人への投資-教育充実めざして(下)

公明新聞:2017年8月23日(水)付

幼児教育無償化
育児世帯の負担を軽減
将来の所得増やし貧困防ぐ
大阪・守口市で完全実施

大阪府守口市の「市立あおぞら認定こども園」(速水弘美園長)。中に入ると「こんにちは!」と子どもたちの笑顔が返ってきた。市は子育て世代の定住を促そうと、市議会公明党の提案を踏まえ、今年4月から0~5歳児の幼児教育無償化を始めた。“完全無償化”は全国的にも珍しく、「先進的な取り組み」(安倍晋三首相)として注目を集めている。

所得制限はなし。認定こども園、保育園や保育所、幼稚園、小規模保育事業所などに通う約4600人が対象で、他の自治体の施設を利用する場合も無償。給食費は自己負担で、認可外施設は対象外とした。

5歳と2歳の子どもが保育所などに通う橋本理恵さん(33)は「毎月3万円ほど浮くので本当に助かる」と語る。無償化による子育て世帯の経済負担の軽減を歓迎する声は多い。

無償化で幼児教育を受ける子どもの数が増える効果が出る一方で、受け皿づくりを同時に進める必要性も浮き彫りに。市は昨年度、認定こども園などの受け入れ枠を455人分増やしたが、4月1日時点でその枠を超え、待機児童数は前年比31人増の48人に上る。

毎年必要な予算の確保に向け、市は公立保育所の民間委託や統廃合で約8.5億円を捻出する方針だ。

経済協力開発機構(OECD)の2013年度版資料によると、日本の幼児教育支出の公財政負担の割合は45.2%とOECD平均の82.1%を大きく下回る。

子育て家庭には、重くのしかかる教育費負担が出産をためらう理由にもなっている。こうした点から幼児教育への投資には「少子化の克服」という効果が見込まれる。幼児期に質の高い教育を受ければ、その後の学力向上や将来の所得向上などにつながり、長期的な視点に立った貧困防止策にもなる。

公明党は幼児教育無償化を一貫して訴え、14年度以降は低所得世帯の第2子以降などが無償化されている。課題は財源だ。内閣府試算では、0~5歳児の無償化には約1.2兆円が必要になる。

党の教育費無償化財源検討プロジェクトチーム(座長=浮島智子衆院議員)は5月、0~2歳児も含む幼児教育無償化を安倍首相に提言。財源には民間資金の活用や、所得税、相続税の見直しなどのほか、将来的に消費税の見直しを検討する際の使途に教育を位置付けるべきと訴えた。

未来を担う人材への投資を前に進めるため、引き続き、検討を進めていく方針だ。

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