TPP大筋合意石田政調会長に聞く

公明新聞:2015年10月10日(土)付

全体的には 国益に貢献 農業の体質強化へ全力
利点生かし、影響を緩和

日米など12カ国は5日、環太平洋連携協定(TPP)締結交渉で大筋合意に達しました。その評価や意義、今後の国内対策などについて、公明党の石田祝稔政務調査会長に聞きました。

―TPP大筋合意の評価と意義は。

石田祝稔政務調査会長 詳細はさらに精査する必要がありますが、全体的には国益の増進に貢献するものとして、おおむね評価できます。発効すれば、経済規模で世界の国内総生産(GDP)の約4割を占める大きな経済圏ができることは、日本製品の市場拡大につながり、中小企業や地域の地場産業の活躍の場がアジア・太平洋地域へと広がるなど、利点は非常に大きいと認識しています。

経済面での連携の広がりは、安全保障面でもプラスに働くことは間違いありません。今後、参加国を増やして、連携の輪を広げていけば、日本のみならずアジア・太平洋地域全体の安定と発展につながっていくものと期待できます。

―合意内容については。

石田 関税の引き下げ・撤廃により、食料品などの輸入品の値下がりが見込まれるほか、参加国向けの輸出がしやすくなるため、消費者や輸出産業にとってはメリットが大きくなります。

一方、国内の農林水産業にとっては、例外的に関税撤廃の対象から除外された品目もありますが、安価な輸入品との厳しい競争が余儀なくされる品目も少なくありません。そうした中で、食料の自給や農地が果たす機能などを考えると、生産者をどう守り、農業の体質を強化していくかは、極めて重要になります。

―衆参両院の農林水産委員会は、農産物の重要5項目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)について、引き続き再生産可能となるよう、関税撤廃の対象から除外することを求める決議を採択しているが。

石田 5項目については、「例外なき関税撤廃」の対象から除外すべきであると主張してきました。その趣旨においては、決議はギリギリ守られたと思いますが、TPPの影響を受ける生産者側の評価は厳しいものがあるでしょう。そうした評価を踏まえつつ、どのように対応していくかが課題です。再生産をどのように可能にしていくかも含めて、国内対策をしっかりやっていくことが極めて重要であると認識しています。

―国内対策にどう取り組むか。

石田 日本の農業は、従事者の高齢化や後継者不足など多くの課題を克服しなければなりません。農業の国内対策は、TPP発効に伴う直接的な影響に対する手当てだけが目的ではありません。TPPをきっかけとして、農業全体の所得を増やし、体質を強化していく対策を講じることが大切です。

そうした意味では、農地の集約化を進めるなど、生産コストを低減させていくと同時に、海外への輸出を拡大して売り上げを増やしていくことが必要となります。国産農産物などを海外に輸出する際の支援体制を強化していくことも求められます。今後、党内の対策本部を強化・拡充し、党を挙げて、きめ細かな対策を実現していく決意です。

また、農林水産業だけでなく、工業製品などを含め、現場の声を丁寧に聴きながら、国内対策を検討していきます。

―TPPには、農産物などの輸入増による悪影響が懸念される一方で、参加国向けの輸出を増やすチャンスという側面もあるが。

石田 農林水産業に加え、中小企業にとっても、製品の販路を海外に拡大するチャンスになることは間違いありません。とはいえ、自助努力だけでチャンスを生かし切ることは難しく、販路拡大などに向けたノウハウ面での支援策も進めます。

いずれにしても、TPPによる市場の拡大、特に関税撤廃による輸出入のメリットをいかに引き出すかが重要になります。国を挙げて国益を最大化するための態勢を整えられるよう取り組みます。

―TPPに入ると「国民皆保険制度が揺らぐ」「食の安全が脅かされる」との懸念もあったが。

石田 合意の中には、公的医療保険や食の安全に関する従来の制度の変更を求めるような条項はありません。

日本では、遺伝子組み換え食品の表示義務が課せられていますが、食品表示に関する日本の制度の変更が必要となる規定も設けられていません。こうした分野で国民の皆さんのご心配につながるようなことにならないよう、今後の動向を注視していきます。

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