Book Review

「○○○○」がわかる3冊

第5回:「NPO」の今がわかる3冊

NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会代表理事松原 明

NPOとは――人のつながりを広げるための新しい事業体

NPOという言葉は、1998年にNPO法ができて以来、多くの人に知られるようになってきました。

この法律で、法人格をとった団体を、「NPO法人」と呼んでいますが、今では、その数5万法人を数え、全国のコンビニエンスストアとほぼ同じくらいの数となっています。ニュースでも、NPOという言葉は頻繁に出てきますし、高校の教科書にも載っているくらいに当たり前の言葉となりました。

しかし、NPOに関する講座を開くと、多くの人から「NPOって稼いでいいの?」「NPOで給料をもらうことができるの?」「NPOはどうやって活動しているの?」と基本的な質問をもらわない時はありません。

今回は、NPOの基礎から「現在」までが良くわかる、しかし、それぞれ視点が違う3冊の本を紹介いたします。

『世の中を良くして自分も幸福にする「寄付」のすすめ』 近藤由美著

寄付の楽しさ、税制、対象の選び方など初心者向けに

寄付する側から見たNPOの世界を分かりやすく紹介している本です。日本の寄付文化の歴史から始まって、寄付の楽しさ、寄付の対象となるNPOとは何か、NPO法の仕組みや寄付税制、そして、寄付先の選び方などが、初心者向けに分かりやすく書かれています。

お金の寄付だけでなく、物品の寄贈やボランティアなど、様々なNPOとのかかわりの作り方も書かれていて、NPOにどうやって関わろうかと関心がある人にお勧めの一冊です。

2004年のスマトラ沖大地震、2010年からのタイガーマスク運動、2011年の東日本大震災では、多くの人が寄付をしました。寄付が人を助ける、また社会を変える大きな力になることが分かり、日本では、今、寄付の再評価が進んでいます。

NPOにとって、寄付は大切な財源ですが、寄付する側からすれば、NPOに寄付をすることで、社会をより良くできることに貢献できます。寄付を通じて、NPOは、人々と社会をつなぐ「架け橋」であることをこの本は教えてくれます。

『世の中を良くして自分も幸福にする「寄付」のすすめ』
近藤由美著(東洋経済新報社)

『市民ベンチャーNPOの底力~まちを変えた「ぽんぽこ」の挑戦(増補新版)』 富永一夫・中庭光彦著

自治と市民事業の仕組みとしてのNPOの役割を描く

NPOのあり方と理解は、時を経て変わってきています。1998年にNPO法ができた時は、阪神淡路大震災で活躍したようなボランティアグループが、NPO法人の主流と理解されていました。それが、2000年代に入ると、「NPOとは、市民が自主的に行う『公共事業体』である」という理解に広がっていきます。

行政との協働も進み、NPOは、自治のための道具でもあるという理解も深まっていきます。

著者の一人である富永氏は、サラリーマンを辞めて、東京の多摩ニュータウンで、「NPOフュージョン長池」というNPO法人を設立します。NPOは、八王子市から公園や自然館といった行政施設の委託管理を受けながら、地域のつながりを回復していく事業体として成長していきます。

その過程を描きながら、自治と市民事業の仕組みとして、NPOとはどのような役割を地域で果たすのか、を描いているのがこの本です。

「NPOは人のつながりがいのち」と著者は言います。人のつながりを生み出し、それを広げ、人々の公共の場を生み出すのは、今日、一つの市民自身による「事業」となっていると著者は説きます。

これからの地域の互助の仕組み、共助の仕組みをどう再構築していくのか。それを考える時、NPOがなぜ重要なのかが分かる一冊です。

『市民ベンチャーNPOの底力~まちを変えた「ぽんぽこ」の挑戦(増補新版)』
富永一夫・中庭光彦著(水曜社)

『NPOで働く』工藤啓著

「NPOで企業」のノウハウを実体験から分かりやすく説明

2004、5年から、NPOに関する理解はさらに広がりをみせていきます。コミュニティ・ビジネスやソーシャル・ビジネスという言葉が出始め、「社会の課題を解決する仕事」がNPOの仕事であり、同時に、多くの寄付やボランティアに支えられてはいるけれども、「事業」を中心として行う団体でもあるという理解が広まってきました。

特に、今の若い世代を中心にその認識が広く共有されていっているといえるでしょう。

また、日本社会に当時から始まる「起業」ブームの流れに沿って、「NPOで起業する」という新しい流れも起こってきます。

この本の著者の工藤氏は、大学を中退した後に、任意団体を設立し、2004年にNPO法人「育て上げネット」で「起業」します。育て上げネットは、ニート・引きこもりの若者を支援し、その就労をサポートする団体です。

その起業から発展の足取り、そこで集まった人々のプロフィール、協力者となってくれた企業などを紹介しながら、先の富永氏と同様、NPOとはいかに人のつながりが大切かを説いています。

NPOでの稼ぐこと、NPOでの給料など、初心者にも分かりやすく実体験から説明されていて、NPOの今を知るのに良い一冊です。

『NPOで働く』
工藤啓著(東洋経済新報社)

広がるNPOのあり方と活動

NPOというと、イコール「ボランティア団体」という理解が強いのですが、今日のNPOの現状は、もっと多様で豊かなものがあります。

もちろん、ボランティア団体もNPOの一員であることは変わりません。しかし、「地域の課題」や「社会の課題」を解決し、人と人との新しいつながりをつくる新しい「事業体」、というのが、今のNPOの主流の姿です。

そこでは、当然、「経営」や「稼ぐこと」「雇うこと」「継続していくこと」「人をマネジメントしていくこと」などが必要となってきています。

ネット募金(クラウドファンディング)や、プロボノ(専門技能を活かしたボランティア)など、寄付やボランティアのあり方も、このようなNPOの変化に従って、進化していっています。

NPO法ができてまだわずか15年ですが、NPOは大きく成長してきました。その理解も大きく変化してきています。

日本社会になくてはならない存在となったNPOですが、今後もさらに大きく成長していくと考えています。ぜひ、その多様な姿にこの3冊の本をきっかけに触れて理解を深めていただければ幸いです。

<松原明(まつばら・あきら)プロフィル>

1960年大阪府生まれ。神戸大学文学部哲学科卒。企業勤務、経営コンサルタントを経て、1994年にNPOの連合プロジェクトとして「シーズ・市民活動を支える制度をつくる会」を結成。事務局長に就任。1998年の特定非営利活動促進法(NPO法)、2001年の認定NPO法人制度制定で、主導的な役割を果たす。2013年3月からは現職。著書に『NPO法人ハンドブック』(シーズ)、共著に『改正NPO法対応 ここからはじめるNPO会計・税務』(ぎょうせい)、『NPOがわかるQ&A』(岩波ブックレット)など。