参院選挙制度改革「2合区・10増10減」

公明新聞:2015年7月27日(月)付

格差是正は不十分も結論が出たのは評価
魚住裕一郎参院会長に聞く

都道府県を単位とする参院選挙区の「1票の格差」是正で、参院各会派の間で議論が続いた参院選挙制度改革は、24日の参院本会議で「鳥取・島根」「徳島・高知」の2合区を柱とする「10増10減」案(自民党など提出)が可決、衆院に送付され、参院全体としての結論になった。選挙制度改革をめぐる公明党の合意形成に向けた取り組みに関して、魚住裕一郎参院会長に聞いた。

公明、合意形成に尽力 「2倍以内案」提示で議論動かす


―参院として「10増10減」案が結論になったことの受け止めは。

魚住参院会長 来年夏に改選を迎える議員は、7月25日に任期満了となる。参院公明党は、その1年前までに参院全体の意思を決めるべきだと訴え、各会派の合意形成に向け努力してきた。その意味では、24日の本会議で「10増10減」案が可決したことにより、参院として結論が出たこと自体は前進だと評価したい。

―ただ、公明党は本会議の採決で「10増10減」案に反対した。

魚住 「10増10減」案では、格差是正が不十分だからだ。なぜ、選挙制度改革の議論が始まったかと言えば、2010年と13年の参院選がそれぞれ最大格差5.00倍、4.77倍で行われ、最高裁から2回連続して「違憲状態」と指弾されたことだ。憲法が求める「投票価値の平等」を実現するには、都道府県単位の選挙区制度を見直すなど抜本的な改革が必要だとも指摘され、このまま16年参院選を行えば、「違憲・無効」の判決が下されてもおかしくなかった。

われわれは「投票価値の平等」は、1人が2票をもたない状態、つまり格差を「2倍以内」にすることが必要だと主張してきた。「10増10減」案は初めて合区の導入に踏み込み、一歩前進といえるが、まだ最大格差は3倍程度もある。党内の取りまとめに苦心した自民党執行部の苦労は理解するが、これで本当に憲法にかなっているのかどうかという懸念はなお残っている。

―公明党は格差を「2倍以内」に収めるため、10合区する案を民主党などと共同提出したが。

魚住 「投票価値の平等」に向け、公明党が最初に提示した案は、全国を11ブロックに分けた大選挙区制だ。この11ブロック案で最大格差は1.13倍にまで縮小する。今でも、これが最もふさわしい抜本改革案だと考えている。

しかし、各会派の合意形成が進まず、来年の参院選に間に合うよう制度を改正するには、周知期間を考えると時間的な猶予がなくなった。参院議長からは各会派で合意形成へ協議するよう指示もあった。そこで、公明党としては新たな提案もせず、合意形成に汗を流さないわけにはいかないと判断した。

その結果、いったん11ブロック案を棚上げし、次善の策として、合区を認めて格差を「2倍以内」に収める具体案を作成した。合区は、第1会派の自民党と第2会派の民主党が改革案として触れていたこともあり、互いの歩み寄りが期待できると思ったからだ。

―最終的には連立与党の自民党と対応が分かれることになったが。

魚住 案の一本化へ向け、最後まで歩み寄りの余地を探ったが、これ以上は難しいということで、本会議採決という民主的な手続きによって結論を出すことになった。それでも、わが党が合区案の提出に踏み切ったからこそ、この時期に参院の意思を決めることができたと思っている。

そもそも連立与党というのは、首相を選出して政策を進める行政府との関係を中心にした枠組みであり、今回の選挙制度の議論は、司法の警告を受けた立法府の“土俵”に関するもので、与野党という視点で語るのは適切でない。共に政権を担う連立与党として、自民党に対する信頼関係は揺らいでいない。

―今後の選挙制度改革の方向性については。

魚住 「10増10減」案は、19年参院選に向けて「制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得る」との文言が盛り込まれている。

その点では、抜本改革が必要であり、引き続き議論が必要だという共通認識はあると思う。格差の是正だけでなく、参院のあり方はどうあるべきなのかなど根本的な議論も含めて協議を続けていくべきだと考えている。

公明新聞のお申し込み

公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。

新聞の定期購読