主張避難市町村広域連携 相互協力で福島再生を前へ

公明新聞:2017年6月19日(月)付

復興格差を是正し、住民帰還を促す上で、欠かせぬ視点と言っていいだろう。「お互いさま」の精神で、オール福島の再生につなげてほしい。

東京電力福島第1原発事故で避難指示が出た福島県内12市町村の復興に向けて、復興庁が広域連携の取り組みを強化する方針を固めた。

情報通信技術(ICT)を活用した教育の推進など12市町村が抱える共通の課題を広域連携の重点分野と位置付け、この分野での人材派遣や財政措置を支援する。今年度中にも一部事業に着手し、来年度から本格化させる考えだ。

12市町村に出されていた避難指示は、今春までに一部地域を除いて居住制限と避難指示解除準備の両区域で解除され、住民帰還も徐々に進む。

ただ、解除時期や自治体の規模などによって復興の進み具合に開きがあり、復興格差が深刻化しつつあるのも現実だ。県の担当者は「アンバランスな復興は、12市町村はもとより、福島全体の再生を遅らせかねない」と危惧する。

こうした歪つな復興を修正し、均衡ある再生を図るため、複数の自治体が共通の課題克服に向けて協力し合う広域連携の手法が有効なのは間違いあるまい。福島発の新たな広域行政のモデル誕生を期待する声も聞かれる。

復興庁によれば、広域連携の重点分野はICT教育の推進のほか、消防団の広域的協力や交流人口の拡大など6テーマに及ぶ。

このうちICT教育では、民間の専門家を小中学校に派遣。先進的な教育実践で住民の帰還を促す一方、福島国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の担い手育成にもつなげる。

また、消防団の広域連携では、人材や資機材・設備の共有で団員不足を補充。交流人口の拡大では、市町村を跨いだ震災遺構巡回観光などを進める計画だ。

事業を成功へと導くための鍵は、当事者たる12市町村と国との間の“距離感”だろう。上から目線で必要以上に国がコミットするような広域連携では、各市町村の主体性が損われ、かえって復興格差が拡大しかねない。

福島再生へ、地元の意向が最大限尊重された理想的な広域連携の創出を期待したい。

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