空室率が8割超す “孤立仮設”22市町村に

公明新聞:2016年3月10日(木)付

東日本大震災 あす5年
被災42市町村で本紙調査

ソフト重視の政策展開が急務

空室率80%以上の仮設住宅団地がある自治体が22市町村にも―。東日本大震災から5年、岩手、宮城、福島の被災3県の中で、特に被害が大きかった沿岸42市町村を対象に行った公明新聞の調査で分かった。災害公営住宅の整備が進む一方で、取り残された仮設住宅入居者の孤立化が浮き彫りになった格好だ。ハードからソフト面重視の政策展開が急がれる。

震災5年 仮設住宅の今今回の調査は、「心の復興」の加速へ向けた実態把握を目的に、2月8~18日の期間で実施。調査結果からは、災害公営住宅の整備が進む中で、仮設住宅の空室化が並行して進行し、入居者の孤立化が一層深刻になっている実態が浮かび上がった。

空室率が8割を超えた、いわば“孤立仮設”を抱える自治体は22市町村。このうち、半数近い9市町村では、災害公営住宅の整備率が8割を超えている。災害公営住宅などで新生活を始める人が仮設から出て行く一方で、移転先が決まらない仮設入居者は“虫食い状態”となった住環境に取り残されるという“二極分化”が加速していることがうかがえる。

災害公営住宅の整備を促進すると同時に、仮設に残らざるを得ない人々への支援を一層きめ細かにしていく視点が欠かせない。

仮設入居者からも「仮設から人が減っていくことは、それだけ復興が進んでいる証し。それでも、取り残されていく寂しさがある」(宮城県山元町・70歳代夫妻)といった声が相次いだ。

仮設ではまた、入居者の高齢化が進んでおり、独居高齢者が少なくないことも浮き彫りとなった。仮設での孤立死が約200人に達し、その数が年々、増加傾向にあることから、対応策の強化が求められる。

各自治体は、ボランティアなどと協力して見守り支援の強化に努めてはいる。しかし、マンパワー不足やコミュニティーの弱体化などで十全な対応には至っていないのが実態だ。“次の5年”に向けて、国は被災自治体へのバックアップ体制を強める必要がある。

被災地の人口減少の深刻さもあらためて浮かび上がった。住民基本台帳を基に、2010年からの5年間で人口が減った自治体を全国で見ると、人口減少率が高い上位グループに被災12市町村が並ぶ。

中でも、宮城県女川町26.1%(1位)、山元町20.96%(2位)、岩手県大槌町18.25%(3位)、宮城県南三陸町17.69%(4位)と上位4位を被災自治体が占める。急激な人口減少は、被災者の心に暗い影を落としている。

 

若者の故郷離れ顕著な福島

東京電力福島第1原発事故の爪痕が深く残る福島県でも人口減少・流出が深刻だ。特徴的なのが、沿岸部を中心とした15市町村での“若者の故郷離れ”だ。

12年から3年間で被災15市町村から転出した数は、50歳以上が563人だが、0~49歳ではその約14倍の7812人に上る。

本紙調査の際にも、「若者が少なくなっている。寂しい限りだ」(福島県川内村・70歳代男性)など、町の存続すら危ぶまれるとの声も数多く寄せられた。

今回の調査を踏まえ、公明党の井上義久幹事長は、「今月末で国が定める『集中復興期間』が終了するが、避難生活を送る全ての被災者が生活を再建し、『心の復興』を成し遂げるまでが『集中期間』との思いで決意を新たにしたい」と話している。

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