学習指導要領改定案 「深い学び」で人間力育む

公明新聞:2017年3月21日(火)付

奈良学園大学学長・梶田叡一奈良学園大学学長・梶田叡一

英語教育の低年齢化など 国際標準を意識
土台の国語力鍛え、思考力養う
梶田叡一・奈良学園大学学長に聞く

文部科学省は、2020年度から順次実施され、30年ごろまでの学校教育の基準を定める、小中学校の学習指導要領改定案を公表した。現行学習指導要領の改定に携わった奈良学園大学の梶田叡一学長に、改定案がめざす教育内容や理念、実施に向けた課題などについて聞いた。

「チーム学校」や専科教員充実で教師の支援体制が必要

学習指導要領改定案――今回の学習指導要領改定案の理念は。

梶田叡一・奈良学園大学学長 今後10年の教育のあり方を示す学習指導要領は、次代を担う子ども一人一人の未来を形づくる極めて重要な存在だ。ひいては、社会の将来も左右する。改定案は、いわゆる“ゆとり”から脱却して現代社会の求める教育の姿を示そうとした現行指導要領の理念を延長し、バランス良いものとなった。

特徴の一つは、国際標準を意識し、どの国も共通して学ぶ重要な内容を精査し盛り込んだ点だ。グローバル社会の中で「日本の子どもだけが知らない」では国際社会から取り残される。

特に、人工知能(AI)に象徴されるように科学技術が急速に進歩する中、各国は知恵を絞り、その基礎となる内容を教育に取り入れている。論理的思考力を育むプログラミング教育の小学校での必修化などは、その文脈の上にある。

――外国語教育を小学3、4年から始めるのも国際標準を意識したものか。

梶田 その通りだ。今やアジアの中学、高校生が英語で交流する時代に入った。既に英語は国際的なコミュニケーションの道具であるが、日本は立ち遅れている。英語教育の低年齢化は必然の流れといえよう。

一方で言葉は全ての教科の土台だ。日本の場合、それが国語であることを忘れてはならない。多様な言葉や表現、概念を身に付ければ、思考や認識もきめ細かくなる。そのベースの上に論理的思考力や創造的思考力を養おうという志向性が今回の改定案にある。

そのため、語彙力アップや本・新聞を活用した読解力の向上など国語を重要視している。英語教育の低年齢化に伴う国語力の低下を懸念する声もあるが、心配する必要はない。

――改定案は子どもの「深い学び」も掲げている。

梶田 改定案の柱の一つが「主体的・対話的で深い学び」の各教科への導入だ。教育を通し、人間力を育むものとして評価している。

「主体的」とは人ごとではなく自分の問題としての関わり、「対話的」は異質な物や価値観との触れ合いを意味する。こうした「深い学び」を通し、知性的、理性的で人間らしい人間に育つよう期待したい。

「深い学び」の実現へ、教師には次の3点を意識し授業してほしい。一つが、子どもたちの固定観念や既成概念を揺さぶる「問い掛け」だ。二つ目は学習の中で子どもたちが横道にそれそうになった時、自然とそれに気付かせる「言葉掛け」。三つ目が、重要な点や学びの生かし方を子どもに書かせる「振り返り」をしてもらいたい。

日本には教育実践に基づく豊富な蓄積がある。教員の養成には教育委員会による研修も大事だが、学校同士が授業研究して切磋琢磨し合い、特に若手の教師を育ててほしい。

――学びの量と質を追い求めた結果、教師の多忙さに拍車が掛からないか。

梶田 だからこそ教師のサポート体制が重要だ。改定案は目的や目標の実現へ教育内容を組み立てるカリキュラム・マネジメントも示しており、教師にも一層、主体性が求められる。

そこで、教師が授業に専念できるよう、スクールカウンセラーら学校外の人材を積極的に活用して、学校全体の組織力や教育力を高める「チーム学校」の取り組みを加速させてほしい。加えて、部活動に外部の指導者を迎えたり、小学校での英語教育の前倒しなどを踏まえた専科教員の充実も必要だ。

公明党の推進で、発達障がいのある児童・生徒のための「通級指導」や、外国人の子どもへの日本語教育などを担当する教職員定数の改善が来年度予算案に盛り込まれた。

極めて多様で個性豊かな存在である子どもたちが得手不得手や長所短所を超えて豊かな学びを実現するため、公明党には教育分野への人材や予算、制度面の手当てをさらにお願いしたい。

かじた・えいいち

1941年、島根県生まれ。京都大学文学部卒。文学博士。国立教育研究所主任研究官、日本女子大学助教授、大阪大学教授、京都大学教授、京都ノートルダム女子大学学長、兵庫教育大学学長、環太平洋大学学長を経て現職。著書に『人間教育のために』(金子書房)など多数。

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