アジア政党国際会議 山口代表のスピーチ(要旨)

公明新聞:2015年10月16日(金)付

インフラ整備支援 政治がリーダーシップ
アジアを成長センターに

私は日本の連立与党・公明党の代表を務めている。前回、北京を訪れたのは2013年1月だった。当時、日中関係は厳しい状況にあったが、習近平・中国共産党総書記(現国家主席)と会い、和やかな雰囲気の中で有意義な会談を行うことができた。あれから3年近くがたとうとしている。秋は北京が最も美しくなる季節だが、この時期に再び北京を訪れ、ICAPP(アジア政党国際会議)に出席できたことを大変うれしく思う。

会合のメーンテーマは「シルクロード」だが、古代シルクロードを通じてさまざまな文物が東西を行き交った。日本の古い都である飛鳥京や平城京は“シルクロードの東の終着点”と呼ばれ、日本にもさまざまな文物が入ってきた。かつて平城京があった奈良の正倉院には、唐やペルシャなどで作られた宝物が今日まで大切に残されている。また、日本の文化に深い影響を与えた仏教も、シルクロードを通じて中国に入り、朝鮮半島を経て日本に伝わった。シルクロードは、文化、経済、人的往来などの面において歴史的に重要な役割を果たした。

シルクロードの中心地域であった中央アジアのトルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの5カ国は、人口約6500万人、経済規模は約3400億ドルだ。ユーラシア大陸の東西の中心に位置し、天然資源が豊富な国々もあり、経済面で大きな潜在力を持った地域だ。さらに、東アジアの日中韓、ASEAN(東南アジア諸国連合)を含めれば人口約23億人、約17兆7400億ドルの経済規模で、その潜在性はさらに大きい。

このように、かつてのシルクロード周辺に広がる私たちのアジア地域には経済面で大きな潜在力があり、これを顕在化させていくためには適切なインフラの整備を通じて、域内外の連結性を高めることが極めて重要と考える。

インフラ整備は、それ自体が目的ではない。先の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で示されたように、各国が包摂的で持続可能かつ強靱な、質の高い成長を実現するための経済的基礎を打ち立てていく手段だ。私たちの最終目標は、地域の潜在力をフルに引き出し、全ての人々がその果実を享受できるようにしていくことだ。

取り組みを進めていく上では一人一人の人間を大切にする「人間の安全保障」の考え方、人間中心の視点が不可欠だ。実際、地域の潜在力を開花させ、21世紀の世界経済をけん引する“成長センター”とするために、膨大なインフラ整備と資金が必要といわれている。日本はこのようなインフラ需要に応えるべく、これまでもODA(政府開発援助)などを通じて各国の経済開発を支援してきたが、今年5月、こうしたODAなどの開発協力ツールを総動員し、ADB(アジア開発銀行)と連携しつつ、今後5年間で約1100億ドルの質の高いインフラ投資を行うと表明した。また、中国も経済的イニシアチブ(主導権)を打ち出していると承知をしている。

重要なのは、こうした支援やイニシアチブが最終的にこれらの地域の持続的な発展に資するように進められることだ。さまざまなインフラ関連のイニシアチブが相互に整合的で一貫性のあるものとなれば、それぞれの効果は一層高まる。そのためには、あらゆる関係者の間で経験や教訓を共有していくことが有益だ。取り組みのカギを握るのが政治的リーダーシップであり、関係国間の対話や連携が不可欠と考える。

この観点から、シルクロードに連なる各国の政党が集ったICAPPは非常に有意義な会合だ。列席者が共通認識を形成し、それぞれの立場で政治的リーダーシップを発揮していくことを期待してやまない。この会議から実りある成果が生まれることを願っている。

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