活用推進法が成立 自転車を利用しやすい環境に

公明新聞:2017年1月13日(金)付

区を超えての利用が可能となり、シェアサイクルの利用者は増えている=東京・千代田区区を超えての利用が可能となり、シェアサイクルの利用者は増えている=東京・千代田区

先の臨時国会で、自転車を利用しやすい環境整備を進める自転車活用推進法(議員立法)が成立した。環境に優しい自転車の利用を促し、過度な自動車依存を減らすことで、健康増進と交通混雑の緩和をめざしている。そこで、自転車を活用した街づくりで、先行する自治体の取り組みを追った。

シェアサイクルが好評

東京都 広域連携で利便性向上

「手軽に借りられ、区を超えて使えるのが本当に便利です」。都内在住の男性(35)が利用するのは、東京都などが実施する「自転車シェアリング」。事前登録をすれば、貸し出し拠点(ポート)に置かれた自転車を自由に使うことができ、別のポートに“乗り捨て”もできる手軽さが魅力だ。

2016年2月、都と千代田、中央、港、江東の各区は、相互利用が可能な広域実験を開始した。都議会公明党が推進してきたもので、同年10月からは新宿区も加わり、今月23日からは文京区も新たに参加する。都環境都市づくり課によると、「広域的な利用は全国で初めて」という。

運用中の5区では現在、206カ所のポートに電動アシスト自転車2270台を配備(16年12月1日時点)する。利用料金は30分150円で、月額会員なら月2000円(1回30分まで)で借りられる。

利用状況は上々で、各区が独自の事業を行っていた実験開始前に比べて、利用回数は3倍を超えた。16年11月の1日平均利用回数は5374回に上る。同課の川久保ルミ子課長は「ニーズは高い。利用頻度の多い地域などを分析して、自転車台数の適正な配置に努める」と話す。

こうした自転車の共同利用事業は、シェアサイクルなどと呼ばれ、公共交通の補完や観光戦略として、10年ごろから各地で徐々に広がり始めた。国土交通省によると、15年11月1日時点で全国77都市に導入されている。シェアサイクル施設の整備は、活用推進法で重点施策に掲げており、今後の拡大が期待される。

推進法のポイント
国、自治体が計画策定
専用道や通行帯の整備
交通安全の教育・啓発


活用推進法は、自転車施策を総合的に進めるものだ。今後は国や自治体が推進計画を策定し、(1)専用道路や通行帯の整備(2)シェアサイクル施設の整備(3)安全性の高い自転車の供給(4)交通安全の教育・啓発(5)災害時の有効活用(6)自転車を活用した観光客誘致や地域活性化支援――などの対策が重点的に講じられる。

毎年、多くの観衆が詰め掛けるサイクルロードレース=2016年10月 栃木・宇都宮市既に独自の計画を策定している自治体もある。例えば、栃木県宇都宮市では、10年末にまとめた「自転車のまち推進計画」に基づき、多様な自転車施策を展開している。具体的には、自転車道などの整備のほか、修理工具などを無料で貸し出す自転車の駅(市内48カ所)を設置している。

毎年10月には、アジア最高峰の自転車競技大会「ジャパンカップサイクルロードレース」が開かれている。市議会公明党も“自転車の街づくり”を推進してきた。

推進計画は、さいたま、金沢、京都、堺の各市などでも作られており、法整備は、こうした先行する自治体の大きな後押しともなる。

公明の提言、随所に反映

国内の自転車保有台数は約7200万台に上り、自動車の台数に匹敵する。自転車は身近な移動手段であり、環境保全や健康づくり、混雑緩和といった効果を生むだけでなく、災害時には有効な移動手段となる。

そこで公明党は、プロジェクトチーム(高木美智代座長=衆院議員)を設置し、自転車が安全・快適に走りやすい環境のあり方などについて活発に議論を重ねてきた。11年には、自転車専用信号や専用通行帯の整備に加え、交通安全教育の徹底や自転車保険の拡充などを盛り込んだ党独自の提言を発表。活用推進法には、同提言の内容が随所に反映されている。

同法について、NPO法人「自転車活用推進研究会」の小林成基理事長は、「車中心の社会を見直し、自転車を主要な交通手段として位置付ける内容だ。今後の具体化に期待したい」と語っている。

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