主張人食いバクテリア 患者が過去最高。予防と早期受診を

公明新聞:2017年12月7日(木)付

インフルエンザが全国的な流行期に入ったばかりだが、他にも注意が必要な感染症がある。

国立感染症研究所は5日、「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の今年の患者数が493人となったと発表した。1999年の調査以降、最多である。

この感染症の警戒すべき点は、症状が急速に悪化することと、致死率が30%にも上ることだ。死に至る場合、発症から死亡まで数十時間以内のケースも少なくない。多臓器不全や手足が壊死して切除が必要になることから「人食いバクテリア」とも呼ばれる。

患者は成人がほとんどで、とりわけ免疫力が低下する高齢者に多いことも特徴の一つとされる。

しかし、いたずらに不安を募らせてはいけない。まずは、病気に対する理解を深め、早期発見や予防に努めるよう心掛けたい。

この感染症を引き起こす主な病原体は、「A群溶血性レンサ球菌」である。この菌自体は珍しい菌ではなく、普段は人間ののどや皮膚などに生息し、子どもを中心に咽頭炎や皮膚炎などの原因となる。

重症化するのは、通常は細菌が存在しない血液や筋肉、肺などにレンサ球菌が侵入した場合だ。数時間から数日の間に菌が増殖して症状が急速に進行し、最悪の場合、死に至る。

初期症状は、発熱や悪寒など、風邪に似ている点がやっかいである。加えて、手足の痛みや腫れも伴う。菌の増殖によって痛みがあった場所が赤みを帯びたり、皮膚に水疱ができることもある。気になる場合は、医療機関に相談するようにしたい。早期に治療を始めれば、抗菌剤が効果を発揮しやすい。

何より予防が大切である。他の感染症と同様、手洗いやうがいの励行が基本となる。また、手足にある傷口から菌が入り込む可能性も考えられる。傷口を清潔に保つようにしたい。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症については、なぜ症状が急速に悪化するのか明確な仕組みは分かっていない。しかし、患者は年々増え続けている。国や自治体は、国民への情報発信と注意喚起に努めてほしい。

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