Q&A 「テロ等準備罪」法案

公明新聞:2017年4月28日(金)付

人権守り、重大犯罪と戦う

テロなど組織的な重大犯罪を防止するため、それを計画し準備した段階で処罰できるようにする「テロ等準備罪」の新設をめざす組織犯罪処罰法改正案(「テロ等準備罪」法案)が国会で審議されています。テロ等準備罪の必要性や論点、かつて議論された「共謀罪」との違いなどについてQ&A形式で説明します。

Q なぜ必要なのか?
A テロの未然防止のため

テロ等準備罪を新設する理由は、テロなどの組織的犯罪を未然に防ぐためです。日本では、2019年にラグビー・ワールドカップや、翌20年に東京五輪・パラリンピックが開催されます。こうした国際大会は、世界中から注目が集まる上、多くの外国人が日本を訪れるので、テロの脅威も高まります。世界各地でテロ事件が頻発する中、対策は喫緊の課題です。

テロの未然防止には、情報交換や捜査協力など国際社会との連携が必要です。このため政府は、すでに187カ国・地域が締結している国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の早期締結をめざしています。

条約は、重大な犯罪の「合意」、またはテロ組織など犯罪集団の活動への「参加」の少なくとも一方を犯罪とするよう求めており、日本が同条約を締結するには、「テロ等準備罪」法案の成立が不可欠です。

日本はこれまで、国際社会から繰り返し同条約を締結するよう要請や指摘を受けてきました。これは日本の信頼が問われる問題であり、深刻な受け止めが必要です。公明党の山口那津男代表が今月11日、アラブ諸国15カ国の駐日大使と懇談した際にも、「(国際社会が結束してテロに立ち向かおうとする)この流れの中で、どうして法律に反対する意見があるのか理解できない」という声が寄せられました。

TOC条約の締結について民進党は、「新たな法整備は不要」と主張しています。しかし、民主党時代、共謀罪を導入せずに条約を締結すると公約を掲げて政権に就いたものの、3年3カ月の政権期間中、締結できませんでした。これに関する明確な説明は、いまだになされていません。

Q “内心”の処罰が狙いでは?
A 準備行為がないと逮捕できず

過去の「共謀罪」法案との違いテロ等準備罪に対して「内心の自由が侵害される」との誤った批判がありますが、同罪は内心を処罰するものではありません。

かつての共謀罪は、犯罪の合意があれば処罰できるとしていました。しかし、テロ等準備罪は、対象となる犯罪の遂行を2人以上で具体的・現実的に「計画」(合意に当たる)することに加え、「計画」に基づいて資金や物の手配、関係場所の下見といった犯罪を実行するための「準備行為」が行われて初めて成立します。

「居酒屋で上司を殴ってやろうと話し合っただけで犯罪になる」などといったことは起こり得ません。

金田勝年法相も「犯罪の『計画』だけでは処罰されず、『実行準備行為』があって初めて処罰対象とすることで、内心を処罰するものではないし、処罰範囲も限定した。かつての共謀罪とは大きく異なる」と明言しています。

Q 市民生活まで監視するのか?
A 組織的犯罪集団だけが対象

テロ等準備罪の犯罪主体は、テロ組織、暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺集団といった「組織的犯罪集団」に限定されています。組織的犯罪集団とは、犯罪を目的とした団体であり、民間団体や労働組合を含め、一般の人は捜査対象になりません。

一部に、「警察の捜査が広がり監視社会になる」との批判がありますが、そのためにどれだけのマンパワー、コストがかかるかを考えても、あまりに非現実的です。

政府も国会審議で「通常の社会生活を送っている一般の人々が『組織的犯罪集団』に関与することも、関与していると疑われることも考えられないので、一般の人にテロ等準備罪の嫌疑が生じることはなく、捜査対象になることはない」と明確に述べています。

Q 警察が拡大解釈し乱用しないか?

A 裁判所が行き過ぎた捜査を阻止

警察が「テロ等準備罪」を拡大解釈し、意図的な捜査をするのではないかとの懸念があります。

しかし、どのような犯罪でも嫌疑がなければ逮捕や家宅捜索などの強制捜査をすることはできません。嫌疑がなければ裁判所が令状を交付しないからです。

テロ等準備罪の嫌疑は、「組織的犯罪集団」がテロなどを具体的・現実的に「計画」し、「準備行為」を実施した段階で初めて生じ、捜査の対象となります。実行準備行為がなければ、単に「あの組織は怪しい」だけで強制捜査はできません。

政府も、「テロ等準備罪の捜査も他の犯罪捜査と同様、捜査機関が犯罪の嫌疑があると認めた場合に初めて捜査を開始する」と述べています。さらに、捜査のきっかけをつかむための常時監視も明確に否定しました。

Q 国際社会の取り組みは?
A TOC条約で国際協力進める

国際組織犯罪防止条約(TOC条約)は、国連安全保障理事会もテロ対策に必要な条約として認め、国連加盟国に締結を求めています。

2003年に発効しましたが、締約国になっていないのは先進7カ国(G7)では日本だけ。国連加盟国全体でも日本を含め11カ国のみです。

条約未締結の日本が外国と協力して捜査する場合、基本的には外交ルートを通じて行う必要があります。

しかし、外国の捜査機関→外国の外務省→日本の外務省→日本の捜査機関という現在の手続きでは、余分な時間がかかり、意思疎通にも難があるなど、迅速性や効率性で問題があります。条約が締結されれば、捜査当局者同士で迅速な対応が可能となります。

犯罪人の引き渡しについても、重大な犯罪の合意罪を犯した人物が日本に逃げ込んだ場合、締約国になっていなければ、外国からの引き渡し請求に応えられません。

条約は、重大な犯罪(死刑・無期および長期4年以上の懲役・禁錮刑の罪)を行う「合意」、または組織的な犯罪集団の活動への「参加」の少なくとも一方を犯罪とするよう求めています。

しかし、国内には「重大な犯罪の合意罪」に当たる罪は一部の犯罪にしか規定がなく、「参加罪」は存在しません。

そこで、どうしても「テロ等準備罪」の新設が必要です。

共謀罪とは全く違う法案 日本をテロ対策の“穴”にするな

「テロ等準備罪」の対象犯罪「テロ等準備罪」法案は、過去3度廃案となった共謀罪とは対象や要件が全く違います。

共謀罪は主体が「団体」と抽象的でしたが、テロ等準備罪では「組織的犯罪集団」に限定されました。これは、テロ組織や暴力団、薬物密売組織など重大な犯罪を目的とする団体です。一般の民間団体や労働組合が、テロ等準備罪の対象になることはありません。

加えて、共謀罪は犯罪をする「合意」があれば処罰できるとしていました。しかし、テロ等準備罪は「合意」に当たる「計画」をしただけでは処罰できません。犯罪を実行するための下見や凶器を購入するための資金調達など、具体的な「準備行為」が必要です。

つまり、「組織的犯罪集団」がテロなどを具体的・現実的に「計画」し、「準備行為」をした段階ではじめてテロ等準備罪の嫌疑が生じ、逮捕など強制捜査の対象となります。また、対象犯罪も676から277に限定されました。

TOC条約を締結し、日本をテロ対策の“穴”にしないためにこの法案が必要です。

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