主張「指定廃棄物」処理 新ルールを膠着打破の契機に

公明新聞:2016年2月8日(月)付

膠着状態打破への一歩とできるかどうか。改めて国の覚悟が問われることになろう。

東京電力福島第1原発事故で発生した「指定廃棄物」の処理方法について、環境省が新たなルール案を示した。

放射性物質濃度が基準を下回れば指定を解除し、自治体が国の費用負担の下、一般ごみとして処分できるというものだ。今後、省令を改正して正式手続きに入る。

指定廃棄物は放射性物質濃度が1キログラムあたり8000ベクレル超の下水汚泥や堆肥、稲わらなどが対象で、東北から関東まで12都県で約17万トンある。

このうち、保管量が多い福島や宮城、茨城など6県の指定廃棄物について、国は県ごとに1カ所ずつの処分場を造って集約保管・処理する計画を立てた。民主党政権下の2012年3月のことである。

だが、この計画には重大な瑕疵があった。放射性物質は時間が経過すれば濃度が下がることを想定していなかったことだ。残念ながら、この硬直した考えは安倍政権にも引き継がれ、一向に計画が進まないまま時間だけが過ぎた。

事故から5年近くがたつ今も、処分地が決まった所は福島を除いて1カ所もなく、候補地の住民の反発で現地調査すらできないのが実態だ。

自治体の事情や時間の経過に即した柔軟な対応を可能とする新ルールは、こうした手詰まり感を打開する契機となると期待される。遅きに失した感は否めないものの、環境省は地元の理解促進に一層汗を流し、処理工程を早期に軌道に乗せてもらいたい。

新ルールは当面、茨城に限って適用されると見られる。県内にある約3500トンの指定廃棄物のうち約7割が既に基準以下なのに加え、(1)大半が公共施設での屋内保管で飛散・流出の心配がない(2)分散保管の維持を地元が求めている―などのためだ。

問題は、茨城以外の4県の処理だ。焼却すると放射能濃度が上がる農林系廃棄物が多く、しかも大半が屋外の仮置き場に保管されている。新ルールをそのまま適用するわけにはいかず、かといって処分場の建設も容易ではない。

ここでも、4県それぞれの事情を汲んだ柔軟かつ、きめ細かな対応が欠かせないことを確認しておきたい。

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