主張国連のエボラ対策 「平和と安全への脅威」に対処を

公明新聞:2014年9月25日(木)付

国連安全保障理事会(安保理)が西アフリカで猛威をふるうエボラ出血熱の感染拡大を「国際の平和と安全への脅威」と位置付けた決議を先週の緊急会合で採択した。これにより国連の感染症対策は新局面に入った。

感染症対策はそもそも、貧困克服や初等教育の普及などと同様、弱い立場に置かれた個人を民生分野の支援で守る「人間の安全保障」分野の取り組みである。ところが「国際の平和と安全への脅威」という表現は、安保理が武力紛争に対して軍事措置を執るような場合に使われる特別な言い方である。

安保理が武力紛争とは別次元の問題で「脅威」を使ったことに、加盟国は機敏に反応しなければならない。

吉川国連大使は18日の安保理公開討論で、日本企業が開発した予防効果が期待できる医薬品に関し「新薬が人々を救うことを望んでいる。他国と連携、協力する用意がある」と演説。22日には岸田外相が国連関連会合で最大23人の医療専門家を派遣する用意があると表明した。安倍首相も、きょう25日の国連総会で協力を表明する予定である。

世界保健機関(WHO)のチャン事務局長は18日、「おそらく国連が直面した平時最大の挑戦だ」と強調。22日には疑い例を含め感染者が計5864人、死者が計2811人に上ったと発表した。これに対し米国の疾病対策センターは23日、WHOの統計が実態を反映していないとして、今のペースで広がると来年1月20日までに感染者数が55~140万人に達するとの推計を発表した。

感染が深刻なギニア、リベリア、シエラレオネ3カ国は紛争後からの再建途上にある。公衆衛生の危機で「平和の定着、国造り」の努力が挫折すれば、紛争再発の恐れもある。エボラ出血熱の感染拡大は、まさに「国際の平和と安全への脅威」である。

感染症対策という「人間の安全保障」分野の支援が、国連の目的である「国際の平和と安全の維持」の基盤づくりにつながる時代になってきた。これが冷戦後の「安全保障環境の変化」の重要な側面である。加盟国は「国連エボラ緊急対応派遣団」を全面的に支援する必要がある。

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