女性専用車両の導入

「幸せな気持ちで乗れます」
署名と論戦の“連射”が突破口に


「首都圏にも女性専用車両の導入を」と呼び掛けるわにぶち参院議員、野上都議ら=2005年2月20日 東京・葛飾区

2004年は8年前の約3倍の2201件――都内を走る電車内で一年間に発生した痴漢やわいせつ行為の検挙件数だ。

増え続ける被害は朝の通勤通学のラッシュ時に集中。7時―8時台の2時間で約54%を占めた。だが、この件数は氷山の一角。警視庁は「被害を届け出ない女性も多く、実態は数十倍に上るのでは」と指摘する。

電車内での痴漢犯罪発生件数(~05年、都内) 1996年778件 97年1,338件 98年1,707件 99年1,814件 2000年2,101件 01年2,006件 02年1,868件 03年2,058件 04年2,201件 05年2,137件

このデータを裏付けるように、同年夏の参院選で初当選したわにぶち洋子のもとには「毎朝、知らない男性に押しつぶされながら乗る満員電車は本当に苦痛」「一刻も早く女性専用の車両を!」との声が届くようになった。

05年1月、党青年局の青年政策「ユースポリシー」の改定作業の中で、わにぶちは切り出した。「関西では女性専用車両の導入が進んでいる。首都圏でも導入が進むよう働き掛けたい」。

青年局の行動は素早かった。2月初めには、都内の女性議員や若い女性党員らによる署名運動が東京を中心にスタートした。

「首都圏にも、ぜひ女性専用車両を導入させましょう!」――2月の寒風吹きすさぶ中、わにぶちは駅頭でマイクを握った。都に何度も早期導入を求めてきた都議の野上純子も「今こそ実現を」と協力を呼び掛けた。

「頑張って下さい!」「頼みますね」。わにぶち、野上らは女性たちの反応に、期待の大きさを肌身で感じた。

署名運動と並行し、導入の決め手となったのが参院予算委員会だった。

同年2月1日、山本香苗が先陣を切って「東京でも導入を進めるべき」と主張。北側一雄国交相(公明党)は「導入できるよう鉄道事業者に働き掛ける」と表明した。

翌3月4日には浮島とも子が「早急に導入を!」と重ねて要請したのに対し、北側国交相は首都圏鉄道各社による協議会を次週にも発足させる考えを明かし、「できるところから順次、実施を促していく」と言明した。

一方、青年局は3月15日、女性たちの思いが込められた19万人超の署名簿を携え、北側国交相に早期導入を要請した。

公明党の署名と国会論戦の“連射”は、首都圏鉄道各社の意識を転換させる突破口を開いた。

当初は「混雑に拍車をかける」「相互乗り入れもあり、単独での導入は困難」と消極的だった各社はついに同年3月28日、女性専用車両の導入・拡大の方針を決定。JR東日本は4月4日から、大手私鉄と東京メトロ、都営地下鉄は5月9日からの導入を決めた。

「幸せな気持ちで電車に揺られながら、心の中で『公明党ありがとう!』と叫んでいました」と本紙に投稿してくれた杉並区の桐田真理子さんなど、反響は大きかった。

首都圏では、評判とともに導入路線が拡大しつつある。

文中敬称略、肩書は当時
2007年01月05日付 公明新聞