薬物、アルコール…依存症者と家族をサポート

公明新聞:2015年11月26日(木)付

府立精神医療センターを訪れ、職員から説明を聞く内海、藤村、大橋の各議員府立精神医療センターを訪れ、職員から説明を聞く(右から)内海、藤村、大橋の各議員

全国初 大阪アディクションセンター開設
公明府議が推進

大阪府は、薬物やアルコール、ギャンブルなどの依存症者の治療と社会復帰をサポートする試みとして、当事者・自助グループ、医療、司法、行政からなる全国初のネットワーク組織「大阪アディクション(依存症)センター」を発足し、注目を集めている(本格稼働は2017年度から)。薬物依存症対策に取り組んできた府議会公明党の藤村昌隆、大橋章夫、内海久子の各議員はこのほど、同センターの中核施設に位置付けられている府立精神医療センター(同府枚方市)を訪れ、関係者と懇談した。

医療、司法、行政など連携 独自の回復プログラムも


アディクションセンターといっても、何か建物があるわけではない。依存症者の立ち直りを支えるネットワークの異名だ。一人の依存症者に対し、一面的に関わるのではなく、相談、治療、生活を支える法律的な支援、家族へのサポートなど、それぞれの専門家が、情報を共有し、依存症者の社会復帰まで支え抜いていく。

例えば、多重の借金で苦しむギャンブル依存症者の場合、弁護士などに相談し、借金が整理されて負担が軽くなると、またギャンブルに手を出してしまうケースが多い。これを防ぐため、アディクションセンターのネットワークを活用して法律的な支援と同時に、医療機関の専門治療を受けて、依存症自体を治していく。さらに、臨床心理士らが借金生活で疲弊した家族のメンタルケアにも取り組むといったイメージだ。

ネットワークには、事務局となる行政のほか、当事者・家族相互の自助グループ、保健所、医療機関、矯正施設・保護観察所、弁護士会・司法書士会、取り締まり機関の厚生労働省近畿厚生局麻薬取締部、在宅生活を支えるヘルパーや訪問看護師らが参加する。

府はアディクションセンターの発足に当たって、国の「依存症治療拠点機関設置運営事業」(2014~16年度の3カ年モデル事業)を活用。府立精神医療センターが「依存症治療拠点機関」の指定を受け、独自に開発した治療回復プログラムを実施している。

また、府こころの健康総合センターが薬物依存症者の家族のためのサポートプログラムを行っている。

アディクションセンターの事務局を担う府地域保健課の上野千佳課長補佐は、「3年間のモデル事業を通し、各機関と情報の連携を重ね、積極的にサポートし合える仕組みをつくりたい」と言う。

薬物などの依存症対策については、府議会公明党が定例会質問などを通して一貫して推進。特に今年10月の定例会質問で藤村議員は、薬物依存症者が全国で約10万人に上る一方で、実際に医療機関を受診している患者数は3万5000人にとどまっていることを指摘。(1)本人や家族が気軽に相談ができる体制の整備(2)医療機関、行政、自助団体の連携体制の構築(3)必要な医療を受けられる体制の強化―を迫った。これに対し府側は、大阪アディクションセンターを設立したことを明らかにし、17年度からの本格稼働に向けた準備作業に着手する方針を示した。

府立精神医療センターでの懇談で藤村議員らは、「依存症の患者を診療しケアしてくれる医療機関が少ないことが大きな課題。どこに相談すればいいか分からないという声もある」と指摘。府側からは「依存症を病気だと思っていない本人の意識もある。がん患者ならほとんどの人が病院に行くが、依存症で自ら医者にかかろうと思う人は少ない」「アディクションセンターの広がりによって、病院や保健所で待っているだけではたどり着かない依存症の人を、すくい上げていくことになれば」などの意見が聞かれた。

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