中小の取引環境を改善

公明新聞:2017年2月3日(金)付

下請代金「現金払い」が原則
手形の慣行にメス
親会社に通達

中小企業など下請け企業の資金繰りを圧迫し、“いじめの温床”にもなっていた取引慣行について、政府は昨年12月、通達を見直したり、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の運用基準を抜本改定するなど、相次いでメスを入れた。下請け支援は公明党が一貫して取り組んできたもので、事業者から喜びの声が寄せられている。

「減額」「買いたたき」いじめ防止へ対策強化

昨年12月、下請け代金の支払いに関する政府の通達が1966年以来、50年ぶりに見直された。その柱は、これまで一般的だった手形払いをやめ、「現金払い」を原則とするものだ。親会社に率先した取り組みを求める内容で、全国の約21万の親会社と約870の業界団体に発出された。

手形払いは、資金繰りが苦しい下請け企業にとって大きな悩みの一つだ。現金化するには数カ月先の支払期日まで待たねばならないからだ。期日前の現金化も可能だが、銀行から手数料を取られ、額面通りの金額は受け取れなくなる。

昨年1月に行った中小企業庁の委託調査では、下請け代金の受け取り方法が「すべて現金」と答えた下請け企業は全体の6割にとどまった。業種間で差があり、産業機械・航空機や自動車などは4割に満たなかった。

政府の通達では、やむを得ず手形で支払う場合でも、銀行への手数料相当分を下請け代金にあらかじめ上乗せしたり、支払期日を60日以内に短縮するよう強く求めた。政府は今後、数年かけて改善状況を調査するとしている。

一方、昨年8月、大手コンビニが弁当などの製造を委託する20社への支払い代金を減額していたことが発覚、その額は計約6億5000万円に上った。2014年7月からの2年間で、開店セールの際に売れ残った商品代金の一部や店舗向け商品カタログの制作費用、セール期間の値引き分まで委託業者に負担させていたのだ。

これに対し、公正取引委員会は下請法に違反するとして、大手コンビニに減額分の支払いと再発防止を勧告した。

こうした「下請けいじめ」を防ぐため、昨年12月には、下請法の運用基準も13年ぶりに抜本改定された。

また、公正取引委員会が「減額」や「買いたたき」などに該当する違反行為を66から141に大幅に増やした。より多くの具体例を明示することで、一層にらみを利かせるのが狙いだ。

このほか、下請中小企業振興法に基づく振興基準(下請け取引の一般的な基準)も昨年末に改正。親会社に対し、(1)材料費や労務費などの原価を低減するよう一方的に要請しない(2)下請け代金に労務費の上昇分を反映させる(3)下請け企業に金型や木型などを保管させる際の費用を負担する――などを徹底した。

こうした政府の動きに応え、早速、業界団体も改善策を盛り込んだ自主行動計画の策定に着手している。中小企業庁取引課によると、自動車、電機・情報通信機器、繊維など7業種12団体が今年3月末までに策定の見通しだという。

事業者から喜びの声

昨年末に相次いだ通達や関係法令の基準見直しは、経済産業省が昨年9月に発表した「未来志向型の取引慣行に向けて」に基づいている。これは、公正な取引環境をめざす一連の政策をまとめたもので、公明党が昨年4月に行った提言が反映されている。

「今回、中小企業への支援策がまた一歩、前に進んだと実感しています。公明党に相談した直後から、取引環境が着実に改善され、驚いています」

こう語るのは、首都圏で自動車部品を製造する下請け会社社長の川崎進さん(仮名)だ。川崎さんは13年、公明党の西田実仁参院議員に会い、過去7年間で約6000万円分の下請け代金が支払われていないことなど、自らの窮状を訴えている。

公明党は各地で寄せられる、こうした深刻な声を一つ一つ受け止め、中小企業の支援に一貫して取り組んできた。

近年では、公明党の提案で設置された「政労使会議」による14年12月の合意が、下請け支援を加速させるきっかけになった。ここでは、中小企業が材料費の上昇分を適正に価格転嫁できるよう、経済界が取り組むことが確認された。

ある中小企業の経営者は「親会社が目に見えて自分たちに配慮するようになった」と語る。

加えて今回の取引環境の改善は、中小企業の賃上げや設備投資の大きな後押しとなる。今国会でも公明党の山口那津男代表(参院本会議)や石田祝稔政務調査会長(衆院予算委員会)が政府に対策強化を求めている。

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