駅ホームドア普及へ新タイプが登場
公明新聞:2016年4月7日(木)付
駅のホームから線路への転落を防ぐ「ホームドア」。国は東京五輪・パラリンピックが開催される2020年度までに約800駅で整備をめざす。設置費用などの課題に対応するため、最近では改良された新しいタイプのホームドアが登場している。整備の現状と課題を追った。
昇降式のバーなど導入 費用軽減し工事も簡素化
国土交通省によると、ホームドアは昨年9月末時点で、全国約9500駅のうち621駅で整備が完了した。国が優先的に設置するよう求めている「1日当たり利用者数10万人以上の駅」では、251駅のうち60駅で完了。ホームドアの普及は着実に進んでいる。
しかし、設置する際に大きな課題となるのが、1駅当たり数億~十数億円掛かるといわれている費用だ。こうした費用負担を軽減するため、新しいタイプのホームドアが開発されている。
JR東日本は昨年3月から、八高線拝島駅に昇降バー式のホームドアを試験導入している。ドア部分を上下に昇降するバーに替えたことで、左右に開く従来のホームドアと比べて、乗り降りする際の開口部分を広く確保。電車によって異なる扉位置や、電車のオーバーランなどに対応できる。
また、ホームドア自体を軽量化したことで、設置する際に必要なホームの補強工事も簡素化。「維持・管理も比較的容易で、低コスト化を実現できた」(JR東日本の担当者)という。JR西日本では、バーをロープに替えて、さらに軽量化したタイプを設置している駅もある。
一方、東京メトロでは昨年、JRなどと相互乗り入れをしている東西線妙典駅で、3月から9月までの間、大開口型のスライド式ホームドア設置の実証実験を行った。開口幅は既存のものより、80センチほど広い約3.3メートル。本格導入に向けて、先月からは同線九段下駅2番線(中野方面)で再度検証を始めている。
こうした中、国はホームドアの整備を促すとともに、新しいタイプの技術開発を推し進めている。設置する鉄道事業者に整備費の3分の1を補助。併せて、ドア数が異なる車両に対応できるバー式などの新たなタイプについても、メーカーに技術開発費の2分の1を補助している。
接触・転落事故対策に 高い効果
東京メトロ半蔵門線九段下駅で今月、電車がドアにベビーカーを挟んだまま発車する事故が起きた。この事故を受けて、同社は「全線へのホームドア導入を引き続き推進していく」など、再発防止策を発表した。同駅のように、駅のホーム上では、電車との接触・転落事故が後を絶たず、ホームドアの整備が急がれている。
国交省によると、2014年度、ホーム上や線路への転落後に電車と接触した事故が、全国で227件(自殺を除く)発生した。この10年間で倍増している。こうした事故の原因の多くは、酒に酔った客によるものだが、「歩きスマホ」などが原因でホーム下へ転落した人も32人いた。
また、視覚障がい者の接触・転落事故も深刻だ。視覚障がい者にとって、ホームドアのない駅のホームは「欄干のない橋」のようなものだ。社会福祉法人日本盲人会連合の調査(11年)によると、約6割の視覚障がい者がホームに転落しそうになったことがあると回答。さらに約4割が、実際にホームから転落した経験があるとしている。
ホームドアを設置することで、接触・転落事故を防ぐ効果は極めて高い。「(故意に乗り越えたなどの事例を除き)設置されたホームでの接触・転落事故は、ほとんど聞いたことがない」(国交省鉄道局の担当者)という。
公明党はこれまでも、「新バリアフリー法」(06年施行)の制定などを通して、転落事故防止策を強く推進。駅の新設や大規模な改良を行う際には一定の条件でホームドアの設置が義務付けられるようになったことをはじめ、ホーム上の点字ブロックの設置も進んでいる。
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