主張無電柱化 防災・安全の視点で加速せよ

公明新聞:2016年12月14日(水)付

過去の災害の教訓を踏まえ、地震や台風に弱いとされる電柱の削減を進めたい。

電線の地下埋設などの計画作成を国に義務付ける無電柱化推進法が今国会で成立した。計画には電柱の新設抑制や撤去に向けた目標を盛り込むことと、政府に対し財政・税制上の措置を求めていることが法律の柱だ。

わが国には3500万本を超す電柱があり、毎年約7万本のペースで増え続けている。ロンドンやパリ、香港では100%の無電柱化を実現している半面、日本の無電柱化率は最も整備が進む東京都でも5%弱と遅れが目立つ。法整備を契機に予算確保や政策推進で対策を加速させたい。

電柱や電線は大規模災害時、避難や救助、復旧に支障を来す。東日本大震災では5万6000本以上が倒壊し、被災者や緊急車両の通行を妨げた。台風や竜巻が列島を襲うたびに被害が発生し、大規模な停電も頻発している。

一方で、8000本以上の電柱が倒壊した阪神・淡路大震災では、激しい揺れに見舞われた神戸地区における地中の電話回線の被害が、電柱などに架かるケーブル線の約80分の1だったとの報告がある。無電柱化が防災上、大きな意義を持つことは明白だ。

歩道の拡幅による交通事故の防止やバリアフリー化の推進、景観の改善の面でもメリットが大きい。

にもかかわらず、電線の地中化が進まない最大の要因は高いコストだ。工事費用は国や自治体、電力・通信会社などが負担するが、1キロメートル当たり約5億円と、電柱に比べて10~20倍掛かるとされる。そこで国は低コスト化に力を入れ、4月には国土交通省が電線を地中に埋める深さの基準を交通量に応じて浅くした。

自治体も知恵を絞っている。例えば石川県金沢市は、電線を建物の軒下に設置する方式など効率的な手法を採用し、成果を上げている。こうしたモデルケースを全国に広げてはどうか。

民間も機材の小型化など安価な技術の開発を進めている。官民が連携し、さらなるコスト低下を進めてほしい。

緊急輸送道路や災害拠点病院に面する道路など優先度を設けつつ、全国規模で電柱のない社会をめざしたい。

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