Book Review

「○○○」がわかる3冊

第11回:「コミュニティデザイン」がわかる3冊

コミュニティデザイナー山崎 亮

絆やつながり

「絆」や「つながり」という言葉が嫌いだという意見がある。特に東日本大震災以降、「絆」が流行り言葉のようになってしまい、偽善的な響きを持つようになってしまった。なかには辞書で意味を調べ、「絆には足かせという意味があるので嫌いです」という人までいる。「つながり」も似た境遇にある。人と人とのつながりが大切だという話が盛り上がりすぎると、「つながり依存症」とか「つながり疲れ」といった言葉が登場する。 「絆」や「つながり」という良い言葉を嫌うなんてケシカランという話ではない。多くの人が良いと思う言葉に否定的な人が一定数存在することは健全な状態だといえる。むしろ自分はどういう人間でありたいかという点が重要だ。そこで正直に考えてみた。自分はどうありたいのか。 改めて思う。私は涼しい顔をして「絆って大切だよね」と言える人でいたい。気負い無く「つながりっていいよね」と言える人でいたい。絆やつながりによって救われることもあるし、煩わしくなることもあるだろう。正の面も負の面も含めて、絆やつながりを愛したい。

『友達の数で寿命はきまる』石川善樹著

本書の副題は「人とのつながりが最高の健康法」だ。最新の予防医療では、つながりにまつわるさまざまな事実が明らかになっているそうだ。つながりが少ない人は死亡率が2倍になるとか、孤独は喫煙より身体に悪いとか、お見舞いに来てくれる人の数で余命が変わるとか、町内会の役員は健康に良いとか。作り笑いでも寿命は2年伸びるらしい。 超高齢社会を生きる我々にとって、平均寿命と健康寿命をいかに近づけていくかは重要な課題である。つながりが健康に貢献し、寿命まで伸ばすという事実は、つながり礼賛派にとって大いなる福音となろう。同時に、厚生労働関係予算が加速度的に拡大するわが国においても、あらゆる政策を市民参加型に変え、それぞれの地域で人と人とのつながりを生み出す機会を創出することが求められるだろう。

『友達の数で寿命はきまる』 石川善樹著(マガジンハウス)

『シビックエコノミー 世界に学ぶ小さな経済のつくり方』

つながりが健康寿命を伸ばすとして、伸びた寿命で何をするのか。本書は相互につながった市民が展開する25種類のプロジェクトを紹介している。イギリスを中心とする欧米のプロジェクトばかりだが、市民や専門家や行政がつながり、地域に貢献するような事業を次々と立ち上げている。ある事業は趣味の活動として継続されており、ある事業は株式会社として利益を上げている。いずれも地域の課題を解決することを目的としており、金儲けを目的化してしまう事業とは一線を画す。

イギリスは「大きな政府」から「大きな社会」へと路線変更している最中だ。政府の役割を相対的に小さくし、その他の社会的組織と協力しながら豊かな地域社会を実現させようとしている。そのとき、つながった市民の力が重要になる。コミュニティが再注目されている所以である。

『シビックエコノミー 世界に学ぶ小さな経済のつくり方』 (フィルムアート社)

『コミュニティデザイン』山崎亮著

つながった市民が地域の課題を楽しく解決している事例は欧米だけでなく日本にもある。我々が関わった国内の事例については本書にまとめてある。人と人とがつながり、つながった人たち(コミュニティ)が地域の課題を解決するような創造的事業をデザインする。これをコミュニティデザインと呼んでいる。

コミュニティデザインのプロジェクトは「作品集」として並べることができない。竣工写真など明確な結果があるわけではないからだ。したがって、結果を掲載するのではなく、その過程をできるだけ詳しく書き綴った。登場人物が多いのは、コミュニティデザインの事例をまとめる際の特徴だとご理解いただきたい。

のちにグッドデザイン賞を受賞することになる「マルヤガーデンズ」や「海士町総合計画」や「穂積製材所プロジェクト」なども本書に収録されている。営利事業も非営利事業も含まれている。共通しているのは、つながった人たちがイキイキと活動していることだろう。地域を良くし、同時に人生も良くしている。羨ましい生き方だ。

『コミュニティデザイン』 山崎亮著(学芸出版社)

つながりが生まれるとき

当然のことだが、人と人とのつながりは「つながりたい」と思う人が2人以上いないと成立しない。つながりたいと思っている人が「つながりは嫌いだ」と思っている人に近づいていってもつながりは生まれない。だからきっと、「つながりっていいよね」と思っている人達同士はどんどんつながって楽しいことをやるだろうし、「つながりは嫌いだ」という人はそれぞれが孤独を楽しむことになるだろう。

ただし、「つながりは嫌いだ」と言っている人も、歳を重ねるうちに考え方が変わるかもしれない。ネットを検索してみると、つながり嫌いな人たち同士がつながろうとしていることがある。「つながりってめんどくさい」「俺もそう思う」「だよねー」なんて会話していたりする。あと少しだ。こういう人たちとコミュニティデザインに取り組んでみたい。

<山崎 亮(やまざき・りょう)プロフィル>

studio-L代表。東北芸術工科大学教授(コミュニティデザイン学科長)。慶応義塾大学特別招聘教授。 1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院および東京大学大学院修了。博士(工学)。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトが多い。「海士町総合振興計画」「studio-L伊賀事務所」「しまのわ2014」でグッドデザイン賞、「親子健康手帳」でキッズデザイン賞などを受賞。 著書に『コミュニティデザイン(学芸出版社:不動産協会賞受賞)』『コミュニティデザインの時代(中公新書)』『ソーシャルデザイン・アトラス(鹿島出版会)』『まちの幸福論(NHK出版)』などがある。