主張ベルギー同時テロ 世界全体の安全を脅かす暴挙

公明新聞:2016年3月24日(木)付

「欧州の心臓が攻撃された日」―。ベルギーの首都ブリュッセルの国際空港と地下鉄で22日に起きた同時テロを、英フィナンシャル・タイムズ紙はこう伝えた。このテロで30人以上の尊い命が奪われ、負傷者は、日本人男性2人を含む約230人に上る。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。

欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の本部が置かれているブリュッセルは“欧州の首都”とも呼ばれ、欧州の政治・経済の中心地である。そこを狙われた衝撃は、あまりにも大きい。

実際、ブリュッセルには各国の企業が数多く進出している。日本から進出した企業は約230社。トヨタ自動車が欧州本部を置いているほか、複数の大手邦銀も拠点を構えている。今回のテロは、欧州のみならず、世界全体の安全を脅かす暴挙であり、断じて許されない。

ベルギーには約5400人の日本人が在留している。また、観光庁によると、日本から同国を訪れる人は、年間約11万人に上るという。政府は、在外邦人の安全確保に全力を挙げてもらいたい。

今回のテロは、昨年11月のパリ同時多発テロを受け、厳戒態勢が敷かれていたはずの空港やEU本部に近い地下鉄の駅で発生した。テロの実行犯、武器の調達役、資金提供者などが世界各地に散らばって活動しているため、一国だけでテロを防ぐことは難しい。各国の捜査機関の連携や情報共有のあり方などを早急に見直し、テロ防止に向けた国際的な協力体制を一層強化していくことが重要である。

日本では、4月に広島市で先進7カ国(G7)外相会合が、5月に三重県で主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開かれる。これらの会合は、テロの標的になりかねない。

サミットで多くの首脳が利用することになる愛知県の中部国際空港をはじめ、国内の国際空港では既に警戒レベルが上がっているが、今回テロが発生した空港では、制限区域となっていない出発ロビーが標的となった。政府は、あらゆる危険性を想定し、公共交通機関に加え、大規模集客施設などの「ソフトターゲット」も含めたテロ対策を早急に進める必要がある。

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