主張「不明土地」利用権 抜本解決へ なお議論深めよ

公明新聞:2017年12月25日(月)付

抜本的対策とは言えぬまでも、一歩前進であることは間違いない。早期の成立を求めたい。

国家的課題として浮上している所有者不明の土地問題で、国土交通省が有効活用に向けた制度を創設する方針を明らかにした。来年の通常国会に新法案を提出し、2019年度からの施行をめざす。

新法案の柱は、所有者不明の空き地に5年以上の期間で設定する「利用権」。市町村や民間業者、NPOなどが農産物直売所など公益性のある事業に使えるようにする。

併せて、国や地方自治体が土地取得のために行う調査手続きの簡素化や、所有者が見つからなかった場合、都道府県知事の判断で公有化を決定できる旨も盛り込む。

増田寛也元総務相ら民間有識者でつくる研究会の調査によれば、所有者不明の土地は16年時点で全国に約410万ヘクタールある。実に九州の面積約367万ヘクタールを超える規模だ。

このまま推移すれば、40年には北海道本島と同水準の約720万ヘクタールに達し、経済的損失は6兆円に上るという。

不明土地増加の背景にあるのは、地価は上がるという土地神話の崩壊と、それに伴う所有者の相続意識の低下だ。

結果的に相続人は、所有者が死亡しても税負担や管理の手間を嫌って登記手続きをせず、故人名義のまま放置することになる。長期間の放置で、相続人がねずみ算式に増えるという弊害も出ている。

問題が顕在化したきっかけは東日本大震災だった。高台移転事業一つを見ても、所有者不明の土地が次々と出てきて、幾度となく計画の変更を余儀なくされた。

これら不明土地には雑草が生い茂り、ゴミの不法投棄など環境面にも悪影響を及ぼしていることは、全国どこの不明土地も同じだろう。

利用権の設定は、こうした所有者不明土地を巡る諸課題に本格的なメスを入れるものだ。空き地の積極利用によって、不明土地の増加に抑制がかかることが期待される。

ただ、専門家が一様に指摘する通り、これだけでは不十分なことも事実だろう。国民の意識改革や不要土地の受け皿づくり、相続登記の促進など、抜本的な解決に向けてなお議論を深める必要がある。

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