殺処分から犬、猫を救え!
公明新聞:2017年6月8日(木)付
近年、減少傾向にあるものの、飼育放棄などで保護された犬や猫は全国で13万匹を超え(2015年度)、このうち8万匹が殺処分されている。こうした事態に歯止めをかけようと、東京都は昨年秋、20年の東京五輪・パラリンピックまでに殺処分ゼロをめざす方針を打ち出し、対策を加速させている。その取り組みを追った。
今月4日の日曜日の午後。都に保護された犬や猫を一時的に預かる東京都葛飾区の民間シェルターで、新しい飼い主に命をつなぐ譲渡会が開催された。
この日は、犬15匹と猫10匹が譲渡対象で、ケージ(柵)の中で甘えたり、鳴き声を上げる猫がいる一方で、外のデッキで走り回る犬の姿も見られた。来場した子ども連れの家族や夫妻らが犬、猫をなでたり、えさを与えたりして楽しんでいた。
会の主催は一般社団法人「アルマ」。都のほかに千葉、埼玉の動物愛護センターなどからも犬や猫を引き取り、毎年、約300匹を“里親”に譲渡している。
譲渡会では、犬や猫の一生に責任を持って飼ってもらうため、①不妊・去勢手術など医療費の一部負担②経済的余裕があること③単身者や高齢者世帯のみの場合、保証人を立てる――などを譲渡の条件にしている。気に入った犬や猫がいれば、2週間の試行期間を経て正式譲渡となる。
この日、母親と一緒に参加した小学生は「たくさん動物がいて楽しい。どの犬にするか迷う」と笑顔で話していた。
都、16年度は犬ゼロを達成
これまで都内では、こうした譲渡会を都動物愛護相談センターと連携する48の保護団体が地道に開催してきた。その結果、16年度は、愛護センターに引き取られた後に死亡したものなどを除くと、犬の殺処分数がゼロ匹となり、猫は前年の半分となる94匹に減少した。
殺処分ゼロを打ち出した昨年の秋以降、都は11月を「動物譲渡促進月間」に指定したほか、愛護センターのホームページで48団体の譲渡会情報の発信を始めた。同11月にはJR新宿駅西口で譲渡活動に関するパネル展やパンフレット配布などを行うPRイベントを活発に実施した。
愛護センターの金谷和明所長は、「譲渡活動の推進力となるボランティアの存在が大きい。動物の生い立ちや性格と、飼い主の相性などを見極めて双方をつないでくれている」と語る。
子猫救うボランティアを支援
さらに都は17年度から猫の殺処分ゼロへ、取り組みを強化している。都で殺処分される猫のうち5割が子猫だ。こうした事態を踏まえ、離乳できるまで育て、里親探しを行うミルクボランティアに、ミルク缶やペットシートなどの提供を今年度から始めた。
猫ゼロ、6年間継続中
千代田区
ボランティア団体によっては、譲渡会場の確保に苦労したり、資金難から活動に行き詰まることも少なくない。
こうした中、東京都千代田区はボランティア団体との協働の取り組みで、猫の殺処分ゼロを、11年度から6年連続で実現している。
具体的には、同区が、“飼い主のいない猫”の繁殖を防ぐため、00年度から去勢・不妊手術やワクチン接種などの費用は、区の助成でほぼ賄えるようにした。そして、ボランティア団体が制度を利用して不妊手術などを終えた猫を、捕獲した場所に“地域猫”として戻すようにした結果、千代田区から都動物愛護相談センターへの持ち込みは、11年度にゼロとなった。
また同区は、区役所の会議室を譲渡会の会場として提供するだけでなく、保健所職員も参加し、里親探しにも力を入れている。これまで計16回の譲渡会で175匹が引き取られた。
公明 動物愛護施策を拡充
動物の殺処分ゼロをめざしている公明党の推進で、12年に成立した改正動物愛護管理法では、飼い主がペットが命を終えるまで面倒を見る「終生飼養」の責任を明記。16年12月には、党の環境部会と動物愛護管理推進委員会が、動物の適切な飼育・譲渡の推進やマイクロチップ(飼い主情報)装着義務化の検討などを政府に要望している。
一方、都議会公明党は「動物との共生を進めるプロジェクトチーム」(高倉良生座長、都議選予定候補=中野区)を中心に取り組み、議会質問などで老朽化する都動物愛護相談センターの早期建て替えなどを訴えてきた。この結果、都は17年度の予算に、愛護センターの移転・改築や、譲渡会などのイベントを開催しやすい環境整備、子どもが命の大切さを学ぶ動物教室の充実などを盛り込んだ。
さらに都議会公明党は都議選重点政策に、保護、譲渡、教育など愛護センターの機能拡充を掲げている。
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