「天皇の退位」特例法案を閣議決定

公明新聞:2017年5月21日(日)付

北側 一雄副代表北側 一雄副代表

北側 一雄副代表に聞く

天皇陛下の退位を現在の天皇に限って可能にする特例法案が19日、閣議決定された。特例法案は、3月に与野党の多くが了承した「衆参正副議長による議論のとりまとめ」を踏まえ、退位に至る経緯や皇室典範付則に特例法案の根拠規定を置くことなどを盛り込んだ【表参照】。国会でのこれまでの議論について、公明党の北側一雄副代表に聞いた。

退位の背景

陛下の「おことば」国民が理解

―天皇陛下の退位を議論することになった背景は。

北側一雄副代表 議論の出発点になったのは昨年8月8日の天皇陛下の「おことば」です。その中で陛下は、「即位以来、私は国事行為を行うと共に、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来ました」と述べられ、さらに「社会の高齢化が進む中、天皇もまた高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか」とのご発言もありました。今日に至るまでのご自身の思いを、お言葉を選ばれながらも、率直に表明されたと思います。

日本国憲法には天皇の地位は「日本国民の総意に基く」とあります。国民が陛下の「おことば」をどう受け止めたかについて、全国民の代表で組織された国会として、「国民の総意」を探るための議論を進めました。

―「おことば」にある「象徴と位置づけられた」天皇のあり方とは。

北側 天皇の行為には、(1)国事行為(2)象徴としての地位に基づく公的行為(3)私的行為―があります。このうち、公的行為は、被災地の視察や戦没者の慰霊など天皇の意思に基づく行為で、国民と直に触れ合う活動が多く含まれています。公的行為は、憲法上の明文の根拠はありませんが、その時代の天皇の思いが国民の期待とも相まって形づくられるもので、国民と共にある象徴天皇の重要な行為と言えます。

―「おことば」を受けて、どんな議論になりましたか。

北側 「おことば」の後、国民の間に議論が広がりました。政府では有識者会議が設けられ、国会は、衆参の正副議長の下に各政党の代表者が集まり、1月から全体会議を8回実施しました。与野党を超えて議論し、合意形成を進めました。3月には「議論のとりまとめ」が了承され、それに基づき政府から特例法案が提示され、5月19日に閣議決定がなされました。

国民の議論

与野党超えた合意形成へ

―国会ではどのような議論がありましたか。

北側 政府の有識者会議が行った識者からのヒアリングでは多様な意見が出されました。その中には、一部に、退位を認めるべきでないとの意見もありました。

そもそも皇室典範では退位の規定を設けず、天皇は終身在位としています。その理由は、(1)退位した天皇と新たな天皇の権威の二分化(2)退位の強制(3)恣意的な退位の可能性―など、天皇の地位の安定に影響を及ぼすおそれを排除するためとされていました。

天皇制度の安定的な維持を図るためには、天皇の終身在位制という基本は維持されるべきと考えます。

しかしながら、現代の高齢社会にあって、日本国憲法における象徴天皇制の下で、このような弊害の生じるおそれのない退位については、国民合意の上で認められるべきです。

陛下の「おことば」を受け、多くの国民は退位をやむを得ないものと受け止めています。こうしたことから各党派との議論でも退位を認めることで一致しました。

―退位を認める法形式についても大きな議論になりました。公明党の考え方は。

北側 退位の法形式は、「議論のとりまとめ」では一代限りの特例法案とすることになりました。

議論では、退位を将来のすべての天皇に認める恒久制度とするべきとの意見もありましたが、将来にわたる退位の要件を、一般的に規定することは極めて困難です。例えば、「天皇の退位の意思」を要件とすることは、憲法4条1項に定める「天皇の国政関与禁止」に反する疑いが生じます。

公明党は、一代限りの特例法とする立場を取りました。そして、将来、退位が問題になった時は、国会において、その時代の国民の意識、社会状況、天皇の年齢と皇位継承者の年齢、皇室の状況などを踏まえ、慎重に審議することが望ましいと主張しました。

また、一代限りの特例法とはいえ、法文に退位に至る事情を具体的に書き込むことで、今回の特例法が将来の重要な先例となると指摘しました。公明党のこうした主張を受け、与野党を超えた合意が形成され、「議論のとりまとめ」となりました。

公明の主張

幅広い理解に大きな役割

―公明党は合意形成にどう努めたか。

北側 今回の特例法案には、皇室典範の付則に、特例法が皇室典範と一体を成すものであるという規定を盛り込みました。一部に「皇室典範」という名前の法律に規定しないと、憲法違反になるという意見がありました。公明党は、特例法も国会で議決した法律で、実質的には皇室典範であり、憲法違反には当たらないという立場ですが、そうした疑念を払拭するため、各党派全体会議の場で提案し、法案にも盛り込まれました。

公明党は、幅広い合意を得るために大きな役割を果たせたと思います。

―今後の議論は。

北側 国会では特例法案の審議が始まりますが、できるだけ早期に今国会で成立を期していきたいと思います。

一方で、皇位継承、天皇制度の安定を、今後どう確保するかは大変重要な課題です。引き続き議論を行っていきます。

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