がん患者に癒やしの場

公明新聞:2016年12月1日(木)付

患者らはリラックスした雰囲気の中で相談支援を受けられる=東京・江東区患者らはリラックスした雰囲気の中で相談支援を受けられる=東京・江東区

東京に英国発祥の民間相談施設

がん患者とその家族らが前向きに生きるきっかけをつかめるような癒やしの場が誕生した。10月、東京都江東区豊洲に開設した民間相談支援施設「マギーズ東京」(秋山正子センター長)だ。全額寄付で運営される英国発祥のマギーズセンターから認定を受けた国内第1号で、予約なしに無料で利用でき、注目されている。

「一歩前に進む」を支援

医療スタッフ常駐、費用は無料

■開放的な空間

マギーズセンターは、乳がんで亡くなった女性造園家の願いから、1996年に英国で開設された。マギーズ東京は、木や自然の素材が使われた建物が特徴で、大きな窓からは明るい自然光が入り、緑豊かな庭や水辺を眺められる開放的な空間が広がる。

室内にはキッチンやリビングが備えられ、くつろいだ雰囲気の中で、がん患者の相談支援や患者同士での情報交換ができる。秋山センター長は「自宅でも病院でもない“第二のわが家”で、落ち着いた時間を過ごしてほしい」と強調する。

施設は、NPO法人「マギーズ東京」が運営する。長年、訪問看護に従事してきた秋山センター長と、20代で乳がんを経験した鈴木美穂さんが共同代表を務める。平日10時から16時まで開いており、看護師や心理士らが対応する。がん専門看護師らもボランティアを務めており、治療や生活、仕事など幅広く相談に応じている。

スタッフの一人、心理療法士の栗原幸江さんは都立駒込病院でも、がん患者を支援している。「ここに来る患者はリラックスした環境の中で納得のいくまで相談できているように感じる」と栗原さんは語る。

10月10日の開設以来、訪問者は443人、電話での相談や問い合わせは252件を数え、必要とする人の多さがうかがえる(11月15日時点)。中には、関西方面や海外から夫婦で訪れた人もおり、「ここに来て気持ちが軽くなった」と話していたという。

マギーズ東京は、現時点では2020年までの期間限定プロジェクト。施設の建設費や運営費は、インターネットで資金を募るクラウドファンディングなどの寄付で賄われている。これまでに約3000人が協力し、7000万円を超える寄付金が集まった。事業を継続できるよう、今後も寄付を募っていく方針。

秋山センター長は「来訪者が自分自身の力を取り戻し、一歩前に進むためのサポートを続けていきたい」と話している。

11月、現地を訪れた公明党の細田勇・江東区議(都議選予定候補=同区)は、「がん患者らに寄り添う素晴らしい取り組みを、全力でバックアップしていきたい」と語っていた。

各地の拠点病院に窓口


秋山センター長から施設の説明を受ける細田区議=同がん患者の相談支援については、国も積極的に取り組んでいる。公明党が主導し、2007年4月に施行された、がん対策基本法に基づいて、国は基本計画を策定。これを受け、がん治療の中核を担う病院で「がん相談支援センター」の整備が進んだ。無料で相談に応じる支援センターは現在、国が指定するがん診療連携拠点病院(全国約400カ所)などに設置されている。

また、東京都では09年度から全国に先駆けて、モデル事業として、一部の支援センターで開設時間を拡大した。都議会公明党(東村邦浩幹事長)が推進したもので、現在、都内の医療機関3カ所で、休日・夜間も対応している。

がん患者の身近な相談場所として各地に広がる支援センターだが、認知度が低いのが現状。国立がん研究センターの調査によると、がん患者のうち「利用したことがある」「利用したことはないが知っている」を合わせても約5割にとどまった。

また、支援センターによって状況は異なるが、利用には予約が必要だったり、相談時間が30分以内といった制限のある場所もある。マギーズ東京の秋山センター長は、「病院内の相談支援体制も充実してきている。がん患者が暮らしやすい社会をめざし、共に協力していきたい」と語っていた。

【マギーズ東京】

ホームページ(http://maggiestokyo.org/)、問い合わせ先(03-3520-9913、平日10時~16時=通話料有料)。

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