地域活性化にどう貢献? 公立大学

公明新聞:2015年2月12日(木)付

学生と地元つなぐ拠点
農村活性化など14プロジェクト
<北九州市立大学>

大都市圏への人口集中の是正が叫ばれる中、政府は若者の地方定住を促す観点から、公立大学を軸にした地域活性化に乗り出している。少子化、人口減少の時代にあって大学に求められている地域貢献とは何か。地元のニーズと、地域活動を希望する学生をマッチング(適合)させ、多数のプロジェクトを展開する北九州市立大学(近藤倫明学長)の取り組みを追った。

「ボランティア通し愛着生まれた」


地域共生教育センターでプロジェクト運営の打ち合わせをする学生たち北九州市立大学は、複数の学部と大学院研究科がある学生数約6500人の総合大学。北九州市内に二つのメーンキャンパスを持つ。地域共生教育センターが、地域課題の解決と、地域活動による学生の教育を目的に2010年4月、学内に設立された。

同センターは、学生向けの地域活動やボランティアを募集しており、地域からさまざまな要望が寄せられると、学生の登録者の希望に応じて情報を発信し、マッチングする。昨年10月17日現在、約1100人の学生が登録している。

今年度は14の地域活動プロジェクト(イベントのボランティアなど短期のものを除く)を実施。その中には先輩から後輩へと受け継がれ、長期にわたって継続されている取り組みも少なくない。

例えば、学生が農業体験を通じて地域住民をつなぎ、農村部の活性化をめざすプロジェクトや、中学生の将来の夢を一緒に考え、後押しするプロジェクト、東日本大震災の被災地でボランティアを行うプロジェクトなどは、10、11年からスタート。現在もそれぞれ20~30人の学生が、定期的に現地を訪れて活動している。

防犯・防災意識の向上をめざすプロジェクトに参加している地域創生学群(学部の一つ)1年生の塩津茉那さんは大分県中津市出身だが、「活動を通して地域に愛着が生まれた。もっと北九州のことを知りたいと思うようになった」と心境を語っている。

学生を受け入れている地域からは、「成長していく姿に接し、うれしかった」「地域には無関心という最近の若者像が変わった」などの声が寄せられている。地域住民らと一緒になって懸命に課題解決に取り組む学生たちの存在が、地域に活力をもたらしているようだ。



総務省と文部科学省などは昨年9月、「公立大学の力を活かした地域活性化研究会」(座長・辻琢也一橋大学大学院教授)を発足させた。全国86の公立大学を対象に地域活性化の活動事例や体制などを調査し、公立大学の活用に向けた施策を検討している。

昨年12月に公表された中間取りまとめによると、調査に対し計365件の活動事例が報告されたが、雇用者数の増加や就職率アップといった定量的な効果を示すものは少なく、大学を設置した自治体と連携していない事例も多かった。

雇用の創出で成果を 近藤倫明学長

大学には、教育、研究に加え、社会貢献(国際貢献、地域貢献)という使命がある。特に公立大学の場合は、設置団体が地方公共団体という性質上、地域貢献において大きな役割を担っている。

具体的には、地域ニーズに即した人材育成や、地元の産業界と連携した共同研究、市民への公開講座の実施などが挙げられる。少子高齢化の中で多数の若者が通う大学が地域にあること自体、一つの地域貢献といえるだろう。

若者の地方定住を促進することも期待されているが、公立大学協会と総務省、文部科学省が設置した研究会の調査では、若者の定着に結び付くような地域活動の事例があまり見られなかった。地域における存在意義を高めるためにも、各大学には地方公共団体と連携し、雇用創出へ向けて具体的な成果を挙げる取り組みが、一段と求められる。

地域活動を通じて学習する本学の地域創生学群の学生は、ほかの学部生と比較して卒業後も地元に就職して残る割合が高い。これは、地域活動によって地元を知り、地元への愛着が生まれた結果なのかもしれない。地域で人材を育み、定着してもらうためにも、学生の就職環境も整えていきたい。

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