脳脊髄液減少症 治療への理解深めよう

公明新聞:2016年6月24日(金)付

医師を対象にした研修会で講演する池田氏医師を対象にした研修会で講演する池田氏(中央奥)

医師を対象にした全国初の研修会
安全な実施方法を講義
愛知県

脳脊髄液減少症の治療に有効なブラッドパッチ療法(自らの血液で漏出した部分をふさぐ治療法)が4月から保険適用になったことを踏まえ、愛知県はこのほど、医療機関での治療導入へ理解を深めてもらおうと、名古屋市にある中京病院で同症に関する研修会を開催した。この研修会は愛知県内の医師を対象にしたもので、全国初の取り組みとして注目を集めている。これには認定特定非営利活動法人「脳脊髄液減少症患者・家族支援協会」の中井宏代表理事が参加した。

ブラッドパッチ療法の実技も

研修会は2部形式で行われ、第1部の講義ではブラッドパッチ療法の診療報酬について担当者が説明。続いて中京病院・脳神経外科の池田公副院長が「脳脊髄液減少症の治療導入・実施方法」をテーマに講演した。

池田氏は、県内で同症を検査できる病院は45カ所あるが、そのうち治療を実施できる病院は7カ所にとどまっている現状を報告。理由として、医師らが(1)同症患者との向き合い方(2)ブラッドパッチ療法の危険性(3)診断・治療がうまくいかなかった場合――などを意識し、治療をためらっていると指摘した上で、それぞれの項目の対処法などを講義した。

例えば(2)について池田氏は、3000人以上の患者に同療法を実施し、術後、立つと5分以内に現れ横になると30分以内に改善または消える頭痛(起立性頭痛)などの悪化や感染症が認められなかったことを挙げながら、「ブラッドパッチは決して危険な手技(手術的操作)ではない」と強調。また、安全に実施するためのポイントとして、針の持ち方、注入時の注意点などについて説明した。

ブラッドパッチ療法の実技を見学する医師らその後の質疑応答では、交通事故などで外傷を受けた患者に対し、「どういう症状が出たらブラッドパッチに踏み切って良いのか」など、治療導入を想定した質問が数多く上がった。

第2部の実技では、池田氏が2人の患者へのブラッドパッチ療法を実施し、参加者は真剣にその様子を見ていた。

公明県議団が早期実現を推進

終了後、中井代表理事はこの研修会の実現に尽力した公明党に謝意を述べた上で、「多くの医師が参加し、同症の治療導入への関心の高さを感じた。保険適用の影響は大きい。今後もこうした研修を全国に広める取り組みを推進していきたい」と語っていた。

研修会の実施については公明党県議団(渡会克明団長)が昨年12月、大村秀章知事に対して提出した、脳脊髄液減少症への要望書に盛り込み、早期実現を要請していた。

脳脊髄液減少症

交通事故などで体に受けた強い衝撃によって髄液が漏れ、頭痛や目まいなどの症状が現れる病気。外見では症状が分かりにくく、医療現場でも理解が進まず患者や家族は長年苦しんできた。

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