主張有給休暇の取得 職場総ぐるみの工夫が不可欠

公明新聞:2014年10月8日(水)付

内閣府の有識者会議で、有給休暇を取得しやすくする方策について論議が進められている。今月中に報告書の素案が取りまとめられる予定だ。

厚生労働省によれば、企業が社員に付与した有給休暇1年分のうち、実際に取得した割合を示す取得率は47.1%(2012年)だった。取得率は1990年代前半は55%前後だったが、2000年代以降は5割を下回り続けている。

ある研究機関の調査によれば、有給休暇を取り残す理由として「病気や急な用事のために残す」との回答が最多だった。このほか、「他の人の迷惑になる」「仕事量が多すぎて休んでいる余裕がない」「仕事を引き継いでくれる人がいない」の答えが多かった。職場の人たちへの遠慮や業務の多忙さから取得しづらい事情が浮かぶ。

日本は欧米主要国と比較して有給休暇の取得率が低い上に、長時間労働の人が少なくない。働き過ぎによる過労死や過労自殺、心の病が社会問題にまでなっている。

適切な休暇は、心身の健康を守ることにつながる。リフレッシュできれば、仕事への意欲が高まり能率もアップし、生産性も高まる。子育てや介護などの事情を抱える社員の離職防止にも役立ち、企業にとって利点は多い。

ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現に向け、有給休暇を取得しやすい環境づくりを進めていかなければならない。

そのためには、職場総ぐるみの取り組みが欠かせない。

例えば、普段から1人の労働者が複数の業務に対応できるシステムを作り、社員が休暇を取っても、誰かがすぐ仕事を代行できる仕組みを設けるのも工夫の一つだ。こうした制度で、20年以上にわたり全従業員の有給休暇取得率100%を達成している企業もあるという。

厚労省は、計画的に有給休暇の取得促進を行う中小企業に対する助成金制度を08年から導入しているが、広く普及しているわけではない。活用しやすい制度に改善し、制度の周知を徹底すべきではないだろうか。

働く人と企業の双方の理解を得つつ、官民を挙げて知恵を絞っていきたい。

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