赤ちゃんの難聴は治る! 静岡県立総合病院の挑戦(上)

公明新聞:2017年12月25日(月)付

母・れいこさんと二人三脚で難聴の克服に挑戦し、聞き、話せるようになった花ちゃん母・れいこさん(右)と二人三脚で難聴の克服に挑戦し、聞き、話せるようになった花ちゃん

娘の耳が聞こえた
1歳前後での治療がカギ

新生児の聴覚スクリーニング(検査)によって1000人に1~2人の割合で先天性難聴が見つかる。早期に発見し、1歳前後に適切な治療・療育を始めれば、健常児と同じように聞き、話せるようになるという。しかし、専門的な公的療育施設がないなど課題は多く、聞く力のスムーズな獲得につながっていないのが現状だ。静岡市にある静岡県立総合病院で副院長(耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長)を務める高木明医師が“赤ちゃんの難聴を治す”という強い信念で取り組む先駆的な挑戦の様子を追った。

2009年10月15日、静岡市に住む松澤れいこさんの愛娘、花ちゃんが県立総合病院で生まれた。喜びもつかの間、翌日に受けた聴覚検査で異常が見つかり、1カ月後の精密検査で先天性高度難聴と診断された。ジェット機の音も聞こえないほどの状態と説明され、れいこさんは立ち直れないほどショックを受けた。

希望を見いだす転機となったのが、高木医師との出会いだった。同医師からは、花ちゃんが「言語学習の最適期」といわれる1歳前後のときに補聴器や、脳に音の信号を送る人工内耳を装用することを勧められた。それは脳に音を入れることによって、健常児と同様に、雑音と意味のある音を聞き分けられるようになるという内容。言葉も伸びていくことを知った。

れいこさんは、花ちゃんの人工内耳装用手術を決意。生後11カ月から右耳、左耳の順に装用した。すると明らかな変化が。次第に言葉にならない声を発するようになったのだ。れいこさんは花ちゃんの成長を実感し、その後も言葉を通じたコミュニケーションで精いっぱいの愛情を注いだ。

花ちゃんは1歳で保育園に入った。あえて健常児と同じ保育園を選び、雑音の多い場所で耳を訓練できるようにした。保育士には、人工内耳に声が伝わる専用マイクを使ってもらった。花ちゃんは2歳で言葉を話すようになるなど、みるみる成長した。

小学校を選ぶ時期。花ちゃんに「自分の力で道を切り開ける人間に成長してほしい」と、れいこさんは、静岡大学教育学部付属静岡小学校を受験させた。花ちゃんは見事に合格。今では2年生になり、九九をスラスラ暗唱できるほど言葉も発達し、元気な毎日を送っている。

切れ目ない支援体制必要

高木医師は、脳が音から意味を獲得できる時期は「1~3歳まで」と限られている点を強調する。その上で「先天性難聴を治すには早期発見から治療、療育までの切れ目のない支援が不可欠だ」と訴える。これまで静岡県には、難聴の早期発見を、その後の精密検査や人工内耳の手術、療育にスムーズにつなげる体制がなかったことが懸案だった。

1999年、高木医師が音頭を取って、産科・耳鼻科の医師や行政の担当者、ろう学校教員など関係機関の職員で構成する「静岡県聴覚障害児を考える医療と保健福祉と教育の会」を発足。月2回の定例会で意見交換しながら、早期治療・療育の体制作りを手掛けてきた。

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