無年金対策が前進

公明新聞:2016年11月17日(木)付

改正年金機能強化法(無年金者救済法)成立
山口修・帝京大学教授に聞く

無年金対策として、公的年金受給に必要な保険料納付期間(受給資格期間)を25年から10年に短縮する改正年金機能強化法(無年金者救済法)が成立した。日本年金学会代表幹事を務める山口修・帝京大学教授に、同法成立の意義などについて見解を聞いた。

受給資格期間の短縮は個人に「尊厳」取り戻す

――受給資格期間の短縮の意義は。

年金受給に必要な保険料納付期間の国際比較山口修教授 受給資格期間が「25年」というのは、あまりにも長い。米国は10年、ドイツは5年、そしてフランスは1カ月でも保険料を払えば、それに見合うだけの年金が受給できる仕組みになっている。年金制度自体の違いがあるとはいえ、欧米諸国と比較しても日本は著しく長い。

そのため、頑張って保険料を納付し続けても25年間に達しない人は、結局、“掛け捨て”となり、無年金に陥る事態を招いていた。

無年金を余儀なくされている高齢者の中には、生活が一時期、苦しくて保険料を払いたくても払えず、免除手続きなどがあることすら知らなかった人がたくさんいる。今回の法改正により、こうした非常に困窮した人たちに、救いの手を差し伸べる意義は大きい。

受給資格期間短縮で受け取れる国民年金の額――国民年金の保険料を10年間納付した場合、受給額は年額19万5000円ほどだ。「少ない」との意見もあるが。

山口 金額は少ないかもしれない。だが、現行のゼロから見れば前進であり、過小に評価すべきではない。

無年金ゆえに家族の扶養や生活保護の支援に全て頼らざるを得ない人もいる。そのような人たちが、自分が過去に納めた年金を権利として受給できるようになれば、よりプライド(誇り)・尊厳を持って生活を送る一助となる。

また、受給資格の要件が下がったことで、「保険料をしっかり納付して、年金を多くもらいたい」と考える人が増えるきっかけにもなるだろう。

――今後の課題は。

山口 受給資格期間が短縮されたとはいえ、その「10年」は最低限の期間であって、目標ではない。

多くの国民が20歳~60歳までの40年間、保険料を納め続けていけるような環境づくりが欠かせない。

景気回復によって安定した雇用情勢を確保するのはもちろん、低収入の人には保険料の免除・猶予の申請ができることを知ってもらう周知・啓発活動のほか、児童・生徒への年金教育の充実が求められる。

保険料の追納についても、より柔軟にできないか、検討を望みたい。

年金改定ルールの見直しについて

子や孫の給付確保に不可欠

――一方で、年金額改定のルールを見直す国民年金法改正案も審議中だが。

山口 2004年に公明党の坂口力厚生労働相が尽力された年金改革によって、年金財政は持続可能な制度になった。

その枠組みは、積立金を活用しながら、現役世代の保険料の上限を定める一方、年金支給額の伸びを物価や賃金の上昇よりも低く抑える「マクロ経済スライド」を適用することで均衡を図り、現役世代の可処分所得(手取り収入)の50%を上回る給付水準を将来にわたって確保するもので、高く評価できる制度だ。

だが、デフレ(物価下落が続く状態)が長く続いた日本経済では、マクロ経済スライドがほとんど発動されず、それに見合った年金額に下がっていない。その結果、将来世代の給付を“先食い”する形で、現在の年金水準は相対的に高くなっている。

少子高齢化の進行も考えると、年金制度の維持には、マクロ経済スライドや賃金に合わせて年金額を改定できるようにする賃金・物価スライドのルールの見直しは不可欠だ。

――一部野党は“年金カット法案”と批判するが。

山口 全く当たらない。子や孫の世代の年金水準を確保するためには、年金を受給している高齢者にも、負担を分かち合うよう理解を求めていく必要がある。改正案を批判する野党は、果たして、制度を持続的に維持するための対案があるのか。年金を“政争の具”にし、不安を煽るような批判は極めて無責任だ。

――公明党への要望は。

山口 あくまでも04年の年金改革を基軸に、制度の持続可能性を図ることが重要だ。年金改革をリードした公明党には、国会論戦などを通じて、国民に分かりやすく説明責任を果たしていくことを期待したい。

【国民年金法改正案】

マクロ経済スライドの適用ルールや賃金・物価スライドを見直すことが柱。例えば、「物価の下落以上に賃金が下がる」「物価は上がっても賃金が下がる」という場合、賃金に合わせて年金額を改定できるようにする。なお、賃金・物価スライドの新ルールの適用は、低所得者への配慮措置として19年10月から最大で年6万円の福祉的給付をスタートした後の21年度から実施する。

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