50年ビジョン 福祉社会論

公明新聞:2014年11月8日(土)付

「地域創造型福祉」で築く支え合いの共生社会

はじめに

社会保障改革と地方創生の一体的推進
福祉社会の在り方をめぐる議論は、新たな局面を迎えています。年金や医療、介護など社会保障制度の骨格を持続可能なものにするとともに、人口減少問題への対応が大きな課題になってきました。

「合計特殊出生率」(1人の女性が生涯に産む子どもの平均数)は、結婚や出産に関する価値観の多様化、若年世代の経済的な困窮化などを背景に、1970年代後半から人口維持に必要な2.07を下回る状態が続いてきました。その結果、人口減少による地方自治体の消滅すら予測される深刻な事態に直面しています。社会保障を支えるためにも、人口減少に歯止めをかけ地域経済を活性化させる地方創生の取り組みが急務です。

「次の50年」、2060年へ向け、社会保障改革と地方創生を“新しい国づくりの両輪”として、一体的に推進しなければなりません。両者をつなぐ車軸となるのは、今、人々が暮らしている「地域」です。住み慣れた地域、それぞれの生活圏において医療、介護、生活支援など必要なサービスを充足させるとともに、就労の場を創出・拡充し、そこで暮らしている人々の人生設計を可能にすることが、政治の最重要課題と言えます。

Ⅰ少子高齢化と人口減少

求められる価値観の転換
負担を分かち合い、暮らし守る

少子高齢化、人口減少の同時進行という厳しい将来見通しに対し、過度に悲観したり、楽観したりするのではなく、真正面から受け止め「今なすべきこと」を考え、断行することが求められています。

1、少子高齢化と人口減少の将来予測
日本の総人口は2008年の約1億2800万人をピークに減少に転じました。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計によると、合計特殊出生率がこのまま1.4前後の水準で推移すると、2060年には現在の3分の2の約8700万人まで減少するとされています。

総務省が発表した人口推計によると、今年10月1日現在、65歳以上の高齢者が全人口に占める比率である高齢化率は過去最高の26%に達し、高齢者は既に全人口の「4人に1人」を上回っています。これが2060年には39.9%(社人研推計)となり、「2.5人に1人」となるとされています。

市町村単位で見ると、人口減少の影響は、より鮮明になります。民間研究機関「日本創成会議」の増田寬也座長(元総務相)らは、大都市圏への人口移動が続くと仮定した場合、2040年までに自治体全体の約半数に当たる896自治体で20~39歳の若年女性人口が5割以上減り、人口回復が困難になると予測。さらに同年までに人口1万人を割り込むと見られる523自治体は医療保険や介護保険などの社会保障の維持が困難で、雇用の確保も難しいことから消滅の恐れがあると警鐘を鳴らしています。また、全国知事会も人口減少を「国家の基盤を危うくする重大な岐路」として少子化の非常事態宣言を採択するなど危機感を強めています。

2、単身世帯の急増、家族形態の急速な変容
少子高齢化と人口減少に晩婚・非婚の傾向が重なり、家族の形態に重大な変化をもたらしていることにも留意しなければなりません。社人研が今年4月に公表した「日本の世帯数の将来推計(都道府県別)」によると、単独世帯、夫婦のみの世帯、夫婦と子から成る世帯、ひとり親と子から成る世帯、その他の5つの家族類型のうち、単独世帯が2025年に全ての都道府県で最大の割合を占めるようになります。

2010年に全国で約498万人だった65歳以上の単独世帯は、2035年には53%増の約762万人に達する見込みです。家族の支援がない単身高齢者の社会的孤立をどう防ぐかが喫緊の課題です。

晩婚・非婚の傾向がもたらす長期的な影響も深刻です。山田昌弘・中央大学教授によると、50歳時の未婚率を示す「生涯未婚率」が2010年時点で男性20%、女性10%に達しています。支えてくれる家族がいないまま高齢化する未婚者らが増え、2040年ごろには、年間20万人以上が「孤立死」するようになると予測されています(『「家族」難民 生涯未婚率25%社会の衝撃』朝日新聞出版)。

単身世帯急増に対処するための包括的な政策が、強く求められる時代に入っています。その第一歩として今後は、社会保障をはじめ各種の公的制度を検討する際に、単身世帯を「標準的な世帯」として考慮しなければなりません。

3、社会保障、公共サービスに及ぼす影響
少子高齢化、人口減少の進行は労働力不足の深刻化や国内需要の縮減をもたらし、現状のままだと2040年代から国内総生産(GDP)がマイナス成長に陥る恐れがあると指摘されています。

一方、人口減少、少子高齢化は、年金・医療・介護などの社会保障にも深刻な影響を及ぼします。社会保障給付費は2012年度で約109兆円に上り、介護保険制度が始まった2000年度から30兆円超も増えました。これが2025年度には約149兆円にまで増大すると厚生労働省は推計しています。

その最大の要因といえるのは認知症やがんなどの病気にかかりやすくなり、要介護状態になる可能性の高い75歳以上の後期高齢者に「団塊の世代」が移行することであり、これに医療の高度化による医療費の増大も加わるためです。

これら社会保障給付費がGDPに占める比率も、医療は2012年度の7.3%が2025年度には8.9%に、同様に介護は1.8%が3.2%にと、経済成長率を上回って大きく膨れ上がる見通しです。年金もまた、高齢化に伴って給付費は2012年度の53.8兆円が2025年度には60.4兆円に増大する見通しです。

自治体の存亡に関わる少子高齢化、人口減少は、行政サービスにも大きな影響を及ぼします。特に地方の過疎地では自治体が単独でさまざまな公共施設を維持し、行政サービスを提供することが困難となり、自治体間の連携協定などによる行政サービスの「集約」と効率化が迫られることになります。

4、「老若男女・全員参加型」の経済に
以上のような人口減少予測を踏まえ、なるべく早い段階で合計特殊出生率2.07を達成し、「1億人程度の人口を維持できるようにすべきだ」という議論があります。一方で、出産に関する女性の意思は最大限に尊重されなければなりません。まずは、若い世代が子どもを産み、育てたくなるような社会環境を粘り強く着実に整備し、2013年時点の合計特殊出生率1.43と、どれぐらいの子どもを産み育てたいかを示す「希望出生率」1.8との差を埋めていくことを優先すべきではないでしょうか。

そのためには、男女が平等に社会のあらゆる分野で活躍できる機会を確保する男女共同参画やワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を社会に浸透させることが不可欠です。男女がともに家庭と仕事のバランスをとって子育ての責任を分かち合うことを可能にし、地域でも子育て世帯を見守る社会環境を創り上げていかねばなりません。

減少する労働力人口の不足を補うために、「外国人の人材を本格的に受け入れるべきだ」との声も上がっています。自治体や産業界の一部には、積極的に外国人を受け入れ始めているケースもありますが、国民全体の幅広いコンセンサス(合意)が形成されているとは言い難いのが現状です。人口減少が始まったとはいえ、日本社会にはまだ「余力」があります。日本国内で生かし切れていない女性や若者、元気な高齢者らの潜在力を開花させる「老若男女・全員参加型の経済社会システム」の構築を優先すべきだと考えます。

超高齢・人口減少社会に適応した新しい福祉社会を構築するためには、経済規模や人口が増え続ける「右肩上がり」を前提にした「成長に伴う成果を分け合う」という従来の価値観を大きく転換することが求められています。人口が緩やかに減少していく時代にあっては、世代間や地域間の軋轢を回避し社会の安定を保つためにも、負担を分かち合い、支え合いによって地域住民の暮らしとコミュニティー(共同体)を守ることを重視する「共生の価値観」が、国民の間に幅広く共有される必要があります。

Ⅱ地域創造型福祉

人間の尊厳を守り抜く
「互助」ネットワークを基盤に

そもそも、「福祉」とは何でしょうか。なぜ、福祉が必要とされるのでしょうか。医療や介護の制度論、負担と給付の問題ばかりが議論されがちですが、もう一度、原点に立ち返って、福祉社会の在り方を考えるべき時にきています。

1、地域で創り、地域を創る福祉
結党以来、公明党がめざしてきた「福祉」とは、「<生命・生活・生存>を最大に尊重する人間主義」という中道の理念に基づき、自他ともに人間としての尊厳を支え合い、守り合う営みにほかなりません。治療困難な疾病にかかったり、何らかの事情で経済的困窮に陥ったとしても、最後まで人間らしく生きる「個の尊厳」が守られなければなりません。こうした考え方は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を定めた憲法第25条とも軌を一にします。

「個の尊厳」を守るには、人と人のつながりが不可欠です。人々の「絆」こそ、福祉社会の根幹を成すものですが、少子高齢化、人口減少、単身世帯の急増は地域のつながりを弱体化させ、住民を孤立させる方向に作用しがちです。

こうした中にあっても、地域で暮らす一人一人に光を当て、きめ細かな福祉を展開していくために、われわれは、住民が自発的に支え合う「互助」のネットワークを基盤とする「地域創造型福祉」を具体化しなければならないと考えています。これは、それぞれの地域の特色を最大限に生かして「地域で創造する福祉」であると同時に、そこに生きる人々の絆を再生あるいは新たに形成し「地域を創造する福祉」でもあります。

これまで社会保障を支える理念として、自らの負担で健康づくりなどのサービスを受ける「自助」に加え、社会保険など制度化された「共助」、社会福祉など受給要件を定めた上で生活保障を行う「公助」の重要性が強調されてきました。自助を共助・公助で補う考え方です。今後、高齢化により社会保障サービスの需要が急激に膨らみ、共助・公助の国民負担も急増する恐れがあります。限られた財源や人材を、本当に支援を必要とする人に振り向ける「選択と集中」を進めるとともに、極力、国民の負担増を抑制しなければなりません。

そのためには、身近な地域に互助のネットワークを形成し、「自助・共助・公助」プラス「互助」の社会を築くことが不可欠です。今、われわれが取り組んでいる「地域包括ケアシステム」は、住み慣れた地域で住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する制度であり、互助ネットワークの形成へ向けた第一歩となります。住民間の信頼関係に基づくネットワークは、地域共同体を維持し活性化する「目に見えない財産」です。人々の協調的行動を促す社会的ネットワークや互酬性(相互扶助)、信頼関係などを「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」として、その効果を検証する実証的な研究が国内外で進められています。

わが国における研究の端緒となった内閣府の調査(2002年度)によると、「ソーシャル・キャピタルが豊かな地域ほど、失業率や犯罪率は低く、出生率は高い。また平均余命も長い」(「ソーシャル・キャピタル 豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」)と分析されています。2011年3月11日に起こった東日本大震災では、暴動や略奪が頻発してもおかしくない極限の状況下で、互いに支え合い、助け合って苦難に耐えた被災者らの姿は、常日頃から培われたソーシャル・キャピタルの力が、いざという時に発揮されるという尊い教訓を残しました。

地域社会における連帯の弱体化に歯止めをかけ、人々を孤立させることのないよう、今から互助ネットワークを広げてソーシャル・キャピタルを豊富に蓄積し、新しい地域創造型福祉の基盤を固めなければなりません。地方圏においては地縁・血縁を軸にした従来のつながりに外から新たな人材を呼び込むことが重要であり、大都市圏では高齢単身者や心身に障がいのある人々を守る新たなネットワークの形成が求められています。

2、「地域包括ケアシステム」を構築
今、各地域で進められている「地域包括ケアシステム」の構築は、地域創造型福祉を具体化する第一歩となります。このシステムは、団塊の世代が75歳以上になる2025年へ向け、高齢者が住み慣れた地域(在宅)で、医療や介護、住まい、生活支援など必要なサービスを一体的に受けられるようにする制度です。完成すれば、24時間の定期巡回・随時対応型サービスなど在宅の高齢者一人一人に寄り添った、世界でも例を見ない、きめ細かい医療・介護制度が、中学校区域単位で実施されます。このシステムの構築へ向け、行政や医療、介護の関係者だけでなく、幅広く住民も参加・協力することによって地域社会の絆を強めていくことが重要です。

消費税増収分を財源として都道府県に基金が創設されました。公明党はその基金の医療分と介護分のそれぞれの予算額を十分に確保するとともに、適切な配分と市区町村の現場に即した柔軟な運用に取り組みたいと考えています。

地域包括ケアシステムを構築していく上で、特に重要な課題は介護職の人材確保です。2025年には100万人が不足するという予測も示されています。介護職員のさらなる処遇改善に取り組むなど福祉の現場を支える人材の育成や確保に全力で取り組まなければなりません。それでも、高齢化のスピードに対応するのは困難です。これからは、健康な地域住民がケアラー(介護や看病などのケアを無償で行う人)としての自覚と知識を培い、専門職の人手不足を互いにカバーし合うことが求められています。

一方、一人暮らし高齢者の見守りや子育て、障がい者の手助けなどを担う特定非営利活動法人(NPO法人)の役割は大きく高まっています。その数は約4万9000(今年3月現在)に増えました。今後、深刻化する地域の担い手不足に対処するため、さらに飛躍的な増加をめざす必要があります。NPOの活動内容の透明性を確保しつつ、税制や財政面の支援拡充とともに、民間金融機関による融資促進など支援体制を拡充すべきです。また、過疎地などでのNPOの立ち上げを支援する仕組みづくりが急務と考えます。

中長期的に今後の人材を育成する観点としては、小学、中学、高校生を対象とした「福祉教育」を授業に本格的に取り入れることが求められます。例えば、日頃、お年寄りに接する機会の少ない子どもたちが「ヘルパー」となり、高齢者宅を訪問し、肩たたきや掃除などのボランティア活動を通じて、高齢者と交流を深めつつ、社会的弱者を思いやる心を育む体験学習に力を入れるべきではないでしょうか。

3、縦割り行政を排除した、多世代交流の「共生型福祉施設」を整備
地域包括ケアシステムの実現をめざしていく中で、中山間地域など人口減少が著しく、介護サービスなどを提供する事業者も少ない地域では、高齢者をはじめ障がい者や子どもたちが世代を超え、共に福祉サービスを利用する多世代交流型の「共生型福祉施設」の設置が望まれています。しかし、例えば、グループホームでも認知症高齢者向けと障がい者向けとでは、それぞれ別の法律で設備の基準が異なるなど「縦割り行政」が壁となっています。

国の「特区制度」を活用するなど独自の取り組みで共生型施設の設置を進めている自治体もありますが、公明党は、必要とされる地域へ迅速に導入できるよう抜本的に新たな仕組みを検討します。

障がいの有無や性別などにかかわらず、誰もが自分の能力を発揮して自分らしく幸せに生きる共生社会をめざす観点から、生活自立支援の充実にも取り組んでいきます。来年4月に始まる生活困窮者自立支援制度の着実な実施によって、生活保護に至る前の相談支援や就労支援を充実させます。障がい者等への支援については、障害者総合支援法が施行され、制度の谷間のない支援を提供する新たな障がい保健福祉施策が始まっています。市区町村の現場において、障がい者等へのきめ細かな支援を強化する必要があります。

4、地域で認知症高齢者を見守る体制の確立
厚生労働省研究班の推計によると、認知症高齢者は2012年時点で約462万人、軽度認知障害(MCI)は約400万人に達しています。徘徊症状による行方不明者が年間1万人を突破するなど、深刻な社会問題になっています。このまま根治薬が開発されなければ、いずれ患者数が1000万人に達すると警鐘を鳴らす研究者もいます。

国の存立すら脅かしかねない深刻な事態と言わねばなりません。厚生労働省の「オレンジプラン」(認知症施策推進5か年計画)を抜本的に拡充し、政府挙げて対策に取り組む「国家戦略」を策定すべきではないか。そこには、専門職による「認知症初期集中支援チーム」の全国普及など早期診断・早期対応へ向けた体制の整備をはじめ、認知症にならないための個人の予防措置の啓発、重症化した場合の在宅ケアと地域での見守り、治療薬の開発促進など包括的な対策を盛り込むべきです。とりわけ、増加している徘徊症状のある認知症患者を地域で見守る体制の構築を急がなければならないと考えます。

特に高齢化が著しい地域や大規模団地などでは、地域住民の中で認知症に関する正しい理解と基礎知識を身に付け、患者を手助けする「認知症サポーター」の養成を急ぐとともに、患者本人とその家族をはじめ地域住民、医療従事者など誰もが安心して集い交流できる「認知症カフェ」の設置を加速することも必要です。

Ⅲ地方創生

個性を生かす活性化
オンリーワンの地域おこしへ

日本列島は北海道から九州・沖縄まで自然環境が変化に富み、少子高齢化や人口減少の状況もかなり異なっています。その意味では、全国共通の「モデル」はありません。地域の「人」と「個性」が輝く地方創生へ向け、何が求められているのでしょうか。

1、身近な「資源」を生かす
過疎地や離島でオンリーワンの地域おこしに成功した自治体には共通する特徴があります。農林水産物や独特の景観といった身近な「地域資源」に着目し、それを事業化することで「働く場」を創出していることです。また、明確な将来構想を持ったリーダーが関係者の調整役となり、活性化の試みに地域住民が主体的に参加し、外から人を呼び込むことにも積極的に取り組んでいます。

各地域で創意工夫を凝らした活性化への取り組みを後押しすることが、今後の地方創生のカギになると考えます。

2、地域経済圏の活性化と雇用創出
GDPや雇用の約7割を占めている“地域経済圏”の活性化なくして日本経済の再生はあり得ません。こうした観点からも地方の潜在成長力を引き出す取り組みが不可欠です。地域産業の圧倒的多数が中小企業でありサービス業です。先進諸国の中でも低いと指摘されているサービス産業の生産性を向上させることが大きな課題です。また、1次産品の付加価値を高めるため生産から加工、流通・販売までを一貫して行う農林漁業の6次産業化をはじめ、観光資源を軸にした異業種連携、地元の大学や金融機関と連携した起業や新事業への進出などを加速させる必要があります。

中小・小規模企業の経営支援に関しては、中小企業が持つ技術・アイデアを製品化し、日本各地や世界の市場を取り込むため、地域の公設試験場等と連携した研究開発から、中堅企業や中小企業基盤整備機構等の連携による開拓まで、強力に後押しする必要があります。さらに、介護や子育てなど地域社会の課題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネスの創業や事業拡大に取り組むNPOや中小企業を支援するため、関連法制や税制の改革に取り組むことが必要です。

こうした取り組みを通じて、規模は小さくても多彩な雇用の場を地域に数多くつくることが重要です。地元の生活圏が単独で実施することが困難であれば、市町村の垣根を越えた自治体間連携や地域間連携も有力な選択肢になります。福祉と同様、地方創生も地域経済に関わる関係者間のつながり、「連携」がキーワードとなります。こうした連携を具体化するためには、専門家によるアドバイスも必要になってきます。地域活性化に実践的な助言ができる専門家を“地方創生コーディネーター”として、あらかじめ登録し、全国各地に斡旋する国の「地方創生・人材バンク」(仮称)の設置を検討すべきです。

3、都市在住の地方移住希望者を後押し
人口が減少していく中、地域の活力を維持していくため、多くの自治体が大都市圏からの移住者増加に取り組んでいます。前述した地域経済活性化策を推進することにより、都市住民を呼び込める魅力ある古里づくりを進めることが大切です。

都市住民の中には地方移住を希望している人が少なくありません。例えば、内閣府が今年6月に行った世論調査によると、農山漁村地域に移住したいという願望を持っている都市住民の割合が2005年の20.6%から31.6%に大幅に上昇しています。特筆すべきことは、この割合が20代で38.7%、60代で33.8%に達していることです。上記の地域活性化対策や、全国で820万戸(2013年10月1日時点)に上る空き家の活用対策とも連動させ、都市部の若者やシニア世代の願望の実現を後押しする必要があります。その一環として、都市部の若者らが過疎地などに定住し、地域協力活動を行う「地域おこし協力隊」事業について、実施している自治体数を318(2013年度)から1000に増やすべきだと考えます。

2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに関して、地方からは「これまで以上に人口などの東京一極集中が加速するのではないか」と懸念する声が上がっています。オリンピック開催の経済効果などが東京以外の地方にも波及し、国全体の活力を引き出す具体的な戦略づくりを急がなければなりません。

4、新たなまちづくり
少子高齢化、人口減少に対応したまちづくりの課題は、(1)中核的な地方都市を軸に、近隣の市町村が連携する地方中枢拠点都市圏の形成(2)住宅や学校、高齢者施設、行政機関など生活に必要な機能を一定の地域内に集約することで生活の利便性を向上させるコンパクトなまちづくり(コンパクトシティー)(3)集落で居住を希望する高齢者が病院への通院や買い物に支障を来すことのないようオンデマンド型を含む交通網の整備―などです。

とりわけ、集約型のまちづくりは、今後、老朽化が加速する上下水道や橋などのインフラ(社会基盤)の維持管理費の削減につながることに加え、人と人とのつながりを強める契機にもなり、災害などの緊急時には住民同士の助け合いを円滑にするといった利点があります。過疎地での人々の暮らしにも配慮しつつ、集約型まちづくりとのバランスを取っていくことが求められています。

Ⅳ女性と若者が輝く社会

多様な働き方を可能に
活躍を促す環境整備が急務

半世紀後、未曽有の超高齢社会となっている日本の活力を維持するには何が必要でしょうか。そのカギとなるのは、女性や若者が生き生きと社会参加し活躍できるような国になっているかどうかではないでしょうか。

1、女性の子育て・介護と仕事の両立
女性が生き生きと活躍できる社会構築のためには、仕事と家庭の両立支援とともに、あらゆる分野における意思決定の過程に女性が参画することなどを通じて、女性が持てる力を最大限発揮できるようにすることが重要です。

あらゆる分野での女性の活躍促進を提案する「女性の元気応援プラン」を安倍首相に申し入れる党女性委員会のメンバーらしかし、妊娠・出産や子育て、介護などにより、離職を余儀なくされる女性がいます。妊娠・出産を理由とする不利益な取り扱い、いわゆるマタニティーハラスメントは違法であり、決して許されません。こうした不当な行為を是正し、働きたい女性が安心して仕事と育児・介護を両立できるよう、長時間労働を抑制するとともに、育児介護休業制度や短時間勤務制度、テレワークなど両立支援策の拡充・促進、男女の賃金格差是正などにより、女性がやりがいを持って働き続けられる環境を整備する必要があります。また、男性の家事・子育てにおける役割も重要です。男性の家事や子育てへの参画を積極的に後押しする企業への支援や職場の意識改革を促すべきです。

また、「2020年までに指導的地位における女性の割合30%」という目標達成への取り組みを加速化する新たな法的枠組みの構築をはじめ、学び直しや復職支援、女性の感性を生かした営利・非営利を問わない多様な起業を強力に推進する必要があります。

女性の活躍を支えるためには、妊娠・出産、子育ての各ステージに応じた継続的な支援も不可欠です。子ども子育て支援新制度の着実な実施とともに、放課後子ども総合プランの推進に加え、妊娠・出産・育児の切れ目ない支援を行う母子支援地域拠点(例 フィンランドの「ネウボラ」)の整備・普及が望まれています。

また、女性の活躍の基盤はなんと言っても「健康」です。公明党はこれまで女性特有のがん対策や女性専門外来など女性の健康支援に取り組んできました。がん検診無料クーポン配布事業の継続やコール・リコール(個別受診勧奨)事業の拡充に取り組み、早期の検診受診率50%をめざしています。また、生涯にわたって女性の健康を包括的に支援する法律(女性の健康包括的支援法)を制定し、性差医療の研究拠点創設や女性の健康に関する相談体制の強化などを推進すべきです。

2、若者の雇用拡大と社会参加の促進
家庭、地域、学校、企業、国や地方自治体等の行政機関、そして民間支援団体などが、「社会全体で若者を守り育てていく」という共通の認識を持ち、その実現に向けた取り組みを進めなければなりません。具体的には、(1)新卒者等への就職支援の強化(2)フリーターやニート(若年無業者)支援の強化(3)企業の雇用管理改善(4)就職に当たっての情報開示の促進―など、若者雇用対策の基本となる法的枠組みの整備が必要です。

なかでも、15~34歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていない若年無業者は、自立支援策の効果などで2013年に前年比3万人減りましたが、それでも60万人と高水準です(2014年版「子ども・若者白書」)。将来性豊かな若者たちが社会参加できないということは、地域社会や国にとっても大きな損失です。若年無業者になる理由は多種多様であることから、きめ細かなカウンセリングから就労や就学など、本格的な社会参加を促す支援策の拡充が求められています。

3、非正規雇用者の待遇改善、正規雇用化の促進
正規雇用と非正規雇用の間の賃金、待遇などの格差を是正するため、「同一価値労働・同一賃金」に向けた取り組みを進めるとともに、非正規雇用労働者の健康保険、厚生年金のさらなる適用拡大を行うべきです。

また、非正規雇用労働者の正規雇用への転換や賃金の増額改定を行った事業者に支払われる助成金(キャリアアップ助成金の増額)を周知し、有効に活用するとともに、不本意型の非正規雇用労働者も含めた雇用の安定化に向け、労働者の無期雇用化を図る事業主に対する支援の拡充を検討すべきです。

4、貧困家庭の子どもの教育と就労支援の拡充
貧困家庭で育った子どもが、成長後に自らも貧困に陥る「貧困の連鎖」を断ち切る支援策の強化が必要です。

2013年6月に成立した「子どもの貧困対策法」による支援策として、(1)教育の支援(2)生活の支援(3)保護者の就労支援(4)経済的支援―を国の大綱を基に各都道府県が具体的な支援計画をつくることになっています。自治体が実施する具体策の実効性を高めることに全力を挙げる必要があります。

なかでも、教育への投資によって成人後の貧困を防ぐ観点から、就学援助制度の充実や教育機会を保障する奨学金等の経済的支援の拡充を図るべきです。一方、保護者の自立支援や就労支援、経済的支援の強化が貧困の連鎖を断ち切るカギとなっています。

Ⅴ生涯現役社会

元気に働き、地域への貢献も
「活動寿命」を延ばす

世界有数の長寿国となったわが国がめざすべき方向は、単に寿命を延ばすことではありません。健康面の支障がなく日常生活を送れる期間である「健康寿命」を延ばすことであり、高齢者の「生活の質」を高めなければなりません。

1、平均寿命と健康寿命の差を縮小
地域包括ケアシステムを軸に、それぞれの地域で医療・介護の関係機関の連携強化をはじめ、疾病の予防や早期発見・早期治療、健康増進など、地域の特性に合った医療・介護基盤づくりに全力を挙げなければなりません。国民の「健康度」を高めることで、「不健康な期間」である平均寿命と健康寿命との差(男性9.02年、女性12.40年=2013年時点)の短縮につながるからです。

この「健康格差の縮小」に加え、公明党は「活動寿命」という概念を新たに提起し、その延伸に取り組まなければならないと考えています。活動寿命とは、賃金を得るための労働に限らず、ボランティアや地域活動などを通して社会と関わり、支え合いの社会づくりに貢献できる期間を指します。健康であることに加え、幾つになっても安心して働き続けられる社会を築くことはもちろん、誰もが生涯現役として生きがいにあふれた生活を営む活動寿命の延伸に取り組むことを提案します。

これに関連して、「65歳以上」とされている高齢者の定義に関しても再考する必要があるのではないでしょうか。2014年9月に総務省が発表した高齢者の就業者数は、10年連続で増加し、636万人と過去最多になりました。日本人の平均寿命は、1965年の男性67.74歳、女性72.92歳から2013年に男性は80.21歳、女性86.61歳へと、それぞれ大幅に伸びていますが、高齢者の定義については国連の世界保健機関(WHO)の規定に準じて「65歳以上」とされたままです。65歳を過ぎても元気に活躍している高齢者が多いことなどから、この定義に「違和感を覚える」という人も少なくありません。既に政府や医学界では従来の定義を見直す議論も広がっています。

2、介護予防の全国的な展開
介護予防は、単に運動機能などの改善だけをめざすものであってはならないと考えます。むしろ、心身機能の改善を通して、生活機能や社会参加への意欲向上を図り、個人の夢や目標の実現を応援するための全国的な介護予防運動の展開でなければなりません。

社会の高齢化によって、高齢者夫婦のみ世帯や単身世帯の増加など、軽度の生活支援を必要とする高齢者世帯が増えています。言うまでもなく、元気な高齢者を増やし、家族の介護負担も減らす介護予防の普及は喫緊の課題です。地域の実情に合った介護予防事業(介護予防・日常生活支援総合事業)を整備し、多様な医療・介護、生活支援サービスなどを適切に組み合わせる仕組みの構築に努めなければなりません。

3、「ボランティア・ポイント」などを全国共通の制度に
食生活の改善やウオーキングなど高齢者自身が健康づくりに励み、生活習慣病の予防を心掛けることで国民の健康寿命を延ばすことができます。こうした取り組みを地域で普及させることで、医療・介護費を抑えることにもつながります。

そこで、高齢者がボランティアなどに携わった活動をポイントとして蓄積し、介護保険サービス利用時や健康増進の取り組みなどに充当できる「ボランティア・ポイント」が既に各地の自治体で行われています。こうしたポイント制度が自治体の垣根を越え全国どこでも使えるよう、検討すべきではないでしょうか。また、介護を必要とせず健康に暮らす高齢者(例えば、3年間介護保険を利用していない)の自助努力を“評価”し、ポイントを付与する「お元気ポイント」の普及も検討すべきです。

団塊の世代のリタイアが加速するにつれ、定年後の高齢期に生きがいを持って過ごすことが人生の重要なテーマとなっています。長寿化が進み、超高齢社会の到来とともに、高齢者が地域や社会を支える「担い手」として地域活動に参画していくことは高齢者自身の生きがい創出や地域の活力増進にとって必要です。地域の特性に合った魅力的な高齢者就業や社会参画の視点から、各自治体が具体的な取り組みを後押しする必要があります。

おわりに

地域の将来構想を
人口や経済などについて、さまざまな将来予測が公表され議論されるようになり、国民の間には漠然とした“先行き不安”が広がっています。わが地域、わがまちの確かな将来構想を示し、地域住民に安心と希望をもたらすことが政治に求められています。

医療や介護の在り方、まちおこしの構想に関して、住民の声を吸い上げ集約する地方議会の役割が、ますます重要になってきました。その一方で、地方議員数は「平成の大合併」や議会定数の削減により、1999年の約6万2000人から約3万4000人へとほぼ半減しています。今後も定数削減が続くと予想される中、地方議員一人一人の使命と責任は格段に大きくなっていると言わねばなりません。それぞれの地方議会にあって合意形成の要役を担うとともに、議会外にあっても住民のネットワークの軸となって将来構想をつくり、具体化する「地域の合意形成」を担う役割が求められるようになってきました。

50年前、無名の庶民の衆望を担い「大衆福祉」を掲げて誕生した公明党は、安定した社会保障と地方創生を願う地域住民の新たな衆望を担い、「次の50年」へと前進を開始します。

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