主張理研の組織改革案 社会への貢献に心血を注げ

公明新聞:2014年9月6日(土)付

理化学研究所(理研)は、STAP細胞の論文不正問題が社会的な混乱を引き起こした反省を踏まえ、研究不正の再発防止策を含む組織改革案を公表した。改革案は、論文不正の舞台になった発生・再生科学総合研究センター(CDB)の「解体的出直し」を盛り込み、研究不正に目を光らせる理事長直轄の対策本部の設置を挙げている。

1917年設立の理研は、日本の自然科学研究の代表的組織として、世界の科学史にも残る成果を挙げてきた。子どもの発育促進に欠かせないビタミンAの抽出や、結核治療薬の製造も理研が世界で初めて手掛けた。伝統ある研究機関だけに、論文不正の余波は大きかった。世界が日本の科学研究全体の信頼性を疑っただけでなく、研究に希望を抱いた難病患者の思いも結果的に裏切ったといえる。

世論には、改革案の踏み込み不足を指摘する声がある。運営体制の刷新は重要な要素だが、理研が果たすべき責任とは、国民の幸福に貢献する研究に今まで以上の心血を注ぐことにあるのではないか。理研が蓄積している研究成果は血税から生み出された実績であり、国民共有の財産である。新たな研究に取り組み、社会の期待に応えることでしか汚名は返上できない。

責任を果たすための鍵は、研究者における高い規範意識の再生と堅持である。科学者の規範意識とは、自然の真理を誠実に探究し、必要であれば研究結果の訂正もいとわない勇気といえよう。

科学界の総意として研究不正への厳罰措置を定めることは、規範意識の再生に効果的だ。論文不正問題の陰に、規範意識を失わせる事実はなかったか。理研は論文不正問題で残されていた疑義を調査する新しい調査委員会の設置を発表したが、この点も徹底的に調査すべきだ。

研究者間の成果争いが激しくなる中で、研究不正の誘惑に屈することなく、厳しい環境でも研究に専念できる若い人材の育成と支援が重要である。研究者育成の最初の場となるのは学校教育だ。特に、大学は知識や技術の教授だけでなく、倫理面の教育も充実させる必要がある。

混乱を早期に決着させ、理研は本来業務に戻るべきだ。

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