主張認知症サポーター 地域で活躍できる環境整備を

公明新聞:2017年7月14日(金)付

認知症になっても安心して暮らせるか不安―。本人や家族にとって切実な問題であり、周囲の手助けなしには立ち行かない人は多い。そこに、地域がどう支援の手を差し伸べられるか。高齢化の進展に伴い認知症の人が増える中、対策が急がれている。

こうした中で政府が、現在約906万人いる「認知症サポーター」を、2020年度末までに1200万人にする目標を決めた点に注目したい。

認知症サポーターは、05年に厚生労働省が創設したボランティア制度で、地域や職場、学校などで養成講座を受講すれば資格を得られる。

認知症サポーターの役割としては▽認知症を正しく理解し偏見を持たない▽近隣の認知症の人や家族にできることから手助けする▽地域の医療や介護、行政など関係機関と協力・連携して応援する体制をつくる―などだ。

認知症サポーターの活動の多くは「見守り」で、いざという時のセーフティーネット(安全網)となる。

静岡県東伊豆町では、町内の認知症高齢者に積極的な声掛けを行ったところ、徘徊による行方不明者を捜索する事態が2年間発生していない。鹿児島県伊佐市では、家族の悩みを聞く会を定期的に実施。「心に余裕ができ、笑顔が出るようになった」との声が寄せられている。

その上で指摘しておきたいのは、認知症サポーターが地域で活躍することは、決して容易ではないという点だ。

実際、900万人を超えるサポーターが誕生しているにもかかわらず、地域にその存在が知られているケースは少ないのではないか。サポーターが活躍できる環境をどう整備するかが課題と言えよう。

積極的な情報提供も重要である。最新の認知症対策など必要な情報をサポーターに周知して支援に役立てていきたい。また、介護や看護の専門職や医療関係者との連携強化を進め、サポーターの相談に応じる必要があろう。

地域によってサポーターの数に格差が生じていることも見過ごしてはならない。人口に占めるサポーター数の割合を見ると、東京都や埼玉県、神奈川県などが低い。こうした地域では、広報や啓発活動の強化を急ぎたい。

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