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ルポ

温泉熱で新たな産業を創出
発電の一部収益を地域に還元

再エネで福島を元気に!

2021.03.10

温泉熱を利用し電力を供給するバイナリー発電施設温泉熱を利用し電力を供給するバイナリー発電施設

■温泉熱で発電

 加藤さんが着目したのは、温泉熱を利用した「地熱発電」。強みは天候に左右されることなく、安定的な発電ができること。2015年から「元気アップつちゆ」が運用するバイナリー発電は、源泉から湧き出る約140度の熱水で沸点の低い液体を気化させ、タービンを回す仕組み。一般家庭800世帯分の電気を賄えるという。

 また、砂防ダムの高低差を活用した小水力発電も整備。これら二つを合わせると、過去5年平均で年間の発電量は300万キロワット時、売電収入は1億2000万円に上る。

 こうした、再エネを利用した発電施設や温泉供給のシステムを見学するエコツアーも開催し、企業や教育機関など全国からの視察旅行が相次いでいる。

■温排水でエビ養殖

 バイナリー発電で使い終わった熱水も有効活用しようと、4年前からはオニテナガエビの完全養殖にも乗り出した。成育に適した25度前後の水温を保つことができ、「おいしいエビを早く育てることができる」という。

 オニテナガエビは東南アジア原産の淡水エビ。国内での養殖は極めてまれで、青森県弘前市の先行事例を参考にした。現在、九つの水槽で4万匹のエビを育てている。

 加藤さんは昨年8月、エビ釣りが体験できるカフェ「おららのコミセ」をオープンさせた。自分で釣ったエビを、その場で焼いて食べるという斬新なスタイルが話題となり、幅広い年代から人気を集めている。

■収益で地域支援も

 発電の一部収益を地域に還元しようと、お年寄りや将来を担う子どもたちの生活支援にも力を入れる。

 「土湯温泉足軽サービス」と銘打った高齢者支援では、70歳から74歳までを対象にバス定期券を無料配布。これは、75歳以上は市の補助があることから、それまでの期間をサポートするものだ。

 このほか、教育支援として、地元高校生に路線バスの定期券を配布する「土湯温泉通学マイロードサービス」を実施。市立土湯小学校に通う児童に、給食費や副教材費を全額給付する「土湯温泉学光サービス」(20年3月の廃校に伴い終了)も提供してきた。今後は子育て支援として、事業所内保育所の整備も検討している。

 「地域住民が今まで以上に生き生きと暮らせる環境こそが、温泉街のにぎわい創出につながる」と加藤さん。「土湯の復興なくして福島の復興なし。多くの人に土湯の魅力を存分に堪能してほしい」と話している。

土湯温泉の元気アップモデル