Book Review

「○○○」がわかる3冊

第9回:「イクメンの未来」がわかる3冊

NPO法人フローレンス代表理事駒崎弘樹

『パパ1年生』安藤哲也著

イクメン化への最適な入門書

「赤ちゃん、できちゃったかも」 から始まり、漫画+解説という、読みやすいスタイルでグイグイ読ませてくれる入門書。 「子育てにも関わりたいけど、俺、仕事とか大丈夫かな。ってか、俺が父親?!」みたいな人(多分男性の90%)に、お勧め。

どんなに仕事で成果出して、エリートだったとしても、みんな「パパ一年生」から始まる。 最初は妻の気持ちも分からず、働き方も独身時代の癖が抜け切らず、オムツ一枚替えるのもド緊張の連続だ。

仕事には「ゼロから始めるマーケティング」や「猿でも分かるプログラミング」があるのに、パパ業ではあまりない。しかし本書は、パパ業の初心者が必ずぶち当たるいくつもの壁を丁寧に解説してくれている。

そして単なる解説書には留まらない。読み終わる頃には、パパになることが、いかに自らの人生を充実させるか、笑っているパパになることが、いかに素晴らしいことかが胸の深い部分にインストールされるだろう。

ジョン・レノンは、息子のショーンが産まれてから、5年間父親業に徹した。ジョンのように専業主夫になる必要まではないが、「父親であることを引き受ける」というのは、どんなにか格好良いことだろう。

この本を読んで、「父親になること」の扉を開こう。

『パパ1年生』
安藤哲也著(かんき出版)

『なぜ、ぼくのパソコンは壊れたのか?』マイナク・ダル著

物語で知る、働き方の変革と真の幸福

主人公は電機メーカーで働くモーレツ管理職のマユク。重要なプロジェクトを任され、しかし結果が出なくて焦り、長時間労働を重ねている。そんな大変な時に、パソコンがウイルスに感染した。変なメッセージが次々に出てくる。

「今の君はキューブの奴隷だ」

キューブとは、欧米のオフィスによくある、パーテーションで区切られた自分専用スペース。 ウイルスはマユクの働き方に疑問のメッセージを発し、アドバイスをしていく。

初めは半身半疑の彼も、ウイルスのアドバイスに従いながら、次第に働き方を変えて行き、それによって家族や友人達との絆も取り戻し、仕事もうまく行く好循環を達成して行く。

イクメン化する上で、働き方の変革はどうしても壁になる。しかし具体的なイメージはつかみづらいだろう。そんな人々のために、この本は良い導き手になり、明日から一歩を踏み出そうという動機づけを与えてくれるだろう。

本書でマユクは問われる。 「じぶんコーポレーションの株価はどうだい?」と。

人はみな、自分という会社のCEOだ。その会社は最大幸福を達成することを使命としている。 しかし、長時間労働によって非効率な働き方をし、家族を犠牲にすることは、その使命を阻害していないか、と。

仕事に打ち込むことで、しばし人生の最終目標と、「人生の中の仕事という要素」という関係性を忘れがちになってしまう我々に、改めてその本質を教えてくれる良書だ。

『なぜ、ぼくのパソコンは壊れたのか?』
マイナク・ダル著(日本経済新聞社)

『働き方革命』駒崎弘樹著

働き方を変えることは、日本を変えること

拙著で恐縮だが、最後に本書を紹介したい。これは、一日16時間働く仕事中毒だった僕が、いかにして「定時退社経営者」になったか、を綴った本だ。そして自らが経営する組織を、長時間労働職場から、1日平均残業時間15分というベンチャーではあり得ない水準にまで持っていった実証ルポである。

イクメンになりたい、という時に必ず壁にぶち当たる。そう、長時間労働だ。どうすれば良いのか。働き方を変えることだ。しかし、そんなことが可能なのだろうか。可能だ、と僕は断言しよう。なぜなら、超長時間労働をこよなく愛していた仕事人間の僕ができたからだ。そしてそれは、日本をも変えるインパクトを持つ。

なぜなら、安倍首相に言われるまでもなく、日本の経済成長に女性の活躍は不可欠だからだ。IMFは「女性が他の先進国並に働くだけで、日本はこれまでの4倍近く、一人当たりGDPを伸ばすことができる」と語る。

男性が家事育児をシェアすることで、それまで背負わされていた重荷を降ろし、女性は、僕たちの妻たちは羽ばたくことができるのだ。

そして日本の少子化をも克服する可能性を、イクメン化は持っている。なぜなら、第二子以降出生率と夫の家事育児貢献時間には、有意の相関関係があるからだ。簡単に言うと、家事育児する夫がいる家庭では、第二子が産まれている、ということ。こんな簡単なことで、人口減少社会を変えていけるのだ。

我々男性は、働き方を変えることで、日本の未来を変えられる。ならば、やるしかないではないか。それは愛する我々の子どもたちが、生きる未来なのだから。

『働き方革命』
駒崎弘樹著(ちくま新書)

<駒崎弘樹(こまざき・ひろき)プロフィル>

1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、「地域の力によって病児保育問題を解決し、子育てと仕事を両立できる社会をつくりたい」と考え、2004年にNPO法人フローレンスを設立。日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスを首都圏で開始、共働きやひとり親の子育て家庭をサポートする。 2010年からは待機児童問題の解決のため、空き住戸を使った「おうち保育園」を展開し、政府の待機児童対策政策に採用される。 2012年、一般財団法人日本病児保育協会、NPO法人全国小規模保育協議会を設立、理事長に就任。