたり、訴訟まで起こす若い世代もいる。それでも要求が受け入れられないとなると強い無力感をもたらし、次の世代の運動が続かなくなる恐れもある。

一人の声に真剣に耳を傾ける公明党が、実現に向けて合意形成のリード役を果たすことを期待している。

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