主張RCEP交渉会合 自由貿易の価値、発信する好機

公明新聞:2017年3月1日(水)付

欧米を中心に保護主義の台頭が指摘される中、自由貿易を拡大する動きは重要だ。

日本や中国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の締結に向けた交渉会合が、神戸市で開かれている。3日まで、関税の撤廃・引き下げや知的財産・投資分野のルールづくりなど幅広く議論を交わす。

RCEPが実現すれば、域内の人口は約34億人と世界の約半分、国内総生産(GDP)や貿易額で世界の約3割を占める巨大経済圏が誕生する。日本としても、成長が続く東アジア諸国との連携による経済効果への期待は大きい。

しかし、各国は年内に大筋合意することで一致しているが先行きは予断を許さない。

環太平洋連携協定(TPP)に交渉参加した日本やオーストラリア、ニュージーランドは知的財産の保護などで公平なルールづくりを重視するが、中国はこれに慎重だ。インドは関税の撤廃品目を少なくしたいとされる。

2013年に始まったRCEPの交渉では、こうした隔たりが埋まらず、15年までとした合意期限を16年に先送りし、さらに昨年9月の首脳会合で期限を白紙に戻した経緯がある。今年中の合意が容易でないことは明らかだ。

ただ、今回の交渉に当たり、世界経済の変化に参加国が危機感を抱いていることを見逃してはならない。米国のTPP離脱表明や英国のEU(欧州連合)離脱などに見られる保護主義の台頭である。

自由貿易に対する逆風への懸念をRCEP参加国が共有し、多国間連携による自由貿易の推進こそ相互に利益をもたらすとの認識で一致できれば、交渉に弾みがつく。

この点、世界第3位の経済大国である日本が、困難を極めたTPP交渉に関わった経験を生かしてリーダーシップを発揮すべきである。

15の交渉分野のうち「経済技術協力」と「中小企業活用」では、既に実質合意している。「知的財産」や「物品関税」など調整が難航しそうな分野は少なくないが、合意に向けた議論が進展することを期待したい。それは、自由貿易の価値を世界に発信することにもつながるであろう。

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