不登校の「理由」どこに

公明新聞:2016年12月5日(月)付

内田良准教授内田良准教授

「先生が原因」との認識
学校と本人で食い違い
名古屋大学大学院 内田良 准教授に聞く

10月末に文部科学省が発表した昨年度の「問題行動調査」で中学校での不登校生徒が約9万8000人に上るなど、不登校は今なお教育現場の大きな課題だ。当事者を適切にサポートするためには、まず不登校の「理由」を正確に把握することが大切になる。内田良・名古屋大学大学院准教授がこのほど発表した分析結果では、不登校理由を巡る認識が学校側と不登校生徒本人で大きく懸け離れていることが浮き彫りになった。内田准教授に分析の内容や必要な施策などを聞いた。

――分析の内容は。

内田 今回の分析を行うきっかけとなったのは、不登校の専門紙を発行するNPO法人・全国不登校新聞社からの「問題行動調査に不登校本人の意向が反映されていないのではないか」との問題提起だ。

不登校理由の比較分析では、学校側が回答した2006年度同調査(08年発表)の中学生部分と、06年度当時に中学3年だった不登校生徒が回答した文科省の追跡調査(14年発表)を比較した。このうち不登校の理由として「教職員との関係」を挙げたのは、学校側が回答した調査では、生徒の1.6%。これに対し、生徒本人が回答した調査ではその約16倍に上る26.2%だった。

不登校生徒が「親」や「友人」を挙げる割合は学校の約1.5~2倍だったことと比べても、認識の食い違いは顕著だ。これだけ差があると、不登校対策に関する学校側での議論が、そもそも実態と懸け離れている可能性があり、非常に深刻な問題だと感じている。

教育上よいと思う言動も注意が必要

――なぜ認識のずれが起きるのか。

内田 本来、教師は子どもを不登校にさせようと思っているわけではない。しかし、教師が教育上、よいと思う言動によって、結果的に不登校が引き起こされる場合もある。教師の側には悪意がないので、子どもが苦しんでいても自らの対応の「負の側面」に気付いていない恐れがある。

子どもへの対応 個人ではなくチームで

――問題解決には何が必要か。

内田 子どもと教師との相性の問題もあるだろうから、子どもの気持ちをすくい上げられるような教職員の連携が必要だ。もし一人の教師の認識が当の子どもの気持ちとずれていても、別のかたちでその気持ちをすくい上げることができていれば、今回のような分析結果は出なかったかもしれない。

また、不登校への専門的な対応は、これまで教師が個人的に培った力量に委ねられてきた。しかし、子どもを巡る問題は不登校に限らず多様化しており、教師に全てを期待するのは無理がある。スクールカウンセラーなども含む多彩な専門家が「チーム学校」として先生や子どもを支える体制が必要だ。

――不登校の子どもを支援する上で重要な点は。

内田 「学校に来させること」を前提にしてはならない。これが鉄則だ。子どもは学校に行けないことに対して既に重圧を感じている。そこに“登校圧力”をかければ、かえって問題解決が長引いてしまう。

基本的に子どもは学校に行くということを軸にすべきだと思うが、どうしても集団生活になじめない子もいる。だからこそ、不登校になった場合の行き先を用意しておくことが大事だ。フリースクールなど、学校外の居場所が全国どこでも確保されるようなセーフティーネット(安全網)づくりが強く望まれる。

うちだ・りょう

2003年に名古屋大学大学院で博士号取得(教育学)。専門は教育社会学。柔道事故、組み体操事故などの「学校リスク」に詳しい。著書に『教育という病』(光文社新書)など。

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