党訪韓、訪中団 平和を誓い、未来を創る
公明新聞:2015年10月24日(土)付
公明党の山口那津男代表は23日、東京・内幸町の日本記者クラブで講演し、先の訪韓、訪中団の成果を述べた。山口代表の講演要旨は次の通り。
訪韓
朴大統領の笑顔 印象的
日韓の懸案解決へ 国民感情の改善重要
10月7日から9日までの訪韓では、朴槿恵大統領に安倍晋三首相の親書を届ける、そして予定をされている日中韓3カ国の首脳会談の機会に、日韓の首脳会談をぜひ行っていただきたい、与党の立場でそうした環境を整えるのが最大の目的だった。
朴大統領と会談をすることができ、首相の親書も届けた。その際に、日中韓サミットの機会にぜひ訪韓し、日韓の首脳会談もぜひとも実現をしたいという(首相の)伝言と共に親書を渡した。
朴大統領からは、日韓関係を前進させるいい機会になるという話があった。その上で、課題として慰安婦の問題を人権問題として捉え、早期の解決を望むという期待感が示された。
安保法制についてはこれまで、随時説明を受けてきているが、韓国内には疑問や懸念を示す人たちもいるので、今後も適切な説明を求めたいという話だった。ヘイトスピーチ(憎悪表現)についても立法措置を含めて対応してほしいという話があった。
私からは、慰安婦問題をはじめ、両国にいろいろ懸案はあるが、両国政府の努力、そして、合意したことは必ず実行するという強い意思を持って対応することが、解決につながるという話をした。また、平和安全法制については、特定の国を対象にするものではない。この地域の平和と安定に資するものである。日本もこれまでの経験を基に国際貢献になお努力していきたいという趣旨のことを話した。
ヘイトスピーチについては、立法措置も必要だが、もっと両国の国民感情を改善して、そうした行為が行われないような環境をつくっていくことが、大局的な意味で重要であると申し上げた。朴大統領は、安倍首相とソウルで会えることを楽しみにしていると、笑顔で語っていた。大統領は、これまで難しい顔をした印象があったが、大変柔らかい笑顔で、しかし芯の強さを感じさせる印象を強くした。
(会談した)他の国会議員からも同様な課題の指摘があった。特にヘイトスピーチについては、韓国の国内の問題というよりは、日本における出来事であるから、在日の方々からの強い意向がつながっているなとも実感した。有識者との懇談も、非常に有意義だった。かなり冷静に、客観的に日韓の関係を見ていると感じた。
いずれにしても昨今、日韓の往来が盛んになってきている。日韓議員連盟はもちろんだが、文化、芸術などの交流も盛んになっている。その中で、先方も私も触れたのは、「日韓交流おまつり」という行事が9月に毎年行われていて、ソウルではもう10回になる。日本でも5回を数える。
私は日本の5回の行事には、毎年参加をして、その変化を感じている。交流おまつりは、ソウルでも東京でも2日間に7、8万人が訪れる盛況ぶりだ。こうした交流を重ねていくことこそ、ヘイトスピーチなどを生み出さない環境をつくっていく方向であると申し上げた。
訪中
「東京の桜をご覧いただきたい」
習主席の訪日を招請
中国には10月13日から16日まで訪問した。この訪問は、15日に「アジア政党国際会議」を中国が主催する予定があり、そこで私にスピーチをお願いしたいというのが招待の趣旨であった。
訪問初日に、私の方から希望して中国人民抗日戦争記念館を訪問した。これは盧溝橋にある施設だが、私は2010年に訪中した折にも訪問している。その時の展示と展示内容が変わっているということを聞いていたので、希望して訪問した。
私が特に注目したのは、国交正常化後の日中交流の展示だ。今回、新しくなっていたのは、昨年11月に北京で行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際に、安倍首相と習近平国家主席が握手して会談をした時の写真がパネル展示をされていたことだ。その隣には、13年1月、安倍首相の親書をお預かりして私が訪中し、習近平総書記(当時)と会談をした写真が、同様にパネルで掲げられていた。
ここで、「署名など、何か書いてください」と言われたので、私は「歴史を忘れず、平和を誓い、未来を創る」という言葉を書いた。中国中央テレビ(CCTV)のインタビューで、「歴史は取り消すことはできません。その上で、それを教訓にして、平和を誓い、実行することが大切です。未来は創っていくことができます」という話をした。
中国共産党中央対外連絡部(中連部)の劉洪才副部長との会談の中で、印象深かったのは、中国には貧困層といわれる人たちが約7000万人いる。特に農村部に多い。こうした貧困削減ということが、10月の5中全会(中国共産党中央委員会第5回全体会議)でも、テーマとして掲げられるだろうと言っていた。一方で、都市部の若い人たちは、不動産を購入したり、また貯蓄をしない傾向があり、この若者たちは未来に自信を持っているのだと考える、という発言もあった。
私からも、未来への期待と実際の結果が一致するように努めていくことが大切ですね、と申し上げた。
唐家セン・中日友好協会会長との会談では、唐家センさんから、歴史認識、平和安全法制、国民感情の改善などの課題について、いろいろと指摘があった。
アジア政党会議には34カ国から64政党の代表が参加した。政治的リーダーシップ、経済発展、人的交流の3分科会が行われ、私は政治的リーダーシップについて、スピーチをした。シルクロードをテーマに、中国風に言う「一帯一路」をテーマにした議論を行った。
私のスピーチの大要は、アジアには膨大な潜在力がある。これを顕在化させていくことが大切である。シルクロードの東の終着点は日本であり、日本を含めた国際協力が重要な取り組みだ。アジア地域が高い連結性を持って進むことが重要だ。
日本は政府開発援助(ODA)で1100億ドルの提示をし、またアジア開発銀行(ADB)とも連携をしながら、質の高い経済成長、質の高いインフラの整備をめざしている。また、中国ではアジアインフラ投資銀行(AIIB)、あるいは一帯一路のイニシアチブがあるけれども、その両方を合わせても、アジアの膨大なインフラ需要を満たすことはできない。従って、日本の取り組みも、中国のイニシアチブも、ともに排他的、競争的なものというよりは、相互補完的、協調的なものであるべきだという趣旨のものとなった。
その上で、グループ会見が行われ、参加国の政党の代表が意見を述べる場面があった。参加した64名の一人一人と、習主席が握手をして、会場に迎え入れる。1人当たり5秒から10秒程度の短いあいさつだったが、私の場合は、あらかじめ安倍首相の親書を渡したい、それから幾つかのやりとりをさせてほしいと伝えていたので、約1分程度のやり取りがあった。
親書を届け、11月の国際会議の際に、日中の首脳会談が行われることを安倍首相は強く望んでいることを伝えた。そして、「われわれは、東京の桜を主席にぜひご覧いただきたいと望んでおります」と伝えた。主席はにっこりと微笑んで、頷いていた。そんなやり取りをした上で、グループ会見が行われた。
日本との協調を重視
中国国家開発銀行の胡懐邦会長と会談をした。胡会長は日中の財政当局とのやり取りを通じて、通貨スワップをぜひ実現してもらいたい、また、人民元と日本円の直接取引ができるようにしてもらいたい。ドルを介さないで直接取引ができれば、観光なども大いに拡大の余地があるだろうという考えを示された。
次に、AIIBの次期総裁、金立群さんとお会いした。「現職の日本の政治家と会うのはあなたが初めてです。ぜひ、日本の方々にAIIBの内容についてお伝えください」と注目されていた。金次期総裁は、日本はAIIBの創設メンバーではないが、加入を大いに歓迎する。日本が懸念しているガバナンスの透明性、質の高いインフラ整備といったことに関して、良く理解している。日本の金融当局、政治家、経済界等々とぜひ交流をしたいとも言っていた。日本との協調に重きを置いていることを実感した。
劉雲山という政治局常務委員の「ナンバー5」と呼ばれる方と会談した。中国共産党のナンバー1は習主席で、中国共産党においてはナンバー2の存在だ。劉雲山さんと会談した日本の政治家は、それほど多くはいないと思う。
この方との会談で、特に印象的だったのは、安倍首相の戦後70年談話について、一定の評価をしていたことだ。プラスの評価の面では、中国をはじめアジアの人々、国民に配慮していくという積極的評価。一方で、戦争責任を回避するような態度も見られるという消極的評価もあった。
私から、北朝鮮が挑発的な行動をするような懸念も国際社会に起きている。北朝鮮に(訪問し)自制を促してきた劉雲山さんの印象はどうかと尋ねた。金正恩氏は「北朝鮮の民生の安定と経済発展をめざしているので、国際的に安定した良好な環境を必要としている」と語っていたということだった。
また、(中国が)北朝鮮に対して取っている態度として、三つの堅持ということを語っていた。(1)北朝鮮とは平和と安定を求め、友好的な関係を堅持していく(2)非核化を求めていくことを堅持していく(3)平和的交渉の道筋を堅持していく―その3点が基本的な態度だと語っていた。
(一連の会談では)総じて日本との関係を改善したい、その環境を一つ一つ前進させたいと、昨年のAPECの直前に結ばれた4項目の日中間の合意文書を引用して、今後の日中間の方向性を訴える人が多かった。
帰国後、まず安倍首相と面談し、中国メディアの取り扱いなどをお見せしながら、具体的に報告した。首相は、日中韓の3カ国会談の折に、李克強首相との日中首脳会談を実現させたいと明言し、また、11月のG20などの国際会議の際に、習主席との首脳会談をぜひ実現させたいとの強い意欲を示していた。われわれ与党としても、しっかり環境を整え、サポートしていくので、両国との関係改善に力を発揮してもらいたいと申し上げた。
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