地方版総合戦略 Q&A

公明新聞:2015年3月15日(日)付

自公政権が最重要課題の一つに位置付ける地方創生の一環で、政府が全国の自治体に策定を求めている「地方版総合戦略」の全国第1号を、京都府京丹後市がまとめた。全国の自治体では今、地方活性化の具体化に向けて、活発な議論が交わされている。

雇用創出など、地方創生の具体策示す

Q どういうものか?

A 地域活性化の具体策や、長期的な人口目標など定める。政府は自治体に15年度中の策定求める。

地方版総合戦略は、地域活性化と人口減少克服のため、政府が自治体に2015年度中の策定を求めているもの。今後、自治体が取り組む地方再生計画や長期的な人口目標などについて定める。
政府が想定する地方版総合戦略作成スケジュール
政府は昨年末、地方創生の実現へ「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と長期ビジョンを閣議決定。50年後も1億人の人口を維持することや、人材の東京一極集中を改め、20年までに地方で30万人の若者向け雇用を創出することなどを目標に掲げた。国は、地方版総合戦略に掲げられた施策を後押しすることなどで、目標の達成をめざす。

財政面でも自治体の取り組みを支援する。

14年度補正予算に盛り込まれた地方創生先行型の交付金(1700億円)では、総合戦略を策定した自治体向けの上乗せ分(300億円)がある。さらに、15年度政府予算案では関連事業に約1兆4000億円、地方財政上の取り組みとして地方創生に必要な歳出を1兆円計上した。地域の活性化に向け、積極的な国と地方の連携に期待が高まっている。

今月2日に全国で初めて総合戦略をまとめた京丹後市は、現在約5万8500人の同市の人口を45年後には7万5000人とする大胆な目標を打ち出した。

具体的には、地域の資源を生かし、丹後地方で新たな絹織物産業を育成し、雇用の場を広げることなどを表明。工業製品出荷額は27億円増、年間観光客数32万人増、大学設置による学生の受け入れ数1800人など、2020年までに達成をめざす数値目標も掲げている。

さらに、10日には、長野県塩尻市が全国で2番目となる総合戦略の策定を発表。森林資源を活用したまちづくりや保育料減免などの子育て世帯支援策を打ち出した。

政府は、地方版総合戦略の策定に関して、産業界や行政、大学だけでなく、地域の実情をよく知る金融機関や労働団体、報道機関も加えて議論するよう後押ししており、現在、全国の自治体では、幅広い分野の人材を交えた活発な議論が始まっている。

小規模自治体は国の職員らが策定後押し

Q 今後の課題は?

A 策定作業に戸惑う自治体も。国は職員派遣など人材面でも支援。中期的には実効性確保がカギに。

比較的規模の大きな自治体も、策定の具体的な時期や数値目標を示し始めており、総合戦略は多くの自治体で策定されるとみられている。

一方で、自治体の取り組みに温度差があることには注意が必要だ。小規模な自治体の中には慣れない戦略づくりに戸惑う声もある。

このため、政府は、人口5万人以下の市町村に国家公務員や大学職員、民間シンクタンクの研究員などを「シティマネジャー」として派遣して、戦略の策定を支援する制度を4月から始める。
2015年度中の地方版総合戦略の策定について(共同通信社が2月に発表した全国首長アンケートの結果)
また、政府は先月末、国の事業などに関する自治体の相談に応じる「地方創生コンシェルジュ」に17府省庁の計871人を選任したと発表した。都道府県ごとに、その地域に愛着や関心のある職員を担当として配置。各担当者は、市町村などが気軽に問い合わせができる「霞が関の案内役」となり、地方創生の取り組みを支援する。

このほか、政府は、企業や省庁の膨大なデータを活用して政策立案に生かす「地域経済分析システム」を整備して、地域に活用を促す。

中期的には、当初掲げた戦略に、いかに実効性を持たせるかがカギになる。このため、政府は自治体に対し、総合戦略の実行にあたっては、PDCA(計画、実施、評価、改善)サイクルのもとで、施策の効果を検証しながら必要な改善を行うよう求めている。

これから15年度にかけて本格化する地域の戦略づくりで重要になるのが、住民の声を代弁できる地方議員の役割だ。特に、国と地方の連携に強みを持つ公明党のネットワークに首長や識者の期待は高い。

また、既に公明党は、(1)地域が必要とする人材を大都市圏で掘り起こし、若年人材の定着を促す「地域しごと支援」(2)地方への居住を推進するための「都市農村交流」(3)奨学金を活用した大学生などの地方定着の促進(4)妊娠期から子育て期まで切れ目なくサポートする「子育て世代包括支援センター」の整備(5)中山間地域などで生活・福祉サービスを一定エリアに集める「小さな拠点」の形成――の重点5分野を示し、地方議会での訴えを始めている。

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