子育て世帯支援へ学校給食費を全額補助

公明新聞:2018年1月12日(金)付

「食の安全網」の役割も
対象人数は全国最多 児童に感謝の心育む
滋賀・長浜市

子どもの健全な成長を支える上で、重要な役割を担う学校給食。少子化対策や貧困家庭の「食の安全網」としても注目される中、その費用を無償化する動きが全国で広がり始めている。そこで、人口10万人以上の自治体としては全国で初めて給食無償化に踏み切った滋賀県長浜市の取り組みを追った。

「いただきます!」。琵琶湖にほど近い長浜市立速水小学校(小森和代校長)。冬休み明けの10日の給食には、鶏肉を使った料理や紅白なます、雑煮汁といった正月をイメージした献立が並び、児童たちの元気な声が響いた。

長浜市は、子育て支援を通じて定住や移住促進につなげようと、2016年9月分から小学校の給食費無償化に踏み切った。対象人数は市内27校に通う計約6600人で、全国で最も多い。

2度の市町村合併を経た同市の人口は約12万人。だが、合併後も人口減少が続き、児童数も年々減っている危機感から、15年度に少子化対策推進本部を設置した。同本部では、子育て世帯の負担軽減策として、ランドセルや制服などの購入費用の助成も候補に挙がったが、最終的に児童全員が平等に恩恵を受けられ、心身の健全な成長につながる給食費の無償化に決めたという。17年度予算では約2億6600万円を計上。小学生1人当たり年間約4万4000円の給食費を全額補助している。

小森校長は「給食は栄養を補うことに加え、家庭では口にすることが少ない食材を皆で楽しく食べるという食育の役割も担っている。子どもたちには、その費用を出してくれる地域の方々の思いを無駄にしないでと呼び掛けている」と語る。

4人の子どもを育てる市内の主婦は、「教育費がかさみ、家計のやりくりが大変な中で負担が減り、とても助かる」と話す一方、「子どもに感謝の心が芽生え、食べ物を残さず食べるようになった」と意識の変化も生まれているという。

市教育委員会の担当者は「市民へのアンケートでは、給食無償化に対し多くの人から高い満足度が得られた。地域全体で子どもを育てるという無償化の趣旨を、今後も丁寧に伝えていきたい」と意気込んでいる。

公明の提案を受け文科省は実態調査

61市町村が無料に

給食無償化の流れは、16年度末までに全国61市町村に広がっている。

このうち、北海道足寄町では、町立の小中学校5校と、町内唯一の高校である道立足寄高で15年度から給食費の無償化を開始。高校まで拡大したのは、生徒数が減り続けて廃校になれば、今後も若者の流出に歯止めがかからなくなるとの危機感があったからだ。

全国の市では北海道三笠(人口約9000人)、兵庫県相生(同3万人)、栃木県大田原(同7万5000人)の各市などが給食無償化を実施している。

一方、全国には給食が実施されていない学校もある。主食・おかず・牛乳がそろう「完全給食」の実施率は小学校の98.6%に対し、中学校では83.7%にとどまる(16年5月時点)。

また、所得の低い世帯では、就学援助制度などを利用すれば給食費が支給されるが、給食が未実施の学校の児童・生徒には昼食の支援が届かない。給食未実施校に通う低所得世帯の児童・生徒への対策は急務だ。

こうした状況を踏まえ、文部科学省は17年度から公立小中学校の給食無償化に関する全国調査に乗り出した。

この調査を提案した公明党は、17年5月に行った政府への提言の中で、全小中学校における完全給食の実施と、地方自治体における学校給食の無償化支援を要請している。

貧困家庭の栄養格差補う

跡見学園女子大学 鳫 咲子教授

子どもの貧困などを研究する、跡見学園女子大学の鳫咲子教授に給食無償化の効果などについて話を聞いた。

学校給食費は、経済的に困難な家庭が申請すれば、就学援助制度などから支給される。しかし、貧しい子どもだけが給食の支援を申し込む方式は、貧困のレッテル貼りにつながり、子どもの自尊心を傷つける。経済的な理由で生じる子どもの食生活の格差は大きい。

無償化すれば、周囲の目を気にして就学援助などを受けることをためらっていた家庭でも給食費の未納問題がなくなり、貧困のレッテル貼りも避けられる。栄養格差も縮まり、子ども同士の格差が小さくなる。

どんな状況であっても、子どもの心身の成長に直結する給食に費用を惜しむべきではない。最近、人口の少ない町村を中心に給食費の無償化が進んでいるが、国には、大都市も含めた全国への普及を後押ししてもらいたい。

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