主張サウジとイラン 中東の安定へ両国は自制を

公明新聞:2016年1月9日(土)付

中東情勢が混迷の度合いを深めている。

サウジアラビアがイランとの外交関係を断絶すると発表した。また、サウジの外相は、イランとの商業関係を絶ち、航空便発着、渡航も禁止する声明を出した。バーレーンやスーダンもイランとの国交断絶を決めるなど、サウジに追従する動きを見せる。

両国の断交は中東地域だけでなく、国際社会にも多大な影響を及ぼす恐れがある。両国に自制を求めたい。

イスラム教にはスンニ派とシーア派の宗派対立がある。「二つの顔は正反対の方に向いている」(イスラム学者の井筒俊彦氏)と指摘されており、この「正反対」を象徴するのが、スンニ派の盟主・サウジとシーア派の大国・イランによる対立といえる。

サウジが、体制に批判的な活動をしていたシーア派指導者を処刑し、これに抗議したイランの住民が在イランのサウジ大使館を襲撃したことが、断交の直接的要因とされている。サウジは、イラン当局が襲撃を阻止できなかったと非難し、断交に踏み切った。

両国を対立軸とする宗派対立が激化すれば、緒に就いたばかりのシリア和平交渉にも影響しよう。シリア内戦の政治的解決に向けた行程表は、サウジ、イランの両国も同席した会合でまとまったものだけに、ただでさえ難航が予想される和平プロセスは不透明になるだけでなく、過激派組織「イスラム国」掃討戦略の出口も遠のきかねない。

サウジとイランの“代理戦争”が行われているイエメンでも、両国が協力しなければ、平和解決は困難になろう。

これ以上の原油価格への波及はないと専門家は予測するが、不安が広がれば世界経済への影響は避けられまい。

両国の断交を受け、国連安全保障理事会は「全ての当事者に対話の維持と緊張緩和のための措置」を求める声明を発表し、米国やロシア、欧州、アジア各国も両国に自制を促している。日本政府は、各国と協調しながら、あらゆる外交チャンネルを通じて鎮静化を働き掛けていくべきだ。

両国に滞在する邦人の安全確保も課題だ。外務省は駐在邦人に注意喚起を呼び掛けている。引き続き、邦人の安全保護に努めてほしい。

公明新聞のお申し込み

公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。

新聞の定期購読