政府予算案のポイント

公明新聞:2017年12月23日(土)付

22日に閣議決定された政府の2018年度予算案と17年度補正予算案のポイントを紹介する。

2018年度

子育て支援・教育

幼稚園利用料引下げ
給付型奨学金を拡充

保育の受け皿整備を加速待機児童解消に向けた「子育て安心プラン」を前倒しし、20年度までに32万人分の保育の受け皿を確保する。主に従業員のための企業主導型保育所など、18年度は11万人分として保育所などの整備・改修費に1152億円を計上した。

低所得の一人親家庭を支援する児童扶養手当は全額を支給する基準年収を130万円未満から160万円未満に引き上げ、対象者を増やす。生活保護世帯の子どもが大学に進学する際に最大30万円の一時金を支給する制度も設ける。

教育では、新学習指導要領で正式教科となる小学校英語への対応で、学級担任を受け持たない教員を1000人増やすなど、教職員定数を1595人増員する。外部人材が中学の部活を指導する「部活動指導員」や、教員の事務を補佐する「スクール・サポート・スタッフ」計7500人の配置事業も新たに始め、学校現場の働き方改革を推進する。

20年度から実施する幼児教育の段階的無償化に向けて、18年度は幼稚園利用料の負担を軽減。年収約270万~約360万円の世帯を対象に、第1子は月4000円、第2子は同2000円引き下げる。

17年度から始めた返済不要の給付型奨学金は、対象を2万人増やし、国公立大、私立大の違いなどに応じて月額2万~4万円を支給。大学の授業料減免措置も対象者を拡大し、教育費の負担軽減を進める。

社会保障

介護職員処遇改善進む
難病など拠点病院支援

18年度の診療報酬改定は、医師の診察料などに当たる本体部分が0.55%引き上げ、薬価は1.45%引き下げで決着した。診療報酬の一部は患者の自己負担で賄うため、治療に関する患者負担は増え、薬剤費の負担は減る。

介護報酬もプラス改定で、経験・技能のある人を中心に、介護職員の大胆な処遇改善が進む。ただ、利用者や保険料を支払う人の負担は増える見通し。生活保護世帯の生活扶助は段階的な引き下げが始まる。

医療関連では、難病やアレルギー疾患の患者に対して、全国で“適切な医療”を提供する体制を整備するための新規事業を始める。難病対策では、各都道府県の拠点病院を中心とした連携体制づくり、アレルギー疾患対策では医師の育成などを担う全国の中心拠点病院の支援を行う。

また、未就学児までの医療費助成については、これまで独自に医療費を助成していた自治体に対する国民健康保険の減額措置を廃止する。これにより自治体が無理なく制度を継続できる上、浮いた財源は他の少子化対策の拡充に充てることができる。

公共事業

大都市圏の物流網強化

公共事業関係費は、前年度から26億円多い5兆9789億円が計上され、0.04%とごく小幅ながら、当初予算では6年連続の増額となった。生産性向上のため、大都市圏の道路整備などを加速。7月の九州北部豪雨などを踏まえた防災・減災対策や、インフラの老朽化対策にも重点を置いた。

三大都市圏環状道路などの整備に4.6%増の2283億円を投じ、物流網の強化を図る。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)や東海環状自動車道には、国が調達した資金を長期間、低金利で貸し付ける財政投融資(財投)も活用し、圏央道については24年度までの全面開通をめざす。

防災・減災では、近年大きな水害や土砂災害が発生した地域で、河川改修工事などを進めるため、24.2%増の492億円を計上。自治体のインフラ老朽化対策などを支援する「防災・安全交付金」は0.5%増の1兆1117億円を確保した。

中小企業

事業承継・再生に重点

産学官連携による研究開発支援や、地域企業間の連携による設備投資補助に162億円を措置し、重点配分した。

後継者問題に悩む企業への事業承継支援には69億円を計上した。具体的には、「よろず支援拠点」の活用や「事業引継ぎ支援センター」の人員拡充による相談体制の強化をはじめ、財務上の問題を抱える企業の事業再生を支援する「再生支援協議会」を通じた取り組みを後押しする。

観光

国際会議を誘致

観光庁の予算は前年度比17.9%増の248億円と過去最高となった。19年1月から出国者を対象に国際観光旅客税を導入し、32.5億円(政府全体では60億円)の歳入を確保することが要因。20年に訪日外国人旅行者を4000万人に増やす目標に向け、経済効果の大きい国際会議や展示会の誘致などを強化する。

また、旅行者に空き部屋を有料で貸し出す「民泊」が18年6月に始まるのに備え、事業者情報を行政機関が一元管理するシステムを構築する。

農業

収入保険制度を創設

国によるコメの生産調整(減反)を廃止することに伴い、転作助成金に前年度当初比154億円増の3304億円を充て、主食用米の過剰作付けを防ぐ。

また、農家の所得の向上と安定を図る観点から、260億円を確保し、自然災害や農作物の価格下落など農家の収入減少を補償する「収入保険制度」を創設する。19年産全ての農産物から対象となり、過去5年間の平均収入の8割程度を確保する。

スポーツ

東京五輪へ選手育成

20年東京五輪・パラリンピックを控え、文部科学省のスポーツ関係予算は前年度比1.8%増の340億円で、過去最高。五輪に向けた選手育成・強化事業に4.9%増の96億円を投じるほか、ドーピング防止に向けた体制を整備するため、検査員の育成などに3億円を計上した。一方、20年パラリンピックの開催経費のうち、大会組織委員会や都との協議で合意した国の負担分300億円は、17年度補正予算案に一括計上する。

17年度補正

防災交付金が大幅増

地域の避難所 学校施設の整備も

17年度補正予算案では、自公政権の優先課題である「人づくり革命」や「生産性革命」の関連費用に加え、農業対策費、九州北部豪雨の災害復旧費などを盛り込んだ。財源の一部は建設国債を1兆1848九州北部豪雨で被害を受けた現場を視察する石井啓一国土交通相(中)ら=7月 福岡・朝倉市億円追加発行して賄う。

内訳では、中小河川の緊急点検など防災・減災事業に9131億円を充てる。自治体が道路や橋などのインフラの老朽化対策などを進める「防災・安全交付金」を大幅に拡充するほか、災害時に避難所となる学校施設の整備も行う。

農業対策費は3465億円。欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)や環太平洋連携協定(TPP)署名11カ国による新協定の発効をにらみ、国産チーズの競争力強化や農林水産品の輸出拡大に向けた費用を盛り込んだ。

このほか、中小企業の設備投資などを後押しする「ものづくり補助金」の拡充など生産性革命や人づくり革命の関連費用が4822億円計上されている。

景気回復や所得改善を背景に
税収、27年ぶり高水準

18年度の一般会計税収は、17年度当初予算比2.4%増の59兆790億円と見込んだ。着実な景気回復や所得環境の改善が続くとの見通しから所得税、法人税、消費税の主要3税が堅調で、1991年度の59兆8204億円(決算ベース)以来、27年ぶりの高水準になる。

例えば、所得税が19兆200億円と97年度以来の高水準を見込む。給与収入が伸びるとみている。2017年度見込みも株式配当からの税収などが増え、当初比6270億円増の18兆5750億円に上方修正した。

財務省が22日に発表した18年度の国債発行計画によると、発行総額は17年度当初計画より4兆778億円少ない149兆8856億円と4年連続で減少した。当初ベースでは09年度以来9年ぶりの低水準だ。

このうち、一般会計予算の財源不足を補う新規国債発行額は、17年度当初比6776億円減の33兆6922億円で8年連続で前年度を下回った。税収増で9年ぶりに33兆円台となった。

税収なども含めた一般会計の歳入全体に占める国債発行の割合を示す国債依存度は0.8ポイント減の34.5%となり、8年連続で低下する。

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