介護休業 使い勝手よく
公明新聞:2016年8月10日(水)付
公明党の主張により、介護をしながら働く人を支援する介護休業制度が今月から順次、改善されている。介護休業の利用者が現状でわずか3.2%(2012年)にとどまるため、介護の実情に合わせて利用しやすくした。政府が掲げる「介護離職ゼロ」に向けた施策の一つだ。
利用者わずか3・2%
埼玉県に住む和氣美枝さん(45)は、7年前、母親の介護などを理由に正社員として勤めていた不動産会社を辞めた。
当時、介護休業制度はおろか、介護に関する知識を全く持ち合わせず、情報をどう収集すればいいか分からなかった。そもそも自分が介護を担っている自覚もなく、突然、わが身にのし掛かった“異変”に翻弄された。
こうした中で、次第に生活の全てが中途半端になり、精神も不安定に。「いったん会社を辞めて、全てをリセットしよう」と、介護離職に至ったという。
総務省の「就業構造基本調査」(12年)によると、介護をしながら勤めている人が約240万人いる一方、年間約10万人が家族の介護や看護を理由に仕事を辞めている。
介護離職は施設など介護の受け皿不足が主な理由だが、仕事と介護の両立を支援する介護休業制度の使い勝手の悪さも指摘されてきた。そこで今回、介護休業制度を改善し、利用を促すことになった【図参照】。
まず今月から、休業中に雇用保険から支払われる介護休業給付金が、賃金の40%から67%に引き上げられた。
来年1月からは、対象家族の範囲が拡大され、祖父母、兄弟姉妹、孫については同居・扶養していなくても介護対象に認められることになる。
その上で、介護休業が従来の原則1回限りから、最大3回まで分割して取れるようになる。労働政策研究・研修機構の14年調査では、介護のために連続して仕事を休んだ日数は「2週間以内」が最多の75%を占めている。厚生労働省職業家庭両立課は、こうした介護の実情を踏まえ、介護の始まりと終わり、その間の期間にそれぞれ対応できるようにしたと説明する。
また、1日単位だった介護休暇を半日単位で取得できるようになるほか、介護休業に含まれていた出退勤時間を柔軟に選べるフレックスタイムや短時間勤務などが介護休業とは別に3年間利用可能になる。介護が終了するまで残業が免除される制度も新設される。
冒頭の和氣さんは今も母親の介護を続けている。今年1月には、自らの経験を生かし、介護をしながら働くことが当たり前の社会をつくろうと、一般社団法人介護離職防止対策促進機構を立ち上げ、代表理事に就いた。
“働きながら介護は できる”との意識を
和氣さんの話 介護が始まって1年以内に退職した人が介護離職者全体の半数以上に上るという調査結果がある。つまり、介護の初動でくじける介護者が多い。この期間、介護休業を上手に使って乗り越えられれば、会社を辞めなくて済む人も増えるかもしれない。
介護離職は個人にとっては自らの人生を大きく変えてしまうことになるし、企業にとっては自社の経営を揺るがすことになりかねない。“働きながら介護はできる”という意識を個人も企業も持つことが何より重要だ。
(介護休業制度)
会社などで働く人が、けがや病気などによって2週間以上、常に介護を必要とする状態になった家族を介護するため、雇用を継続したまま、休みを取れる制度。勤務先に申請し、対象家族1人につき最長93日取得できる。また、介護休業とは別に、介護や通院の付き添いなどで仕事を休める介護休暇もある。これは対象家族1人につき年5日、2人以上は10日。
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