主張外国人差別の調査 偏見による不当な扱い解消を
公明新聞:2016年11月15日(火)付
「国籍を理由にアパートへの入居を断られた」「安い賃金で働かされている」「学校でいじめられた」―。日本で暮らす外国人が、こうした差別的な扱いを受けない社会をめざしたい。
わが国に居住する外国人が230万人を超えて過去最多となる中、外国人への差別的言動が社会問題化している。このため、法務省は14日、初めての全国規模の実態調査を開始した。
対象は、東京や大阪など全国37市区の外国人居住者のうち計1万8500人。アンケートを通じ、家探しや職場・学校などで差別を受けた経験に加え、公的な人権相談窓口の利用の有無、差別の解消に向けた政策要望などについて聞き、来年3月末までに集計結果を公表する方針だ。
海を渡って日本で暮らす人たちが息苦しさを感じているとすれば、その原因は何か、日本人が無意識のうちに外国人を不安な気持ちや不快な思いにさせていることは何か。調査を通してその実態を詳細に把握する意義は大きい。
今年6月に施行されたヘイトスピーチ(憎悪表現)解消法は、公明党の要請で政府が実施した「ヘイトスピーチに関する実態調査」が大きな後押しとなった。関連デモや差別的言動の発生状況が客観的な形で明らかとなり、早急な対策の必要性が広く共有されたからだ。
法施行後には川崎市で在日韓国人らの排除を訴えるヘイトデモが中止になるなど、既に効果が表れている。
今回の調査は対象をヘイトスピーチに限らず、外国人への差別全般に広げている。国は調査結果を丁寧に分析した上で、教育の充実など意識啓発や制度面の改善、相談体制の強化を通し、速やかに外国人の人権状況の改善に役立てるべきだ。
さらに、自治体ごとの調査集計結果に関するデータは、各自治体への提供が予定されている。実態調査を契機に、地域の実情に応じたきめ細かい対策も着実に進めていく必要があろう。
まずは2020年の東京五輪・パラリンピックをめざし、人種や国籍を問わず誰もが心から安心して暮らせる温かな共生社会を実現する一歩としたい。
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