主張主権者教育 政治的判断力の育成めざそう

公明新聞:2015年9月3日(木)付

来夏の参院選から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられることに伴い、高校を中心に、政治への意識を高める「主権者教育」の取り組みが広がっている。各地で、選挙管理委員会や明るい選挙推進協会と連携し、選挙出前講座や模擬投票が実施されている。

文部科学省は、今年秋をめどに全国の国公私立の全高校生を対象に、政治参加に関する教育のための副教材を配布する。選挙の意義や投票の仕組みなどを理解してもらうとともに、話し合いや討論、模擬選挙、模擬議会を実施することで、選挙に親しむ機会をつくることをめざす。若い世代が、民主主義の重要性を認識し、信頼を育むことに期待したい。

わが国の主権者教育は、18歳選挙権が定着している欧米諸国に比べて大きく出遅れている。

教育基本法第14条では、「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」と、政治教育の重要性をうたっているが、同第2項で、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」とされており、学校現場で政治教育は抑制されがちだった。

政治的中立を守りながら、現実の政治を読み解くような授業は、実際には難しく、一部の学校を除いて、この分野の展開は進まなかったと言っても過言ではない。

しかし、18歳選挙権によって、主権者教育の充実は急務である。「新しい主権者像」を求め、現在の政治教育の展開をもたらした「常時啓発事業のあり方等研究会」(総務省)の最終報告書(2011年12月)は、「社会参加」と「政治的リテラシー(政治的判断力や批判力)」を主権者教育の柱に挙げている。

社会参加意欲が低ければ、政治意識は向上せず、いわゆる「お任せ民主主義」になってしまう。政治的リテラシーが弱ければ、ポピュリズム(大衆迎合)に巻き込まれる。

これらは、高校生だけの課題ではない。わが国で主権者教育を発展させていく中で、「考える有権者」「賢い国民」が増えていくことが、日本の民主主義を鍛えていくことにつながるはずである。

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