無業の若い女性 自立を後押し
公明新聞:2016年10月20日(木)付
引きこもりなどで仕事に就けずに苦しむ若年無業者(ニート)の中には、女性も数多い。そうした女性の自立・就労支援に取り組んでいる横浜市の男女共同参画センター横浜南(通称・フォーラム南太田)の取り組みを追った。
「コーヒーをどうぞ!」
フォーラム南太田の施設内に設けられた喫茶コーナー「めぐカフェ」。昼食に訪れた利用客へ、女性スタッフが笑顔でランチや飲み物などを販売している。スタッフとして就労体験している川村京子さん(21歳=仮名)は「一つ一つの業務を覚えるのは大変ですが、やりがいがあります」と話す。
めぐカフェは、働くことに不安を感じる若い無業女性の就労体験の場として2010年に開設された。体験では、あいさつの仕方や仕事の心構えを身に付けるほか、実際にカウンターで調理補助や接客などの業務にも携わる。
川村さんは不登校の経験者だ。学生時代の友人が次々と就職する中で強い焦りを感じ、就労体験に参加した。カフェで注文の確認やスープの盛り付けなどに奮闘する川村さん。「体験することで視野が広がった。今後、人の役に立つ仕事を探していきたい」と希望を膨らませる。フォーラム南太田では、就労体験のほか、その前段階として、就労に向けて心身を整える「ガールズ編しごと準備講座」を開催。緊張や不安を和らげるヨガを取り入れたり、同じような悩みを持つ女性同士で目標を語り合う機会を設けている。「社会参加体験」として地域のボランティア活動にも取り組む。
こうした支援は成果を上げている。めぐカフェでの就労体験を修了した99人のうち、約半数の45人が仕事に就いたという。同フォーラムの小園弥生管理事業課長は「無業女性には自分を責め続けている人が少なくない。就労体験などで自信を培ってもらうのが大切」と話す。
見えにくい実態
若年無業女性の実態は見えにくいといわれる。
総務省の労働力調査によれば、若年無業者(15~34歳)のうち女性は約4割を占める。しかし、女性の場合は「家事手伝い」とみなされるケースもあり、潜在的には、もっと多いのではないかと指摘されている。
また、行政の支援の手も届きにくい。
国は若年無業者への自立・就労支援として、各地の地域若者サポートステーションで就業に関わる相談や講座を行っているが、現状では利用の6~7割が男性になっており、そこに交じって支援を受けることに抵抗を感じる女性もいる。フォーラム南太田のように女性に特化した支援メニューを用意する事例は少数にとどまっており、支援の強化が求められる。
貧困に陥る恐れ大きく相談体制の強化を急げ
独立行政法人 労働政策研究・研修機構小杉礼子 特任フェロー
若年無業者への就労支援の場に出てくる男性は多くなりましたが、女性の問題は埋没しがちでした。女性には家事や家族介護の役割が期待され、家庭の外で問題が顕在化しにくかったためです。
しかし、核家族化が進展し、未婚率も高まる中、多くの若年無業女性が結婚せずに年齢を重ねれば、貧困に陥ってしまいます。積極的に支援に乗り出すことが急がれます。
就労には職業訓練が重要になりますが、若年無業女性の中には性被害に遭った人がいる場合もあり、さまざま配慮した支援体制が不可欠です。
また、引きこもりの女性向けのアウトリーチ(訪問型)の相談支援や、無業状態に陥る前に学校段階で状況を把握して支援する体制づくりも急務といえます。
公明が推進 政府も把握へ方針
政府の「第4次男女共同参画基本計画」(16年度から20年度まで)には、若者が充実した職業人生を歩んでいけるよう、若年女性無業者を含めた実態把握を行う方針が盛り込まれている。
若年女性の困窮を問題視する公明党の女性委員会と男女共同参画社会推進本部の要望が反映された形である。
今後、政府は計画に沿って、実態把握の具体的な方法などを検討する予定だ。
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