18歳選挙権「10代と政治」を考える

公明新聞:2015年10月31日(土)付

来年夏の参院選から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられる。18、19歳が新たに有権者となることで、10代と政治の関わり方が重要になってくる。全員が有権者となる大学生はどう政治に参画していくべきか。川上和久・明治学院大学教授に聞いた。

全大学生が新有権者に

現実自覚し積極参画を。投票率向上へ投票方法の改善も必要
明治学院大学 川上和久 教授

明治学院大学 川上和久 教授―18歳選挙権の意義をどう捉えるか。

川上和久・明治学院大学教授 1925年の普通選挙法の成立、45年の婦人参政権に並ぶ歴史的な出来事だ。18、19歳は自分たちの将来に責任を持つため、社会や自分のことを考える機会を得たことになる。

過去の国政選挙では、政治に対する20代の関心は他の年代と比べて極端に低い。18歳選挙権をきっかけに若い人が政治に対する関心を取り戻していく長い闘いが始まるのではないか。

―全大学生が選挙権を得ることになるが、学生の政治に対する関心はどうなのか。

川上 60年、70年代に政治への関心が高かった「安保世代」と比べると、社会が成熟してきたこともあり、学生の関心は非常に冷めてきている。一方で、「このままで大丈夫なのか」という不安もある。非正規雇用の若者が増えたり、終身雇用制が崩れていく中、自分たちが何とかしなければという気持ちを持っていると感じている。

もちろん苦学生もいるが、今の学生は一般的には恵まれている人が多いから、「何とかなる」という雰囲気がある。それは甘えというよりも、政治を知って変えるべきことを変えていかなければいけないというインセンティブ(誘引)が働きにくい状況にある。

むしろ、専門学生の方が建築や福祉などの資格を取ろうと明確な目標を持っているので、政治は何をやっているのかと関心が向きがちかもしれない。大学生には、将来社会人として生きていく現実感を持って政治を捉えてもらわないと、18歳選挙権を得る意義が薄れてしまうのではないか。

―大学生の政治意識を高めるためにはどうしたらいいか。

川上 過去の国政選挙では、成人して選挙権を持ったばかりの若者の投票率は少し高いが、それ以降の年代はだんだん下がる傾向にある。自分は有権者であるという自覚を促すことが、今後の課題といえる。

18、19歳の若者は、実際に選挙がないから自分が有権者という現実感がないのは当然である。今までは20歳になると成人式があって、「20歳になったから選挙権がある」という一種の通過儀礼になっていたが、18歳はそうしたものがない。大学の入学式などで選挙権を持っていることをアピールしていくことが大事だ。学生の政治意識を高めるため、大学側もさまざまな形で協力していくべきだ。

―学生と政治の関わりは。

川上 前回の参院選からインターネットによる選挙活動が解禁されたが、予想したほど効果があったという事例はあまりない。そうした意味で、ネットによるアピールはなかなか難しい。

政治が学生に関わる上で有効な手段の一つは、大学祭などのイベントだ。政党や政治家が、そこに出掛けて行って学生と直接触れ合うことが大事だ。米国などでは政党がイベントでブースを出して催しを開く。日本でそうした取り組みは全くない。イベント会場などを通じて、議論中のホットな話題について、政党が今後どうしていこうと考えているのかを率直に訴えていくことが肝要となる。キャンパスで政治を身近に感じてもらえるよう、積極的に議論に参加していくべきだ。

地方議員を含めた政治家へのインターンを充実させることも一案だ。政治の現場に触れることで、学生の政治に対する見方が変わってくるだろう。さらに、各政党を支持する学生が中心となって企画を立て、さまざまな層の学生と触れ合う機会を設けることも必要ではないか。

―投票率を高めるための取り組みも重要になる。

川上 最近の選挙では、期日前投票の投票所となる大学が増えている。自分の通っている大学に投票所があって、投票が当たり前となる文化が育まれるといいと思っている。こうした取り組みが広がっていけば、大学近隣の人も投票するから、大学生も投票に行かなければという雰囲気ができるかもしれない。

併せて、投票方法を改善したらどうか。韓国はオンラインによる投票が普及しているが、日本では今後、マイナンバーカードを活用していけば、選挙区がどこであれ、全国のどこにいても投票できるようになる。

被選挙権についても、今後は若い人が同じ目線で語り合えるような候補者を擁立するよう改善していったらどうか。各党は、医療福祉の現場で働いているとか、ひきこもりだったとか、問題意識を共有できるようなストーリーを持っている人を検討していってほしい。

かわかみ・かずひさ

1957年生まれ。東京大学文学部社会心理学科卒業、同大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。東海大学文学部助教授を経て現職。前明治学院大学副学長。専攻は政治心理学、戦略コミュニケーション論。「情報操作のトリック」「昭和天皇 玉音放送」など。



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