生活密着のテーマで論戦
公明新聞:2018年2月24日(土)付
衆院予算委分科会
衆院予算委員会は23日、2018年度予算案に関して、各省庁別に分かれて審議する分科会を開き、公明党の各氏が国民生活に密着したテーマを取り上げ、論戦を展開した。
介護事務負担軽減を 国重氏 里親の悩みに対応せよ
第5分科会で国重徹氏は、介護関連の事務業務に関して、ケアマネジャーが作成すべき書類が多い実態などに触れ「負担軽減へ実効性ある取り組みを」と訴えた。厚生労働省側は、実態把握と見直しにより「文書量の半減に取り組む」と答えた。
さらに、国重氏は、政府が推進する情報通信技術(ICT)を活用した負担軽減について、現場の使いやすさに配慮するよう求めた。
また、里親に関して国重氏は、性的マイノリティー(少数者)の子どもへの対応も含めた、養育の悩みに分かりやすく答える冊子の作成を提案した。高木美智代厚労副大臣(公明党)は、里親支援の充実に向けて指針の検討作業などを行っているとし「指摘の点も踏まえて取り組みを進める」と述べた。
大学進学支援拡充対象広く 赤羽氏 学校の和楽器配備を促す
第4分科会で赤羽一嘉氏は、大学など高等教育への進学支援に関して、政府が2020年4月から「低所得世帯に限定」して無償化を実施する方針を示していることを踏まえ、「一般的な(所得の)家庭についても(負担軽減策を)考えていくべきだ」と主張した。文部科学省の義本博司高等教育局長は、中間所得層の負担緩和なども含め、今夏までに一定の結論を出せるよう「継続的に検討する」と答えた。
赤羽氏は、高等教育無償化に伴い拡充される給付型奨学金制度について、採否を決める要件として学業成績を過度に重視せず、「意欲ある子どもを一人でも多く支えられる制度」にしていく必要性を訴えた。一方、赤羽氏は邦楽教育の重要性を強調し、小中学校で琴などの和楽器に親しめるよう配備促進を要請。林芳正文科相は、各教育委員会などに整備を促す考えを示した。
ICTの安全性高めよ 太田(昌)氏 サイバー対策強化訴え
第2分科会で太田昌孝氏は、急速に進むICT分野での技術革新が人口減少や高齢社会の課題を解決するツールになると力説。あらゆるものがインターネットとつながる「IoT」や、次世代移動通信システム「5G(第5世代)」の普及を見据えて「幅広い分野でセキュリティーを確保することが重要」と述べ、不正なアクセスを防ぐ対策の強化を求めた。
野田聖子総務相は、今夏にも省内にサイバーセキュリティー対策の司令塔となる統括官を新設するなど「万全な体制で取り組んでいく」と応じた。
また、太田氏は、地方や中山間地の医師不足対策として、5Gと超高精細映像「8K」を生かした遠隔医療の質を向上させることなども訴えた。
25年大阪万博の実現へ 鰐淵さんに河野外相 政府一丸で誘致に努力
第3分科会で鰐淵洋子さんは、2025年大阪万博の誘致実現に向け、「何よりも政府の支援が重要だ」と述べ、地元自治体や企業などと一体で誘致活動を行うよう訴えた。
河野太郎外相は、「外務省をはじめ政府一丸となって努力する。さまざまな関係者に尽力をいただいて誘致を何としても成功させていきたい」と応じた。
一方、鰐淵さんは、19年に大阪で開催されることが決まった20カ国・地域(G20)首脳会合について、「どのような姿勢で取り組むのか」と質問した。
河野外相は、「G20は世界の経済成長と繁栄に大きな役割を果たす。議長国として日本が力強いリーダーシップを発揮して、成功裏に開催したい」と述べた。
被災地特区税制延ばせ 遠山氏 復興事業、なお時間必要
第1分科会で遠山清彦氏は、東日本大震災の被災地の復興を支援する復興特別区域(特区)法による税制上の特例措置について、2020年度までとなっている適用期間の延長を求めた。
この中で遠山氏は、岩手県陸前高田市の事例を取り上げ、「被災者の産業再生支援について現在、土地のかさ上げや土地区画整理事業などを行っているが、なお相当の期間を要する」と指摘。「まだまだ長い道のりが予想される。延長を検討してほしい」と訴えた。
吉野正芳復興相は、特区法による特例措置について、投資や雇用などで復興の加速化に寄与してきたとの認識を示し、適用期間の延長は「基盤整備など復興施策の進捗状況などを踏まえて検討する」と答弁した。
夜間中学開設促せ 佐藤(英)氏
第4分科会で佐藤英道氏は、文部科学省が全都道府県での開設をめざす公立夜間中学について、2019年4月開設予定も含めた設置数が9都府県33校にとどまる現状を指摘し、開設を促すためには「首長に直接働き掛けることも有効だ」と力説した。林芳正文科相は「市町村長などへの働き掛けも含めて必要な取り組みを行う」と応じた。
佐藤氏は、私立高校無償化などで教育費負担の軽減を進める政府の方針に関し、国の制度拡充に伴って「教育ローンの利子補給など自治体独自の支援が後退しないよう」目配りを要請。自治体による支援策の促進を訴えた。林文科相は、自治体の取り組みがさらに進むよう対応すると述べた。
ものづくり補助金期間延長を要望 伊佐氏
第7分科会で伊佐進一氏は中小企業の設備投資などを後押しする「ものづくり補助金」について、政府の柔軟な対応を求めた。
伊佐氏は同補助金の実施期間が短いにもかかわらず、事業者が発注や納品などを期間内に完了させる必要がある条件に言及。「補助金の交付決定後、機械の発注を行うので(間に合わせるのが)厳しい。実施期間を十分に確保してほしい」と訴えた。
中小企業庁の吉野恭司次長は「事業者の状況を見て制度を使ってもらえるよう配慮したい」と答えた。
また、伊佐氏は、月曜午前を半休にする「シャイニングマンデー」について、働き方改革を進めるなど効果があると指摘。普及に向け、政府の取り組みを要望した。
歯科診療活用し骨粗しょう症発見を 濱村氏
第5分科会で濱村進氏は、医科と歯科の連携による骨粗しょう症の早期発見を提案した。歯の治療のために撮影されたエックス線写真を用いて骨密度を測り、同症が疑われる人を医療につなげる「骨粗しょう症スクリーニング」事業に取り組む地域があることに触れ「(事業を)活発化させるべきだ」と訴えた。
高木美智代厚生労働副大臣(公明党)は「関係者の意見をよく聞きながら、医科・歯科連携などの施策を一層推進する」と答えた。
水銀製品の適切な管理・廃棄を主張 濵地氏
第6分科会で濵地雅一氏は、水銀による環境汚染や健康被害を国際的に防止する「水銀に関する水俣条約」に言及し、水銀の有害性を力説しながら規制を強めていく必要性を訴えた。
濵地氏は、一般家庭に放置されている水銀を含む体温計や蛍光灯などの製品について、「適切な管理や廃棄を図っていくことが大事だ」と強調。水銀製品の取り扱い方法などを周知するよう促した。
中川雅治環境相は、水銀汚染防止に向けたパンフレットなどを活用しながら「適切な回収・処理を推進していく」と答えた。
駅のバリアフリー化、ソフト面でも 中野氏
第8分科会で中野洋昌氏は、鉄道駅構内のバリアフリー化に関して、車いす利用者が列車の乗降時に、係員が手伝うサービスで待たされるケースがあることなどを指摘し、「ハード面だけでなく、ソフト面の取り組みも改善を」と主張した。国土交通省側は、車いす利用者の鉄道利用環境の改善に向けた取り組みをさらに進める考えを示した。
中野氏は、兵庫県尼崎市での街路事業や、尼崎城を中心とした“にぎわいづくり”などへの支援を訴えた。
清水港の利便性向上へ事業推進せよ 大口氏
第8分科会で大口善徳氏は、清水港(静岡市)へのアクセス向上などを目的とした国道1号静清バイパス「清水立体」の早期完成に向け、「力強く事業を推進してもらいたい」と訴えた。また、清水港に大型クルーズ船が2隻同時に接岸できるよう岸壁を改良するよう求めた。
石井啓一国土交通相(公明党)は、「(清水立体の)早期完成をめざし整備を進める」としたほか、清水港の岸壁については「改良に向けた設計が終わり次第、着工したい」と述べた。
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