<解説>コミュニティ・スクール

公明新聞:2015年3月25日(水)付

東京都三鷹市では、住民による教育ボランティアが学力向上に貢献している東京都三鷹市では、住民による教育ボランティアが学力向上に貢献している

地域の力で子どもの課題解決を

地域住民が公立学校の運営に参画する「コミュニティ・スクール(CS、学校運営協議会制度)」が、地域ぐるみで子どもをめぐる問題を解決する仕組みとして注目されている。コミュニティ・スクールの概要や利点などを解説するとともに、普及への課題を日本大学の佐藤晴雄教授に聞いた。

学校の運営に住民が参加

学力向上や不登校減少で効果

コミュニティ・スクールは、保護者や地域住民らで構成する「学校運営協議会」を設置し、学校の運営に地域の意見を反映させる制度だ。2004年に改正された地方教育行政法で制度化され、全国の公立小中高校をはじめ幼稚園、特別支援学校の1919校(昨年4月1日時点)が、自治体の教育委員会から指定されている。

コミュニティ・スクールのイメージ学校運営協議会の主な役割は、(1)学校運営の基本方針の承認(2)学校運営に関する意見を教育委または校長に述べることができる(3)教職員の任用に関して教育委に意見を述べることができる―と同法で規定されている【イラスト参照】。

コミュニティ・スクールによって地域住民が積極的に学校に協力する環境がつくられ、子どもの課題の解決に目覚ましい成果を上げているケースは少なくない。

例えば、小・中一貫教育を実施する東京都三鷹市は、08年度までに市立小・中学校全22校をコミュニティ・スクールに指定し、9年間の子どもの成長を地域全体で支援する体制を敷いている。

三鷹市の場合は、中学校区を一つの「学園」と位置付け、中学校と複数の小学校で学校運営協議会を合同で開催し、「コミュニティ・スクール委員会」として機能させている。各学園では月1回程度のコミュニティ・スクール委員会の会議を開き、学校運営に関する協議を行っている。協議を重ねる中で、住民が子どもの勉強をサポートする教育ボランティアなどの活動も一段と活性化し、市の学習到達度調査で学力の向上が見られたほか、中学生の不登校者の減少も顕著になったという。

福岡県春日市は、10年度までに市内全小中学校18校をコミュニティ・スクールに指定した。市内のある中学校では、生徒の補導件数が年間1000件を超えていたが、コミュニティ・スクールで学校と保護者、住民が問題意識を持ち、地域パトロールを徹底して行った結果、補導件数が20件前後にまで減少した。

文部科学省の委託調査(11年度)でコミュニティ・スクール指定校の校長に導入の成果を尋ねたところ、「学校と地域が情報を共有するようになった」(92.6%)、「地域が学校に協力的になった」(87.7%)などの回答が多く、学校と地域の連携が深まっている実態が裏付けられている。また、「地域の教育力が上がった」(56.3%)「地域が活性化した」(51.4%)など肯定的な回答が多数寄せられている。

全国3000校(16年度までに)めざす


コミュニティ・スクールについて文科省は、16年度までに全公立小中学校の1割(約3000校)に拡大する目標を掲げている。

ただ、都道府県単位で見た場合、地域による導入状況の差が大きい。京都、岡山、山口、宮崎の4府県ではコミュニティ・スクールの指定の割合が既に2割を超えている一方、未導入の県も複数ある。

導入の課題になっているのは、予算の確保や担当人員の不足のほか、学校側に「教員人事への意見」への警戒感や「特定委員の発言で学校運営が左右される」などの不安があるとも言われている。

そこで文科省は、さらなるコミュニティ・スクールの普及に向け、15年度予算案でCS導入促進のための事業を大幅に拡充している。導入を促すだけでなく、導入後の運営体制づくりや、学校運営協議会委員の研修の充実などにも取り組めるようにする。

一方、今月4日に発表された政府の教育再生実行会議の第6次提言では、「全ての学校がコミュニティ・スクール化に取り組」むことをめざし、検討を進めることが盛り込まれており、今後の進展が期待されている。

公明、普及を積極的に推進


公明、普及を積極的に推進公明党は、コミュニティ・スクール制度化以前からマニフェストで学校運営協議会の導入を提案し、普及を後押ししてきた。

昨年7月には党文部科学部会は、15年度予算の概算要求の重点施策要望で「コミュニティ・スクール未導入地域に対する支援を拡充するとともに、導入後の支援制度を創設すること」を訴え、コミュニティ・スクール導入促進事業の拡充につなげた。また、同部会は昨年9月、コミュニティ・スクールの先進事例を調査するため山口県光市の市立中学校を訪れ、地域住民向けの外国語授業の様子などを視察している。

今年2月に発表した党の統一地方選挙重点政策でも「コミュニティ・スクールの導入」を明記しており、普及に全力を挙げる姿勢を示している。

定着へ中長期のサポートが必要

教員の事務負担軽減にも期待
日本大学佐藤晴雄教授に聞く


―コミュニティ・スクール導入の効果は。

佐藤晴雄教授 文部科学省の委託により、私たち日本大学が行った調査からは、導入した市町村で「学校と地域が情報を共有するようになった」「地域が活性化した」など、学校と地域・保護者との風通しが良くなったとの声が多いことが分かっている。

例えば、市内の全公立小中学校をコミュニティ・スクールに指定している福岡県春日市では、学校や警察も関わった住民の地域パトロールが生徒の非行防止に成果を挙げている。もし学校が地域に一方的にパトロールをお願いしていたならば、地域住民は“やらされている”と感じる人も出ただろう。しかし、春日市の場合、コミュニティ・スクールが学校と住民の仲介役になることで、うまくいっている。

―コミュニティ・スクールが未導入の県もある。普及を阻む背景は何か。

佐藤教授 戦後の教育制度の変遷から考えると、コミュニティ・スクールは地域住民が学校運営の意思決定にまで関与できる、ある意味で画期的な制度だ。しかし、10年たっても、よく知らない人が多く、「コミュニティ・スクールの特定委員の発言で学校運営が混乱しないか」などの心配を勝手に想像してしまっている。コミュニティ・スクールの委員は、校長の推薦で教育委員会が任命するのだから、そういう人を任命しなければいいだけだ。

「地域と連携しているからコミュニティ・スクールは不要だ」とする自治体もある。しかし、よく調べると、地域の人が学校に遊びに立ち寄って帰っているだけのケースがある。それでは連携しているとは言えない。地域全体で学校を支えるという仕組み、大義名分がなければ、連携はなかなか実効性を伴わない。

―コミュニティ・スクールの導入で「先生の負担が増える」として、導入に慎重な意見もあるが。

佐藤教授 コミュニティ・スクールに関わるのは管理職の教員で、一般の教員には直接関係ない。教員の仕事量が増える例もないわけではないが、現実的には少ないだろう。

むしろ学校文化の改善という意味では、外からの風を入れた方がいい。教員が余計な事務を負担していたら、コミュニティ・スクールがやめるよう指摘してくれるケースが増えている。コミュニティ・スクールの導入に際して、形式的な指導主事の学校訪問を廃止したり、定例の職員朝会を必要に応じて開催する形式に見直すなど、業務のスリム化ができた例もある。

―コミュニティ・スクール普及への支援策のあり方は。

佐藤教授 コミュニティ・スクールの現行の支援策は調査研究が名目であり、教員や事務職員の加配措置があっても1、2年で、期間が過ぎたら引き上げてしまう問題がある。コミュニティ・スクールの調査研究で頑張ったものの、人や財政支援が途切れたことで、導入に至らなかったケースがある。15年度はコミュニティ・スクール導入促進の関連予算が充実するとはいえ、中長期的なサポート体制づくりが必要だ。

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